大人びた感じのクロをもう少し書いていたい。
本編続けずにもう一つくらい何かとクロスさせたい欲が凄いですね
ふんふんふ〜ん♫
ご機嫌な青年は、お子様ランチの旗をヒラヒラとはためかせながら歩いていた。
それを二、三歩遅れてついてくる白髪の少年は、呆れたように見つめている。
ほんと、身体だけ大きくなった子どもみたいだ……
お子様ランチなんて恥ずかしくて頼めないものではないか?
お子様と名前のつくものだし、目の前にした感じ、いかにも年端のいかない子どもが喜びそうなものだった。
我よりも年上の男が何故こんな大人気ない事をするのだ?
この人には、羞恥心というものがないのか?
悶々と白髪の少年は、思考を巡らせていた。
ピタリと青年が歩みを止める。
「クロさん、どうしま……」
少年が言葉を言い切りかけた時、少年は、自身の首元の銀色を見て青ざめた。
「オレの『大切な』お客さんなんだけど……」
ジトッとした目で青年は、白髪の少年の首元に刀を沿わせる天狗に言った。
それを聞いて天狗は、ニヤニヤと笑う。
「ヒヒヒ、大切ねぇ……それはいい……、今、コイツの命はオレが握っているんだ、分かるだろう?お前が指一本動かしたら、コイツの首がポロリさ……」
「その子、そんなに弱くないよ?アンタの方が危ないと思うけど……まぁ、いいや……なんでこんな事するの?」
青年は、表情を変えずに問う。
チリチリと、青年の何かが燻り始めたのを、捕らわれた白髪の少年は、感じた。
ヒィィィイイイ!!
いきなりなに!?
なんなんですか〜この状態!?
ダラダラと冷や汗を垂らしながら、白髪の少年は、思った。
少年の様子を見て、青年は、ニコォと微笑む。
優しい表情だった。
そして、とても綺麗な目だった。
なぜこんな状況でこの様な表情ができるのか?
少年は、疑問に思う。
「決闘だ、黒旋風のクロ……貴様の天狗としての地位をオレが貰う……おっと動くな?ヒヒヒ……死ぬぞ?コイツ?」
不気味な笑みを浮かべて天狗は、青年を見る。
青年は、困った顔をする。
「地位なんて、もうどうでもいい……別にアンタにあげたって構わない……ただ、この子の記録には、アンタの様な汚い物や嫌な物があって欲しくないんだ、この世界は、美しくあって欲しいんだよ……せめて記録の中だけでは……だから、あまりこの子に怖い思いさせないであげてよ……」
「何の事を言っているのか分からんが、どうでもいい……死ね」
スッと左手を振り下ろして合図する
すると、青年の背後から茂みに隠れていたもう一人の天狗が青年に斬りかかる。
ズバッと空を切る音がした。
「クロさん!!」
思わず白髪の少年は、叫んだ。
ニヤァと白髪の少年に刀を突き付けている天狗は笑う。
「なっ!?」
青年を斬った天狗は驚く。
斬れなかったからだ。
青年を襲った凶刃は空を切った。
青年は、微動だにしていない、まるで、すり抜けた様な感覚だった。
「何かを護る時だけ……限定的だけどさ、この状態のオレはアンタじゃ殺せないと思うよ?」
微笑みながら青年は、言った。
「チイッ!!」
青年を斬った天狗はヒュンヒュンと刀を青年に向けて振り回すが、彼の刀は青年には届かず、もう彼は青年の眼中には無かった。
「刀……下ろそっか?」
ニコォと青年は、白髪の少年に刀を突き付けている天狗に微笑みかけた。
暫くして…………
再び青年の後を2、3歩遅れて付いてくる白髪の少年……
「強いんですね……」
「ううん、ちっとも……オレは寂しがり屋だし、弱虫だし、誰一人として守れなかったし、誰かと一緒じゃないとダメな奴なんだ……」
遠い目をして青年は、背を向けたまま答えた。
「謙遜し過ぎですよ……」
「謙遜じゃなくってさ?ただ、キタザワくんが大事だったんだよね……それだけ……ごめんね、オレと一緒に居たら、キタザワくん、嫌な思いしそうだから……だから、最後に一緒に来て欲しいとこがあるんだ」
どこか哀しげに青年は、振り向いて白髪の少年に微笑みかけた。
白髪の少年は、青年の表情を見て
ああ、強いとか、弱いとか、そう言う問題じゃないんだ……
ただ、この人は、弱いってどう言う事か知ってる。
と感じた。
ヒュウと優しい風が白髪の少年を包み込む。
心地良かった。
心地良いけれど、どこか哀しげな風だった……