東方風天録   作:九郎

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誇りって何ですか?

ドカッバキッと鈍い音がこだまする。

何発蹴りやらパンチを喰らったっけな……忘れた……

 

「痛いなぁ……もう気は済みましたか?」

 

大男は、オレの言葉を無視して殴り続ける。

 

鳩尾に彼の渾身の蹴りが入った。

 

肺が圧迫されて呼吸ができなくなった。

お腹の方から何かが昇ってきた。

「ウグッ……オェッ……ゲェェェ……ウゲェェェ」

 

 

 

「雑魚が粋がってんじゃねぇよ、カッコつけやがって……」

嘔吐し屈んでいるオレの顔面に目掛けてまた、大男は、うなりをつけてパンチを繰り出す。

今回のは、彼の全体重をが乗っている。

 

再び鈍い男がして、オレは吹っ飛んだ。

それからは、彼の独壇場だった。

何度も何度も大男は、オレに拳を打ち付ける、飽きる事なく、何度も何度も……

 

 

「ふふふっ、アハハハハ」

 

 

「何を笑ってやがんだよ!!」

 

また、顔面を殴られた。

 

「グハッ……」

口の中が血の味がする……痛い……意識が遠のいてゆく

 

だか、彼のパンチが遠のいてゆく意識を現実に引きずり戻す。

 

「ククク、あははは……なんで、あんたはそんな嬉々として人を殴れるの?何が楽しいの?」

 

 

「楽しいぜ!!テメェみてぇな雑魚をいたぶるのはなぁ!!ハハハハハ!!」

 

延々と殴られた続けた。

徐々に人が集まってくる。

 

それでも御構い無しに大男は、オレを殴る

 

バキッドゴォッ……

鈍い音が鳴り止まない。

 

「おいっ、いい加減にしろよ……死んじまうぞ!!」

 

ちょっぴり勇気のある奴がそう言ったが、ギロリと大男に睨まれるとそそくさと逃げてしまった。

 

「グハッ……ゲボッ」

血を吐いた。

内蔵でも破裂したのだろうか……

ツゥ〜とお腹からヌルヌルした塊が昇ってくる

きっと内蔵の破片かなにかだろう……

 

「ハハハハハ!!痛いかクソ雑魚!!悔しいかクソ雑魚!?」

紅く染まったオレに大男は、拳を打ち付ける。

拳も紅く染まっているのに御構い無しに打ち付ける。

ただ、延々と……延々と……

 

鈍い音が止まった。

どうやら飽きたようだ……

 

「クズが……これでも喰らえや……」

 

顔面に生暖かい液体が掛かるのを感じた

 

ああ、小便か……

汚ねぇ!!と飛び起きる気力もない……

意識が朦朧としている……

 

「よく似合ってるぜ小便まみれのクソ雑魚が……弱い癖に粋がるからそうなるんだ……次は気をつけるこったな」

 

大笑いしながら大男は去って行く……

それから少しして、ビュンと風が吹いた。

 

「無様ね……」

冷たい目をして姫海棠さんは言った。

 

「なんだ、射命丸かとおもった……君だったんだ……」

 

 

「アンタ、それでも男なの?なんでやり返さないの!?」

 

 

「暴力なんて……何も生まない……から……」

 

 

「アハハハハ!!それで、その様ねぇ、小便まみれのズタボロじゃない……なんで、こんな男が仮にも我が組織の一員なのかしら……私達天狗の恥さらしね……」

 

まるで汚物を見るような目で姫海棠さんはオレを見つめる。

 

まぁ、実際汚いもんな……

 

「恥さらしか……それは、悪いことを……しました……ごめんな……さい……」

 

 

「アンタ、誇りって物は無いわけ!?本当に情けないわ、私がアンタだったら情けなくて死んでるわね」

 

 

「…………誇りで……誰かは守れるんですか?」

 

 

「はぁ?」

呆れ顏で姫海棠さんは言う。

 

「誇りで……誰かを救えるんですか?誇りって自らの名誉って……事でしょう?自分、自分、自分ばっかりだ!!そんなのじゃ……人は救えない……そんなのじゃ誰も守れない……だったらそんな物……要らない……そんな誇りなら……とうの昔に……捨て去った!!」

 

キッと姫海棠さんを睨んだ、姫海棠さんはビクッとして、少し焦った表情をしたが、再び冷たい表情に戻った。

 

 

「ハッ、何その妄言、それでアンタ誰も守れてないじゃない……弱い癖に……口だけは達者なのね、アハハハハ、滑稽だわ……」

 

吐き捨てるように言って姫海棠さんは飛んで行った。

 

 

まぁ………そうだよね

オレは、弱い……

 


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