東方風天録   作:九郎

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久しぶりに書いたら酷いもんだ。




黒&黒

ある晴れた日の事……

 

「うぜぇ……」

 

黒狼は、頭を下げる青年を見下して言い放つ。

 

「お前しか頼めそうな奴居ないからさ」

 

頭を下げたまま青年は、黒狼に言った。

 

「…………」

 

黒狼は、暫く黙っていた。

 

「オレしか……か……」

 

ボソッと黒狼は、呟く。

 

「ダメならいいさ、このままずっと、お前に頭を下げ続けるのは苦痛なんだ、さっさと断れよ」

 

少しイラついた様子で青年は、言う。

 

「それが、人に物を頼む態度かよ、つったく、躾のなってない鴉だな……頭上げろ、お前にそうされるとムカつく」

 

チッと黒狼は、舌打ちして答えた。

あからさまに嫌そうな態度を取っていたのだが、無意識に自分の口角が上がっている事に黒狼は、気づかなかった。

 

「お前がオレに頭を下げるなんて……相当だな」

 

「ああ、切羽詰まってる」

苦笑いして青年は答える。

 

 

「引き受けてやんよ」

 

黒狼は、面倒くさそうに言う。

ボリボリと後ろ頭を掻き、ハァと溜息をつく。

 

それを見て青年は、キョトンとしていた。

 

「あれ、八割方断られると思ったのに……」

 

「八割方断られると思ったのに、下げたくもない頭を俺に下げたんだろ?」

 

「そうだね」

 

困り顔で青年は、答えた。

それを見て黒狼は、ククッと笑う。

 

「ありがとな……まさか、引き受けてくれるなんて思ってなかったわ」

 

黒狼の目を見ることができず、照れ臭そうに青年は礼を言う。

 

「居ないんだろ?オレしか頼める奴……だったら、仕方ねえわ」

 

黒狼も目を見ずに答えた。

 

「1つ、条件がある……」

 

静かに黒狼は口を開いた。

 

「何?」

怪訝な顔をして青年は、黒狼を見た。

 

ゾォッと全身の毛が逆立つような殺気を覚える。

 

「今からオレと闘ろうや……」

 

剣を抜く黒狼を見て、青年はニヤッと笑った。

 

 

場面変わって現在……

 

 

「クッ、流石に天狗……強いわね」

苦笑いを浮かべて紫は、黒狼を見た。

 

「まぁ、弱かったら仕事できないからな」

余裕綽々とした表情で、黒狼は答える。

しかし、確実に黒狼の体力は、削られていた。

 

流石に幻想郷の賢者様はお強いこった……

足止めも楽じゃない……

 

嫌な汗が黒狼の頬を伝う。

 

その瞬間

 

ギンッと何かに縛り付けられる感覚に襲われた。

 

「ッ!?」

 

「猛犬には、首輪を掛けておかなきゃね」

 

ニヤァと紫は、黒狼を見て笑う。

 

「結界……」

 

鎖状の結界にて縛られた黒狼は言う。

力を込めようにも力が入らない。

 

「チッ……」

黒狼は、舌打ちした。

 

しかし、不敵な笑みを浮かべる。

 

「あら?この状況でまだ勝算でもあるのかしら?」

 

あまりに黒狼が余裕の表情を見せるので紫は、少々焦っていた。

 

「余裕っちゃ余裕かな?割とマジで、強がりだと思うなら思ってくれればいいさ」

 

縛られた黒狼はニヤリと笑って身体に力を込めようとした。

 

その時。

 

ザンッ!!

 

黒狼の鎖が断ち切られる。

 

「悪い、遅れたわ」

 

ボロボロの青年が現れる。

 

「空気読めよ……」

黒狼は、悪態をついた。

 

「えっ、縛られるのが好きなの?キモッ……」

ヘラヘラと青年は黒狼を笑う。

 

「殺されたいのか?糞鴉、これから、一気に畳みかけようと思ってたところに水差しやがって……」

 

「足止めだけで良いって言っただろ?、あとは、オレが伊織連れて逃げればオッケーだし」

 

いつの間にか、青年は伊織を右手に抱えていた。

紫は、舌打ちする。

いつの間にこの子を……

これは、思っていた以上に悪い事態にならそうだわ……

 

紫の頬に嫌な汗が伝う。

 

「オイ、糞鴉……お前、左手どうしたよ?」

黒狼は、青年のぷらぷらとさせた左手を見て眉を顰めて言う。

 

「ん?これ?、いや、相手が強くって左手逝っちゃったわ……まぁ、直ぐに治るさ」

 

気づかれた事に青年は、苦笑いした。

そして、嫌な闘いをしたなぁと大きく溜息を吐く。

 

「さっさと行けよ、ずっとそこに居られると目障りで仕方ない」

 

チッと舌打ちして黒狼は、紫に剣を構える。

 

「ん、ありがとな」

 

ニッと青年は笑って飛び去った。


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