では、本編です!!
夜、いつも通り山の警備をしていた。
この時間はあまり侵入者は来ない。
結構楽な仕事だ。
トージの馬鹿タレはオレと一緒なのが嫌なのか、どこか離れたところで仕事をしてるみたいだ。
空を見上げると月がキラキラと輝いている。
「ルナティック……」
なんとなく意味不明な言葉を呟いた。
満月の夜、こんな日はロクな事がない。
本当に……ロクな事がない。
「仕事よ……」
スキマから紫が唐突に現れて耳元で呟く。
それみろ、やっぱりロクな事がない。
重い腰を上げて仕事に向かう事にした。
2分程経ったろうか?
ここは里の外れである。
やはり飛行するのは慣れない。
あの子みたいに速く飛べない……
そんな事はどうでも良い。
仕事しなくちゃ。
「誰だお前は?」
目の前の男が問うた。
「オレかい?バケモノ……」
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服が血で汚れた。
大剣も血塗れだ。
洗わなくちゃ……
殺した。
オレは人を殺した。
でも、殺さないといけない奴だったから。
だから……
こいつは食べても良い人類だから。
こいつだって殺したもの。
たくさん殺されてしまう前に、オレがやらなくちゃ……
「クソが……」
だんだんと慣れてきた自分が嫌になる。
仕事は簡単さ、背後から首をヘシ折るか、今回みたいに鉢合わせしても、反応出来ないスピードで首を斬り落とす。
そんな難しい事はない。
最初は嫌だった。
嫌で嫌で堪らなかった。
きっと、悪い奴でも性根は良い奴なんだ!!
そう思っていた時があったのだ。
けれど、どうやら間違っていたみたいだ。
腐った奴はいる。
殺さないといけない奴は少なからずいるみたいだ。
こいつがして来た事は許せない。
本当ならバラバラに引き裂いてやりたい。
でも、それをやったら怒られるから。
取り敢えず死体を担いで次の目的地へと向かう事にした。
「あら、最近は人肉の提供が多いわね」
紅い屋敷のメイドは言った。
「世も末だよ」
ケッと笑って死体をメイドの前へ放り出す。
「貴方、いつも機嫌が悪いわね?妖怪が人間を襲う事なんて普通な事でしょう?何をそんなにイライラしているの?」
メイドが問うた。
「さぁね、それにしても趣味の悪い洋館だね〜本当に、血のように紅い屋敷だ、この屋敷の主人のセンスを疑うよ」
ピッと喉元にナイフを突きつけられた。
「イライラしてるからといって八つ当たりで嫌味を言うのは関心しないわね」
冷めた口調でメイドが言う。
気付かなかった。
速いなコイツ……
いや、速さというか、別の何かだろう。
「ハイハイ、すいませんね〜じゃオレはこれにて退散します。アンタに喉元掻き切られるのは嫌なんで。さいなら咲夜さん」
ヒラヒラと手を振って背を向けた。
修行が足りないな……
アレにも反応できるようにならなくちゃ。
「嫌なんでしょう?人を殺すのなんて、嫌なら辞めて仕舞えば良いのに……」
ポツリと咲夜さんは呟いた。
「辞めてしまいたいとは何度も思いますよ?今だって思ってる、けど……」
「けど?」
「オレがやらなきゃ誰がやるんですか?」
キッと咲夜さんの目を見て答えてそのまま飛んだ。
これ以上この話はしたくなかったから。
知ってるさ、他の妖怪だってこのくらいはできるかもしれない
けど、背負うのはオレだけで充分だ。
青年が去った後……
「哀しい目をしてるわね……それに、背中の大剣はとっても重そうにみえるわ……」
咲夜は月を眺めて呟いた。