「どうやって殺すつもりなんだ?」
薄暗い部屋の中で初老の男が言った。
「そんなに難しい事じゃないさ、簡単だよ……だって彼は人間に対して何の抵抗も出来なかったじゃないか?あんな弱い天狗は初めて見たよ、それに、彼はどうやら天狗達から疎まれてるみたいだし……天狗を敵に回す事も無いだろうね」
フッと不敵な笑みを浮かべてもう1人の男が言った。
「抵抗出来なかったのは、里の中だけだろう?博麗の巫女に退治されるのを恐れていたのだ、しかし、博麗の巫女もあの時殺しておけば良かったものを……」
「あの娘は、人間とか妖怪とか気にしないからね、殺せなかったのさそれか、殺す事が出来ない程に奴が強かったか……まぁ、それにしたって殺すのは難しい話じゃないよ」
「その自信はどこからくるんだ?」
怪訝な顔をして初老の男はもう1人の男を見る。
すると、もう1人の男はニヤリと手元のメスを見つめた。
「狩ってもらうのさ……奴を殺すと同時にあの穀潰しも居なくなる……最近じゃ里の奴らの募金も少なくなってきたしねぇ、そろそろ潮時じゃないかと思ってるんだけど……どうかな?アレをやる?」
「あの計画か……特に支障は無いから早くやれよ」
冷淡に初老の男は答えた。
「準備ができたらすぐするよ……アレを使えば大抵の妖怪は死ぬと思うし、でもさぁ、父さん、なんでそんなに焦るの?別に病気でも何でもないだろう?」
「人間いつ死ぬか分からんだろう?欲しい物は何でも金で買える、だが、寿命と健康だけは金で買えないからな」
「そうだね……売ってないもんね寿命と健康なんて、僕だって長生きしたいよ、ずっとずっと生きてたいね、そうすればきっと楽しい事がたくさんあると思うし、僕はいつか、自分が年老いて死んでしまうんじゃないかと考えると夜も眠れなくなる程に不安になるんだよ」
「ワシもお前と同じだ、死にたくないんだ。死んだらせっかく稼いだ金も地位も名誉も全て無くなる。そんな事は許せんからな」
「生き物は他の生き物の命を奪って生きてるんだ、だからさ?僕達がこれからする事だって、それと何ら変わらないね……奴を殺して食べる訳だから……あの穀潰しは……まぁついでに消えてくれると助かるかな……」
「ああ、あの穀潰しにはワシらの金なんてビタ一文も使いたくない…父の血は繋がっていても、妾の汚い血が流れてるんだからな、世間体を考えて養ってやっているのだからワシらの為に働いて当然なのに……働けなくなりおってからに……働けなくなったアレに食わせてやる飯など無いわ」
「本当、祖父も勝手だよね……妾なんてつくるからこんな事になるんだ……でも、アレも生まれてきて良かったよ……最後に僕らの役に立つんだからさ」
「ああ、そうだな」
「父さん……流行り病でポックリ逝ったおじいちゃんよりもずっとずっと……僕らは生きようね……」
「ああ……」
遠い目をして初老の男は答えた。