因みに、書く前から某漫画の竜巻を見てこれだ!!
って思ってました。
だから、知ってる人にはイメージしやすいかなぁ?
それに、つまらないかもしれないですね
ごめんなさい。
ハッと目を覚ました。
身体が軋む、眩暈がする、吐き気もする。
血を失い過ぎた。
「う〜!!」
テテテと伊織が駆け寄ってきた。
見渡して見ると成る程、誰かの家の中だ。
観葉植物がそこら中にあるって事は……成る程。
「もう少し寝てなさい」
側で椅子に腰掛けていた幽香が言った。
やはりこの人が介抱してくれたんだな……
情けない……こんな事で倒れて……
こんなじゃ守れない……もっと強くならなくちゃ……
「すみません、もう十分に休みましたんで行きますね、介抱して下さってありがとうございます。このお礼はいつかさせて頂きま」
「黙れ小僧、私は寝てろと言ったのよ?」
言葉を言い切る前に幽香さんが口を開く。
キッとこっちを睨んで、増大していく妖力を感じて、オレは、このまま伊織を連れて家を出ようとする事は出来ないと悟った。
「お言葉に甘えます」
溜息をついて答えた。
「貴方、無理し過ぎよ……この子の為に何も見えなくなってないかしら?」
幽香は、チラッと伊織を見て言う。
「どうなんですかね……オレにも分からない、けれど、オレはこの子の為なら何だってしますよ?」
ニッと笑った。
その笑顔を見て幽香さんは何かを感じたのか表情が強張り、少し引き攣った。
「私には……貴方が狂ってるんじゃないかと思ってしまうわ」
「酷い言い草ですね」
流石に心外だった。
別にオレは狂っちゃいない、いたって正常だ。
何がおかしいと言うのか……
舌打ちしそうになりながらも幽香さんの話を聞いた。
「昔ね、チューリップの花を育ててたの……それはそれは綺麗な花だったわ。そしてそこにはチューリップの花だけでなく色とりどりの小さな花達が咲いていた。」
幽香さんは遠い目をして続ける。
「彼ね、その色とりどりの花達のことが好きだったの、だから、病気になった花や虫に喰われてゆく花達を見て、いつも心を痛めてた。
そんな優しい彼を私はプルートゥと名付けたわ」
彼?あ〜成る程この人は花の事をそう話すのか……
それにしても花にも性別があるのは驚きだ。
オレは欠伸をしそうになりながらも話を聞いた。
「彼はずっと心を痛めてたの、大好きな仲間達が虫に喰われ、枯れてゆく……だから思ったんでしょうね?自分が仲間を守らなくちゃって……」
「いつまで続くんです?この話……」
「黙って聞きなさい」
幽香さんは、刺すような目つきでこちらを見た。
別に怖くなんかなかった。
きっと人間の時ならゾッとして動けなくなっていたんだろうなと思う。
「はじめに彼は丈夫になった、絶対に病気にかからないようにと……
次に彼は虫の嫌がる匂いを放つ様になり、虫達を追い払う棘をつけた、大事な仲間を守る為にね……凄いでしょ?突然変異ってやつよ。
」
「へぇ……そんな花聞いた事ない……」
少しだけその化け物みたいな花に興味が湧いた。
大事な仲間を守るために、強くなろうとして……そして強くなった。
仲間を守れるようになった。
その花を少しオレは尊敬する。
幽香さんは、そんなオレの表情を見て少し暗い表情になった。
そして続ける。
「彼は強く……そして強くなろうとした。けれど、気づかなかったのよ。彼が土の養分を吸い上げるせいで周りの花達がどんどん弱っていってる事を……彼の棘が周りの花達を傷付けていっている事を……
そしてとうとう、彼の大事な仲間は、みんな枯れてしまった。
それでもね?彼は狂った様に咲いているの強く強く……ただ強くなる……もうその事しか考えていなかったみたい。
もうその姿はチューリップなんてものじゃなかった。私にはそれが何よりも恐ろしく、禍々しいものに見えわ」
辛い思い出なのだろうか?
苦虫を噛みしめるように話す幽香さんを見て、なんだかこちらも嫌な気持ちになっていた。
「その花……どうなったんです?」
恐る恐る聞いてみた。
「私が枯らしたわ、このままだと妖怪になってしまって花園の花達を全て喰らいつくしてしまうだろうから……」
「賢明な判断です。」
「私には……貴方がプルートゥに見えるの」
遠い目をして幽香さんは言った。
「ッ!?」
どういう事だろう?
話を真面目に聞いてはいたのだが、オレには彼女の言っている事の意味が分からない。
「気をつけなさい……貴方は1人じゃない。貴方一人で全てを背負い込んで強くなろうとしなくたって良い。そんな事したら貴方はきっと潰れてしまうわ」
こちらを見る幽香さんの目をオレは直視できず、背中の大剣がズシッと重みを増した様な気がした。