3本程煙草をふかした頃、射命丸はドアから出てきた。
落ち込んだ表情だった。
まぁ、知ったこっちゃねぇな……
そう思おうと試みたが、彼女なりにオレを助けようと努力してくれたので、少し心が痛んだ。
「クロ君……大事な話があります」
射命丸が厳しい表情で話始めた。
話の内容を要約すると
ここは、幻想郷という場所で妖怪や人間やらいろんな奴らが生きてる楽園ということ。
妖怪の山の社会は、とても排他的で人間が入ろうものなら普通殺されるということ。
オレが妖怪なのか人間なのか分からない中途半端な存在だということ
なので、ハッキリするまで形式上は、天狗の組織に所属しなければならないということ。
オレを天狗の里に招いた張本人は、彼女なので彼女がオレをお目付役として監視しなければならなくなったこと。
これくらいだろうか。
すると、もしオレが彼女達の同族でなく、何の変哲もない人間だった場合はどうなるのか?
という疑問が浮かぶが、見当がついた。
消せばいいんだよ。
「大体理解できたよ」
「それで、これからどうするつもりですか?」
「ん?どうするって?」
「これからどうやって生活するかって事です。」
面倒くさそうに射命丸は、前髪を弄りながら問う
「ん〜、特に考えてないね」
本当に何も考えてない、まぁ、人が住んでるとこまで下りてそこで生活するのが妥当だわなぁ
「そんな、クロ君に朗報ですよ!!」
どことなく暗い表情の射命丸がパアッと笑顔になった。
間違いなくロクなことじゃあないだろうな
何考えてやがんだ?
「いや〜、私これでも記者をやってましてね、そろそろ助手が欲しいなぁ〜なんて考えてまして」
「で?」
「私の家で住み込みで働く気はないですか?衣食住すべて完備です!!こんないい話ないでしょう?」
「断る」
即答してやった。
「えっ!!なんで……」
予想だにしない回答に射命丸は驚いているようだった。
オレには何故驚いているのか訳が分からなかった。
「お前さぁ、見ず知らずの男を普通家に上げて住まわせるか?ありえねぇわ、何されるか分かったもんじゃねぇぞ」
「何かするんですか?」
「いや、しないけどさ!!」
「じゃあ、良いじゃないですか、貴方の監視も楽にできて私にとっては都合が良いんですよ」
ほっといてくれよ……オレに関わるなよ
面倒くさい……
ウザったい……
イライラする……
「ホラホラ〜こんな美人と一つ屋根の下ですよ〜」
ニヤニヤして射命丸は、肘でオレを突いてくる。
「お前、ウザいよ……」
「えっ……」
「オレは、1人でいたいんだ、勝手に勘違いして、散々人のこと振り回すような女と一つ屋根の下だぁ?冗談じゃねぇよ」
思ってる事をブチまけてしまった。
最低だなオレは……
射命丸の顔を伺ってみた
さっきまでの笑顔が消えて、憎悪に満ちた表情になってゆく
「こっちが下手に出たらつけあがって、人間風情が……いや、人間ですらないか……じゃあ、どこかで野垂れ死ぬがいいわ」
あ〜怒らしたか……まぁ当然か……
まぁ、いいや……野垂れ死ぬのも悪くないな……
「そうさせてもらう」
無表情で答えた。
「ハッ、後で助けて下さいって言っても遅いわよ?人食い妖怪も沢山いるのよ?あんたみたいな雑魚が生きていけると思ってるの?」
吐き捨てるように射命丸は、言った。そうとう怒ってるのだろうか拳を握りしめて震えている顔も真っ赤だ。
「生きていく……その気はあまりないから心配なく、さっさと視界から消えてくれない?これ以上無益な会話を続けたくないんだけど?」
「あっそ……じゃあ精々頑張って野垂死んで下さいな、人間にも妖怪にもなれない哀れなクロ君」
そう言って射命丸は、飛び去った。
今にも飛びかかってきそうな勢いだった。
正直、言いすぎたかもしれない……なんで、こんなスラスラと悪い言葉がでるかなぁ……
まぁ……これでやっと1人だ……
人間にも妖怪にもなれない……か……
どう見ても人間じゃねぇかよアホかあの女は……
さて、これからどうしたものか……
考えるのもまた一興か……