お待たせしました。
「なーにやってんだろ……オレ……」
夕焼け空を仰いで呟いた。
オレが今までやって来た事……全部空回りしてるみたいで……
その結果がさっきの文の言葉なんだと思う。
オレにとっての文という存在。
正直、言葉に出来ない。
それくらい大きな存在で……
伊織と比べるとか、そんな何かと比べる様なものなんかじゃない……
大切なんだ……
自分以上に大切な存在なんだ。
それなのに……
「なんでこうなるかな……」
困った様に笑みを作った。
「笑えないな……」
へへっと苦笑いに変わる。
バサッと自分の翼を広げた。
奇形の黒い翼だ。
禍々しい黒色……
文の翼とは大違いだ。
「例え自分が死んでも、絶対に守ってみせる……そう思ってたんだけどな……その結果がこの翼な訳だけど」
ハラハラと黒い羽が舞う。
夕焼け空のオレンジ色と羽の黒色が対照的だった。
例え自分が死んでも……
そう思ったからダメなんだろうな。
もし神様がオレを見てたなら、これはきっと罰なんだ。
生きようとしなかったから。
だからお前はそうやって苦しみ悩みながら地べたに這いつくばって生きていけって……
きっとそう言ってるに違いない。
別に死にたい訳じゃない。
失いたくないんだ。
自分も無傷で守りたい相手も無傷なんて……
そんな虫の良い話なんて無いだろう?
できっこないよ……そんな事。
ああ……寂しい。
いつもカッコつけてるけど、強くあろうと振舞って居るけど
オレは……
「ひとりじゃ……だめなんだ……」
呟いた言葉は夕焼け空に吸い込まれて、後には虚しさだけが残った。
また大剣が重くなった。
何処まで重くなるのだろうか?
背負っていられない。
きっとこいつはいつかオレの事を押し潰すだろう。
それでも、文が居てくれれば耐えられると思ったんだ……
「ああ……なるほど……」
ポンと手を打った。
オレは文に支えられて居るんだ。
だから、支えを失いたくないから怖いんだ。
結局、オレが文に対して抱く感情は自分のエゴでしかないのだ。
つくづく自分が嫌になる。
オレはどうすれば良いんだろう?
結局オレは文が居ないと何も出来ないロクでなしだった。
オレは、一度たりともあの娘の支えになんてなれてやしなかったんだ。
「ハハッ……」
誰かを支えるって……強くなる事よりも難しいんだな……
なるほど……
文に謝らなきゃ……
きっと許してくれないと思うけれど。
それならそれで構わない。
オレは誰かに支えられて居ないとダメな様だ。
でも、いつかオレ自身が誰かを支えられる様になれば、きっとオレは自分を許せると思う。
とても難しい事だけどね。