東方風天録   作:九郎

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心に来るような描写って難しいですね。

クロですが、性根はそんなに変わってないです。
正直言うと私は嫌いです。

ちょっと疑問なんですけど、人間の性根って短時間で変わるもんなんでしょうか?

嫌な予感しかしないからこれ以上言及しないですけども……

では、本編です。



好奇の目

「なんで人間の子供がここにいるんだよ……」

 

近くで食事を取っていた天狗が言った。

 

「なんでも、人間上がりの鴉天狗が半ば脅す形で無理矢理大天狗様に認めさせたらしいよ、ホラッ、あの前髪がX字の鴉天狗さ」

 

コソコソと天狗達が話しているのが嫌でも耳に入る。

 

「…………」

 

チッと舌打ちしそうになった。

 

「あう〜」

 

周りの雰囲気を察したのか伊織もオドオドと周りを見渡していた。

 

他の天狗と目が合った。

天狗は、慌てて見ていないように装った。

 

「止めなよ、目を合わせたら何されるか分かったもんじゃないぞ、何しろ、あのクロって鴉天狗、決闘で低い位からかなり高位の位まで出世したって話さ……」

 

コソコソと天狗達が話している。

 

イライラした。

 

「クロ、決闘なんかするからこうなるのよ?」

 

キッと文はこちらを見て言った。

 

決闘した事を咎めているのだろう。

 

「これしか方法が無いと思ったんだ」

 

素っ気なく答える。

 

「…………」

 

呆れた顔で文がこちらを見つめる。

 

「ごめん……」

 

「別に私は良いんですけどね、でも、この子はどうなんでしょうか?」

 

ふと伊織を見ると冷や汗を、かきながらオドオドと周りを見ていた。

 

ああ、この子は周りの雰囲気を察するのが得意なんだろうな。

 

だって、察せないと酷い目に合う世界で生きてきたのだから。

 

そして、またコソコソと天狗達の話が聞こえてくる。

 

聞こえるようにワザと言っているのだろうか?

 

 

「人間風情が我々天狗に敵うわけ無いのに、きっと何かの間違いだろう?ホラッ、あっちに座ってる奴、たしか文々。新聞とか書いてる記者だぜ?」

 

「ああ、あの晩年ランキング外の新聞の?」

 

「きっと、あいつが嘘の記事を書いて周りに広めたんじゃない?そうじゃないとしてもさ、あの人、結構高位な天狗だし、コネで出世したに決まってるさ」

 

 

「ああ、天狗の癖に人里に下りて取材してる異端児だよね、アレだけめちゃくちゃして裁かれないなんて、上に媚を売るのは得意なんだな……」

 

「身体でも売ってんじゃない?」

 

「ハハッ、違いない」

 

カチンと来た。

 

「クロ、言ったでしょう?私は良いって。」

 

今にも立ち上がろうとするオレの手を掴んで文は言った。

 

「ごめん、本当にごめん……こんな事になるって考えてなかった……」

 

 

「だろうな〜って思ってたんですよ、クロは、この組織に所属して間が無いですからね」

 

ふぅ、と小さく溜息を吐いて文は笑う。

 

パシャッとシャッター音と共にフラッシュが焚かれた。

 

「ひうっ……」

伊織は驚いていつもの防御体勢を取った。

 

「新聞のネタゲット〜さてさて、どんな風に書こうか?妖怪の山に無理矢理入山した人間の子供、前代未聞だからね〜認めたくない奴だってたくさんいるはずだ、こうやってこの子の顔が認知されれば、消そうとする輩もでてくるかもね〜」

 

「ハハッ、新聞も売れて妖怪の山の天狗達の役にも立てる、新聞記者冥利に尽きるな」

 

ケラケラと天狗達は笑った。

 

ふと隣の席を見てみる。

 

青年が足を投げ出して座っていた。

 

「えっ!?」

 

天狗達は、驚いた。

先ほどまで遠くの席に座っていた筈なのに、いつの間に!?

不味い……

 

そう思った。

 

「あんたらさ、ちょっとお兄さんと外歩こうや?」

 

ニコッと笑った。

 

「はぁ……この子が関わると本当に周りが見えなくなるのね、クロの馬鹿たれ……」

 

文は頭を抱えた。

 

 

そして数分後。

 

「ごめん、待たせた。」

 

「何したんです?」

刺すような目つきで文はこちらを睨んでくる。

 

「いいや、何も、お話しさえできなかったね、伊織の写真だけどカメラごと目の前でぶっ壊してくれたし、なんか伊織関係の記事は書かないから勘弁してくれってさ?」

 

「ふぅん、嘘は吐いてないですよね?」

 

「そりゃ、勿論、お前怒らせたら怖いの身をもって体験してるんでね、あー腕がイタイナ〜」

 

 

「流石にそこまでバカじゃないですか」

ヘッと文は笑う。

 

「う〜」

心配そうに伊織がこっちを見てきた。

 

だから、ギュッと抱きしめる。

 

「大丈夫だよ、例え、世界が終わってもお前を離さないから……」

 

ニッと笑うと伊織は、ニコッと笑い返した。

 

「…………」

文は遠い目をしてそれを見つめていたが、オレは気付かなかった。

 

いや、気付けなかったんだ。

 

周りが見えてないから……

 

 


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