東方風天録   作:九郎

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拷問終わりです。

又八さんがでてきたのが救いでしたね〜
二度とないけど。


さて、本編です。


相合い傘

まずいナ……毒にも薬にもなりそうにない……

クソみたいダ……

 

 

サァァァ……

夕刻……

雨が降っている。

 

青年はテクテクと白い物を抱えて歩いていた。

 

脱臼した関節は無理矢理入れた。

 

ゴキィと音がしてめちくちゃ痛かったけど……

 

 

こんなの痛みの内に入らないな

 

 

人里にて

 

通行人が一切居なかったなのが救いだった。

 

 

全身血塗れの男が歩いているのだから……

 

怪しまれるのは間違いない。

 

 

ぼ〜っと青年は虚ろな表情で歩く

 

確かこの辺でよく見かけたカラ……

 

家はこの近くなんだろうな……

 

 

「クロ……さん?」

 

後ろから声を掛けられた。

 

会えたね……

 

 

「よぉ……城太郎……」

 

 

「どっ……どうしたんだよ!?全身血塗れじゃないか!!!!」

 

城太郎は、驚いて青年に駆け寄ろうとした。

 

 

「来るな……あんまり……見ないでくれ……」

 

 

「えっ……でもクロさん……大丈夫なの!?何があったのさ!?それにその……白いのは……骨?」

 

 

 

「ウグッ……オェェェ……ック……大丈夫ダヨ……何とも無いカラ、悪い妖怪とね?闘ってきたんだ……やっつけたよ……もう大丈夫……でも、妹ちゃん……喰われてた……ゴメン……ゴメンナサイ……守レナカッタ……」

 

青年は、盛大に血反吐を吐くがニッコリと城太郎に微笑んだ。

 

虚ろな表情なのは変わらない……

 

 

「何で血を吐くの?そんなに血塗れなのも……妖怪にやられたんだね!?待ってて直ぐに手当てするから!!」

 

 

 

「必要ないヨ……ゴメン……ゴメン、お前の妹……守れなくて」

 

スッと青年は、妹ちゃんの骨を城太郎に渡し去っていった。

 

 

「コレが僕の妹?うっ嘘だよね?嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ!!!!何で妖怪はこんな事するんだよ……クロさんも重傷だし、死んじゃうかもしれない……てゆうか、いつものクロさんじゃなかった……口元に血がベットリ付いてた……どれだけ血を吐いたの?どうしちゃったの!?妖怪……妖怪妖怪妖怪妖怪妖怪妖怪ィィィィイイイイイ!!!許せない……よくも僕の妹を……よくも僕の憧れを!!!よくもクロさんを!!!殺してやる……みんな……みんな!!!コロシテヤル……」

 

 

 

 

後ろの方から人の咆哮のような物が聴こえた。

 

これからどうしようか……

 

ずっと雨が降っている……止まないな……

 

 

「童貞卒業おめでと〜クロ君〜」

 

スキマから紫が現れる。

はっ、ハァ!?

 

童貞卒業って……

 

あっ、なるほど……

そっちの意味でいったのね。

ビックリさせるなよ。

なんで笑ってんの?

変な笑い方……作り笑いなのバレバレ……

 

「何ですか?」

 

 

「ん〜特に用事は無いわ、心配だったから見に来ただけよ……」

 

 

「そうですか……じゃ、さっさと帰って下さい……」

 

 

「泣いて……いるの?」

 

 

紫は、首を傾げて青年を見た。

 

青年は上を向き、顔に雨粒を受けて答える。

 

 

「イイエ……」

 

 

「………………」

 

無言のまま紫はスキマへと消える。

いったい何を考えたのか……思ったのか。

考える余裕さえ、今の青年には無かった。

 

 

 

テクテク……テクテク

 

とりあえず歩く。

 

雨にうたれながら。

 

ずぶ濡れになった。バッテンの前髪が顔に張り付いて水を滴らしていた。

 

「やっと見つけたわよクロ君!!!ったく……どこ行ってたんですか!!」

 

傘を差して少女が飛んできた。

ムスッとして青年を見つめている。

 

青年はビクッとして少女に背を向けた。

 

「おやおや〜クロ君、いつからそんなに照れ屋さんになったのかなぁ〜」

 

ニヤァっと笑いながら少女は回り込んで青年の顔を見つめようとした。

 

「見ナイデクレ!!!お願いだから……オレを見ないでくれ……そのまま帰って……お願いだから……」

 

 

 

「えっ……ってクロ君……血塗れじゃないですか!!一体なにが!?」

目を皿のようにして少女は青年を見た。

 

特に気になったのが手の肉が削げ落ちてまだ血が滴っている事と、彼の口元が真っ赤に染まっていたのが一瞬見えた事である。

 

血を……吐いたのかな?

見ただけでも相当な量を吐いてる

いや、本当に吐いたのかな?

不思議だ……こんなに全身血塗れなのになんで普通に歩いてるの?

 

これ、クロ君の……血?

 

 

 

 

「言いたくない……君には言いたくないンダ……」

 

 

「そっ、そうですか……どうせまた無茶したんでしょ……ホラッ風邪引きますよ?」

 

少女は暫く驚いていたが、何かを察したのかクスッと微笑んで青年に傘を差した。

 

相合い傘である。

 

 

「要らない……雨に打たれていたいんだ……」

 

 

「ったく、何カッコつけてんですか……照れなくたって良いですよ……私……自分に素直になる事にしたので、これから覚悟しといて下さいね?貴方がどんなに突き離しても無駄ですから……」

 

スッと青年の背中に少女は寄りかかる。

 

ッ!!!!

 

青年は再びビクッとした。

 

 

「ダメだよ……オレの通る道……血の雨が降る……」

 

 

「だったらこうやって傘を差しましょう……私はどこからでも飛んできて貴方に傘を差しましょう……でも、傘は一本だけです、相合い傘ですね〜あははは」

 

ニッコリと少女笑った。

 

背を向けた青年の言っている事が、大まかではあるが理解しての発言なのだろうか?

 

それは、少女にしか分からない事である。

 

 

「本当にウザいな……お前……」

 

 

 

「ふっふ〜ん!!何言われたってノーダメージですよ〜だ!!私は私のやりたいようにやる!!それだけですから、今回は、それを貴方に伝えたかったんです!!これ以上居たら本当にクロ君が嫌がるので仕方なく退散しますよ……覚悟して下さいね!!」

 

ヒュンと翼をはためかせ少女は飛び去った。

 

ふと振り返ると、少女の差していた傘が置いてある。

 

使えって意味なのだろう……

 

拾ったけど差さなかった。

 

 

ずっと暗い空を見上げていた。

 

何で君はバケモノのオレにニッコリと笑いかけてくれるの?

何でだよ……

 

 

これから、どうしようか?

雨が止まないな……

 

 

フフッ……このままずっと……考えていようかな?

 


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