東方風天録   作:九郎

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更新です。

システム的に無理があるのでちょっと変更するかもしれません。



では、本編です。


下剋上

大天狗様の屋敷にて……

 

「なんということだ……」

 

大天狗は驚愕していた。

 

「オレみたいな位の低い天狗でも、駆け上がる事ができる……いいもんですね『決闘』ってのは。で?約束……守って下さいね?」

 

ニッコリと青年は、笑った。

服は、ボロボロで血も付いている。

 

『決闘』というものは、天狗組織内でのルールである。

 

下の者が位が上の相手に決闘を申し込み見事に勝利する事ができれば、位が上の者になり代われるといった具合だ。

 

「何人倒した……?」

 

震える声で青年に問う大天狗

それを見て青年は、ニコォと不気味な笑みを浮かべて

 

「さぁ?後から嫌でも分かるでしょう?」

と返した。

 

「命が惜しくないのか貴様は!?」

 

大天狗は、低い声で言う。

 

この決闘という下剋上ルールは、あまり天狗達に好まれておらず、好んでやる天狗は、相当な酔狂者か、狂人である。

 

なぜなら、位が下のものは殺されても文句は言えないからだ。

 

上の位のものは、決闘において合法的に同族を殺しても良い事となっている。

 

そして、下の位の者は上の位の者を殺すと罪に問われる。

 

あくまで、戦闘不能にするか、負けを認めさせるかのどちらかが必要なのだ。

 

「大天狗様、人間の子ども……山に住まわせてもいいですよね?」

ニッコリと青年は笑って大天狗を見た。

 

恐喝に近い無言の圧力を大天狗は、感じていた。

 

「そういう約束だからな……」

諦めた様に大天狗は、溜息をついた。

 

できるわけがないと思っていたのだ。

 

たかが、人間上がりの鴉天狗が他の武闘派の天狗達に闘いを挑みその地位を奪い取るなど……

 

最初に青年が、約束を取り付けに来た時、大天狗は内心ほくそ笑んだ。

 

問題児が合法的に消されるのだから。

だから、快諾した。

 

しかし、結果は予想外の事だった。

 

「ねぇ、大天狗様……」

 

「なっ、なんだ?」

 

大天狗は、答える。

頬に嫌な汗が伝った。

 

「貴方に決闘申し込んだら……ダメですか?」

ニコォと青年は、笑う。

 

「馬鹿者!!儂は武闘派ではない!!狼藉を働くのも大概にせい!!」

 

大天狗は、青年を怒鳴りつける。

しかし、内心は怯えていた。

 

青年の姿が、自分の良く知っている

『ある男』と重なったからだ……

 

「あははは、冗談ですよ〜あっ、あと文がこっち来たら伝言よろしくお願いしますね?」

 

ケラケラと青年は笑って去って行く。

 

「再来か……」

 

大天狗は、ある男を思い出し胃が痛くなった。

 

 

「ガハッ!!」

 

ガクッと青年は膝をつき吐血する。

 

身体中の傷口が開いて大量に出血していた。

 

「流石に連戦はキツいな……修行が足りてないって事か、もっと、もっともっと強くならなきゃ……」

 

青年は、呟く。

 

「貴様……よくも!!」

 

青年の前に5人の天狗が立ちはだかる。

 

青年に敗れて位を奪われた天狗達である。

 

「あら?どうしたんですか?そんなに殺気だって?」

 

惚けた様子で青年は、天狗達を見る。

 

無言で天狗達は刀を抜く。

 

青年は、理解した。

 

きっとオレを消そうとしてるんだろうな……

 

きっとこいつらは!オレを消して位を奪われた事を無かった事にしてしまうつもりなのだろう。

 

「逃げ場は無いぞ!!」

 

天狗達は凄む

 

しかし、青年は出血しつつヨロヨロと自分の周りに円を描いた。

 

「そりゃ、怒りますよね?ポッと出の下郎の天狗にいきなり決闘挑まれて、遊び半分で受けたら負けちゃったんですもん……オレだって押し掛けて悪かったと思ってますから……だから……、自分からは攻めません、この円の中に入ってきた者を、すべからく斬ります」

 

ニコォと青年は、笑う。

 

この状況は、青年も予想していた事だった。

 

しかし、予想以上に身体が疲弊している。

 

馬鹿だなぁオレは……

 

こりゃ死んだなぁ

 

と青年は、思った。

 

それ程までに連戦で疲弊していたのだ。

 

しかし、ふと幼子の事を思った。

 

文の事を思った。

 

すると自然と力が湧いてくる。

 

負ける気がしなかった。

 

オレが死んだら、誰が文を守るのだろう?あの幼子を誰が守るのだろう?

 

だから……オレが生きて

 

『守り抜く』

 

キッと鋭い目をする青年の能力は、完成されつつあった。

 

 

 

 

 

 

 


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