そんなこと言う私もガキですが、もっと文とクロの近そうで遠い関係の話を書きたいですホントに……
では、本編です。
博麗神社にて……
「すいません、この子の事、少しの間だけ面倒見てくれませんか?午前中とか、午後から夕方に掛けてとか、それくらいの時間で良いんです。」
青年は申し訳なさそうに言った。
「はぁ?」
霊夢は露骨に嫌そうに言った。
「ダメですか……」
「寝言を言うのも大概にしてくれる?此処は神社、保育園じゃあないし、私は巫女で保育士じゃない!!」
キッと睨みつけるように霊夢は青年を見る。
それはそうだろう、久しぶりに会ったと思えば開口一番に人間の子供を預かれと宣った。
博麗の巫女である私にだ。
ふざけているのか?
と霊夢は思っていた。
「分かってます、でも、この子をずっと妖怪の山に居させて人と触れ合わない様にしてたら……この子は人の社会に置き去りにされてしまう、少しでも良いんです、少しでも良いから人とちゃんと触れ合える環境に居させてあげたくて」
「だったら、元の親のところに返せばいいじゃない、簡単な事でしょう?アンタが、馬鹿みたいな正義感振りかざしてこの子を攫うから悪いのよ、妖怪のアンタがね……」
厳しい顔つきで霊夢は言い放つ。
「攫ってなんかないです!!それにこの子の親は……」
「変わりゃしないわよ、お金で買ったんでしょう?紫から聞いたわ、分かってる?アンタ妖怪なのよ、元人間だとしてもアンタは人間に深く関わるべきじゃない」
「じゃあ、関らずにこの子が虐待死するのを黙って見てろって言うんです?」
キッと青年は霊夢を見た。
真っ直ぐで綺麗な目つきだった。
「そうとは言ってない!!人間の事は人間が解決すべきだって言ってるの」
「あ〜なるほど、他の誰かが助けてくれるかも知れないからってのが言いたい訳ですか。そんな希望的観測でこの子に救いの手を差し伸べてくれる人が現れるといいんですけどねぇ」
「差し伸べてくれる人だって居るはずよ?現にこの子のされていた仕打ちは人里でも問題になってたわ」
「…………」
青年は何も返せなかった。
伊織がされていた事は人里でも問題視されていたのか……
確かに、オレの出る幕じゃなかったのかも知れない……
そう思った。
「アンタは、誰も信用してないのよ、だから1人で突っ走って周りが見えなくなるの!!もう少し人の事信用したら?」
「……」
青年は俯いて無言になった。
「まぁ、アンタが此処にきたのは正解ね、差し詰め妖怪の山にこの子を置いておいて危険かも知れないと思って、一番安全な此処を頼ったんでしょう?アンタは、誰も信用してないって言ったけれど少しは私の事を信用してくれた訳だ……」
「霊夢さんの言う通りですよ、だから頼んだんです。でも、ムリなら……」
「無理とは言ってない、住まわせる訳じゃないんだもの。それと、アンタのこの子の為に取った行動も間違ってないと思う」
遠い目をして霊夢は言う。
その答えを聞いて青年は驚いた。
「はっ、ハァ!?だってさっき………」
「あ〜、それはただ単にアンタが気に入らなかっただけよ、人間の事に考え無しに首突っ込んでしまうアンタがね、だから説教しようと思って、私が伝えたかった事はもうアンタは分かってる筈よね?アンタ賢いもの……」
フッと霊夢は笑った。
それをみて青年は苦笑いして頷く。
「何か企んでません?」
怪訝な顔で青年は霊夢を見たが、折角頼んだ相手を勘ぐるのは失礼だと思い、深々と霊夢に頭を下げ、礼を言った。
そして、賽銭箱が溢れるほどの賽銭を入れてその場を去ることとした。
かつてない程に賽銭が満載された賽銭箱を見て霊夢はこれは夢なのだろうか?と思って頬を抓っていた。
そして……
「これでいいの?」
霊夢は顰め面で何もない虚空に言った。
すると虚空にスキマが現れ
「及第点ね、かなり演技が下手だったから」
紫は、クスクスと笑う。
「点なんてどうだって良いのよ、アンタに言われた通り動いた理由が聞きたいのよ、さっさと話してくれる?」
不機嫌そうに霊夢は紫を睨んだ。
「あら、怖いわねぇ、大した理由じゃあないわ、彼が心配なだけよ、彼は必死に父親を演じている、立派な事よ……妖怪なのに、人間の子供を本当の父親のように愛そうとしてる……」
「良いことじゃない?前に会った時よりも大人びた感じがしたわ」
「良いことなのよ、良いこと……けれど、一つ間違えば彼は何を仕出かすか分からない……危険よ、今回ばかりは本当に危険なの……」
「考え過ぎじゃない?どう危険だってのよ?」
厳しい表情を見せる紫に怪訝な表情で霊夢は問うた。
「彼は、あの子の為に何だってするわ……例え全てを敵に回しても、それが一番恐ろしいのよ、下手したら異変どころの騒ぎじゃない」
「杞憂よ、前回クロが妖怪に変じた時だってアンタの杞憂だったじゃない、考え過ぎなのよ」
霊夢は笑って言った。
彼女なりに青年を信頼していたからだ。
「だと良いけれど……」
紫は、遠い目をして呟いた。