東方風天録   作:九郎

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ニコニコに支援絵が描いてあってとても驚いてます
物凄く嬉しいですね!!やる気出ますよ!!


みんな大して変わらない

まだ遠いな……

青年は、里に向かって歩を進める

 

ふと、脳裏に里の人達の顔が過った。

 

城太郎、定食屋のおばさん、又八さん……

 

ふふっ、又八さん……オレ、立派な父親になれなかったです。

 

貴方の方が数段も立派だ……

 

みなさん……ごめんなさい

 

ご迷惑をお掛け致します。

 

青年は、切なげな表情をして更に歩く。

 

ヒュッ!!

 

頬を鋭い物が掠めた。

 

ツゥーと頬から血が滴る。

 

「遅くないですか?」

 

「お前と問答するつもりはない……」

9つの尻尾を持った女が答えた。

 

この人の服装、紫さんに似てる……

 

ムカつくなぁ……

 

「えっと……藍さんでしたっけ?貴方が遅いせいで3人死にましたよ?ほらっ、この道を少し行ったところに転がってます」

 

ニコッと青年は、藍に微笑みかけた。

 

「とんだ道化だな……」

 

「道化ってサーカスじゃ一番難しい役回りなんですよ?それって褒め言葉かな?」

 

「哀れな……」

藍は、そう言って大量の光弾を青年目掛けて発射する

 

青年は、それを氷のように冷たい表情で避けていった。

 

ヒュッ!!

再び何か鋭い物が青年を掠めた。

 

「尻尾か……」

青年は、舌打ちしながら光弾と藍の尻尾を避ける

 

しかし……

 

ドスッ!!

 

「ゴフッ……」

藍の尻尾が青年の右肩を貫通した。

 

「終わりだ」

 

低い声で藍が言った。

 

「貴方なのか……」

 

ぼたぼたと血を流して青年は言う。

藍には、その言葉の意味が分からなかった。

 

完全に青年を捉えた状況、あとは残りの8つの尻尾を青年に打ち込むのみ……簡単な仕事だ。

 

それなのに、得体の知れないものを青年から感じる。

 

藍の頬から冷たい汗が滴った。

 

「やらないんですか?心臓目掛けて貴方の尻尾を打ち込むだけです、簡単でしょう?」

 

「何を企んでるんだお前……」

 

「さっきからずっと言ってるんですけどね、この世界を終わらせてやるって……」

 

「嘘だ……だってお前……」

 

言葉を発しようとした瞬間、藍は、ゾォッと背筋の凍るような感覚を覚えた。

 

青年は、自身を貫いた尻尾を右肩から抜く

 

「問答無用って言ってたの……貴方でしょう?これ以上貴方と話したくないです」

 

ボトボトと血が出る、意識も薄れる

それでも、青年は立っていた。

まるで傷なんてどこにも無いかのように

 

「クッ……」

再び光弾と尻尾の連撃が青年を襲った。

 

青年は、肩の力を抜いて真っ直ぐ藍に向かって歩く

まるですり抜けてるかのように藍の攻撃を躱しつづけそして、とうとう目と鼻の先程の距離になった。

 

「化け物め」

 

「貴方だってそうでしょう?オレに言わせれば妖怪だって人間だって等しく化け物ですよ……」

 

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________

____

 

「あとは、本命を待つだけだね 早く来いよ、博麗さん……」

倒れた藍を背に、再び青年は歩き出す。

 

青年の周囲に黒い旋風が渦巻き始めた。

 


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