考えれば考えるほどドツボにハマってる気がするのでとりあえず投稿です。
「ほほぅ、それは恐ろしい人ですねぇ〜」
ニコニコ笑いながら少女は言った。
「あの〜クロさんは何で走って行ってしまったのでしょうか?」
首を傾げながらキタザワが少女に問う。
少女は、青年の走って行った方をジトーッと見つめていた。
「文々。新聞にそんなヘンテコな名前の従業員なんて居ませんよ、私とあのアホ助手の2人だけです、アイツ、私の悪口言ってバレそうになったから逃げたんですよ、差し詰め、日頃の愚痴を言いたかったんでしょうね」
「あ〜なるほど、申し訳ありません失礼な事を言ってしまいました。」
「貴方が謝る事ないですよ、全部あのアホが悪いんです」
にこやかに少女は返答するも、トントントンと貧乏揺すりをする少女を見て明らかにイラついてる様子が伺えたのでキタザワは、冷や汗をかく
「それにしても、クロさん……飄々としてにこやかなのに、何であんな悲しそうに見えるんでしょうか?それに……あの人の目、綺麗な目で……なんだか、色々と見透かされてるような気がするんです、掴み所の無い人ですね」
キタザワは、とりあえず話題を変えようと考えたが、自身の疑問を晴らす事を優先する事にした。
仲は悪そうだが、多分この人が一番あの男の事を知っているのであろうな……なんとなくだが、そんな気がする。
あんな変な人は、珍しい……記録するのも悪くないであろう……
そう考えての事である。
「…………そうですね、掴めないんですよ……行かないで欲しい時、行ってしまってはいけない時……風みたいにすり抜けて行ってしまう……思い通りにならない風だ……」
少女は、遠い目をしてハァと一つ溜息を吐いた。
「中々困った方の様ですね……」
掴めないとは物理的にも掴めないのか?
それは彼の能力なんだろうか?
でも、射命丸さんの様子から察するに、心配されてる様に感じる。
ということは、物凄く仲が悪い訳でもなさそうだ
ますますよく分からない……
キタザワは、思考を巡らすも答えなど出るはずもなく
こんな時、本が手元にあればもっと冷静沈着に思考する事ができるのになぁ 、紫様、いつ返してくれるんだろうか?
本が装着されていた背中を困り顔で見ながら、キタザワは少し紫の事が恨めしく感じ、同じく紫に恨みを持っているクロと愚痴でもこぼしたいなと考えた。
そんなキタザワの思考を露ともしらず、少女は、遠い目をしながらボーッと考え込んでいた。
ハッと少女は、我に返る
取材相手が目の前にいるのに何をしてるんだ私は……
と自身の失態が恥ずかしくなり、これも全てクロのせいなので、この場から一旦離れるのと八つ当たりしてやろうと考えた。
「さて、とりあえずアイツに謝らさせますね、キタザワさんに失礼を働いた罰は受けてもらわなきゃ」
「えっ、別に構いませんよ?クロさんも色々と気遣ってくれてたし……」
キタザワが言葉を言い切る前に、少女は飛んで行ってしまった。
そして、2、3分程した後に
ボコボコにブン殴ってボロボロの状態の青年を引き摺りながら再びキタザワに笑顔を見せる。
「いや〜これはこれは、キタザワさん〜軽い冗談のつもりだったんですけどね……あははは、変な事言っちゃってすみません……」
ボロボロの状態にも関わらず、にこやかにクロは、キタザワに頭を下げた。
「べっ、別に構いませんよ」
ボロボロの青年に驚きつつキタザワは、答えた。
「んじゃ、後の取材は任せます……取材自体はちゃんと出来てましたからね、家に戻ってから覚悟しといて下さいね?クロくん?」
ニヤァと少女は黒い笑いを青年に見せる。
「後はオレに任せてよ、仕事はするさ……」
フッと青年は微笑んで答えた。
すると少女は、なんだか肩透かしを食らったような気分になり
フンッ
とそっぽを向いて飛んで行く
クロの様子を見てキタザワは、
こんなにボコボコにされてるのに、一つも物怖じしないクロに違和感を覚えた。
まるで……こうなる事を予め分かっていたかのようだ……
とキタザワは思った。
そして……
少女が、その場を離れた後、う〜んと伸びをしながら青年は、キタザワに微笑みかける。
「キタザワさんっておいくつです?」
「あっ、16歳です」
「あっ、そうなんだ!!年下だったんだ!!いや〜この世界、年下そうに見えて自分よりも年上の人結構いるから気を使うんですよね〜」
「もう気を使わなくても大丈夫ですよ?敬語とかも堅苦しいですし……」
「そう?じゃあ、砕けた調子で話そうかな〜?友達に接するみたいに……あっ、そうそう、さっきキタザワくんに失礼を働いてしまったからお詫びにさ?誰にも言ってないオレの秘密を教えてあげるよ」
「えっ、別にお詫びなんて良いですって!!」
キタザワが言葉を言い切る前に、クロはフッと距離を縮めてキタザワの耳元で
「オレ、昔ハムだったんだ……」
と囁いた。
「ハム?ハムって……ハム?」
食べ物のハムが脳裏をよぎりそれが離れない
何かの隠語なのだろうか?
とキタザワは思考する。
その様子をクロは微笑みながら優しく見つめていた。
そして暫く経ったあと
「ニョホホホホホ……」
ワザとらしくクロは、変な笑いをした。
キタザワは、自身がからかわれている事を理解する。
「クロさん……流石に怒りますよ?」
ジト目でキタザワは、変な笑い方をする青年を見るも
「嘘は言ってないよ……」
と青年は、微笑みながら答えてそれ以上は、聞いても
「まぁ、昔の事だしね……人間だった時の事、あんまし思い出したく無いんだよね〜情けないし…… それに……オレは天狗だし」
と遠い目をしながら答えたきりはぐらかされるだけだった。
やっぱり変な人だとキタザワは、クロを見る。
でも、悪い人じゃあなさそうだ。
とキタザワは思った。