東方風天録   作:九郎

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これ読んで意味不明ってなる人多いだろうな……

対して気にしないで下さいませ。
某漫画のあの景色がとても好きなので書いただけです。

ある詩が好きなんですよね

では、ごゆっくり。


唯一名を付けた花

「悪いな、少し怖い思いさせたかな?」

 

青年は、伊織を抱き抱える。

 

後方にはうつ伏せに倒れてピクリとも動かない八雲藍がいた。

 

「いあい?いあい?」

 

伊織は必死に青年に訴えかけた。

 

「ちっとも痛くないよ、嘘じゃない……痛く……ない……」

 

青年は今にも倒れそうだった。

けれど、倒れるわけに行かなかった。

 

この子を守ると決めたから。

 

青年にはそれしか見えなくなっていた。

 

ガタガタと足を震わせて朦朧とする意識の中、青年はニッコリと伊織に微笑みかける。

 

伊織は、それをみて申し訳なさそうな顔をする。

 

自分のせいでクロが痛い思いをしている。

自分が居るせいで……

 

伊織は、そう思った。

 

フラフラと青年は、伊織を抱えて空を飛ぶ

 

空は青くて風は心地よい、秋晴れの天気だった。

 

青年は、自分がどこを飛んでいるのかさえ分からない。

 

ふと下を見てみると、だだっ広い茶色と濃い緑の景色が広がっていた。

 

青年は、その景色に少し見覚えがあった。

 

ズキッと身体が軋む。

 

「ゲホッ……」

 

青年は、血を吐いた。

 

肋が折れて肺に刺さっているのだろうか?

問題無い……

そんなちっぽけなことなんてどうでも良かった。

 

この子が無事ならば……

 

青年はとうとう飛ぶ事さえ出来なくなり、茶色と緑の景色の中に降りて行く。

 

「ねぇ、君たちは枯れる前は苦しかったのかな?こんな……気持ちだったのかな?」

 

青年は、茶色の向日葵に語り掛ける。

 

そして、一歩一歩歩く。

 

フラフラと歩く……

 

そして、とうとう力尽きた。

 

「うろ!?」

ゆさゆさと伊織は、青年を揺さぶった。

 

「からたち……」

ボソッと呟く声が聞こえた。

 

伊織は、不安そうに枯れた向日葵の間から現れた人物を見る。

 

「安心なさい、私は彼に危害を加えるつもりなんて無いわ……と言っても聴こえないんだったわね」

 

幽香は伊織に微笑みかけ、青年を担いだ。

 

「貝細工……今は貴方が別の花に見えるわ、私が唯一名を付けた花……プルートゥ……」

 

幽香は、遠い目をして言った。

 

伊織は、テテテと幽香の後を付いて行く。

途中で鼻に向日葵の葉が掛かった。

伊織は、クシュンとくしゃみをして幽香を必死に追いかける。

 

その様子を見ていた幽香は、クスクスと笑った。

 

「からたちの花……貴方を見ていると外の世界の詩を思い出すわね……ねぇ、クロ……貴方は永遠の悲しみ、不変の誓い、『思い出』も背負ってゆくのね」

はぁと幽香は悲しげに溜息をつく。

 

「枯れない強い花、とっても強い花……でも、禍々しい花……」

 

幽香は、昔自分が見た荒れ果てた花園の情景を思い浮かべていた。

 

全ての花を枯らしてポツンと咲くあの花を……

 


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