東方風天録   作:九郎

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試験的に一人称視点の書き方してみました。

正直言うとこっちの方が断然書いてて楽しいんですよね。

まぁ、地の文と混合して読みにくいとは思いますが……

では、本編です。


無意識少女と天狗の青年

ふぅ〜と白い煙を吐いた。

 

霧散してゆく煙に何故だか儚さを感じてしまう。

 

人間だった頃を思い出して、少し嫌な気持ちになった。

やはりオレの人生は糞だった。

 

無意識に舌打ちをしたけれど、ふと少女の顔が頭を過ってまた無意識に微笑んでいる事に気付いた。

 

そういえば、トージだっけか?

 

あいつはどうしたのだろうか?

 

暫くオレを見つめていた後にスッと立ち上がって何処かに消えた。

 

「サボりやがったな……」

 

自分も人の事なんて言えないけれど、流石に持ち場を離れるのはどうかと思う。

 

別にどうでもいいのだけれど……

 

スーッと心地の良い秋風が肌を掠める。

 

気持ち良いなぁ

 

ここに吹く風はとても心地よい。

 

オレもこうありたいものだ……

 

「ん?」

 

心地よい風に少しだけ違和感を感じた。

何故だろうか?

 

淀んだ、いや、歪んだと言った方が正確かもしれない。

そして、その違和感が何なのか直ぐに理解した。

 

そして、自然と身体が動いた。

 

「これ以上先に進んだらダメだよ?」

 

「ヒッ!!」

 

オレは変な格好の少女の首元に大剣の刃を向ける。

 

少女は、驚いてオレの方を見た。

 

小刻みに震えている。

 

驚いたのは此方の方だ。

 

全く気配がしなかったのだから、しかし、何故この子が直ぐ側まで近づいて来ていた事に気付けたのかは自分でも分からない。

 

怯える少女を見て、少し……悪い事したなと思った。

 

「なっ、何で分かったの!?分かる筈ないのに!!」

 

目を皿のようにして少女は言った。

 

「何となくさ」

 

適当に答えた。

だって、自分でも分からないのだから。

 

「怖いよ……お兄さん」

 

首元に突き付けられた刃をチンチクリンな格好の少女は見つめて言った。

 

「あっ、ごめん!!」

 

慌てて大剣をしまった。

 

無意識に殺意を込めてこの幼子に刃を向けていた事を後悔した。

 

嫌だなぁと思う。

 

侵入者は殺したって構わない。

他の天狗達だって殺してる。

 

けれど、オレはこんな幼子を殺したくなんてない。

 

チルノの時もそうだったけれど、この子が自分の守れなかった【あの子】と重なった。

 

「初めてだよ、私の事気付けた人って!!やっぱり地底に引籠るより地上に上がった方が色々と面白いなぁ〜」

 

オレが大剣をしまったのを見て安心したのか少女は、ニッコリと笑って呟いた。

 

「何しに来たの?返答によってはオレは仕事をしなきゃいけなくなるんだ、このまま帰ってはくれないだろうか?オレはサボりたいんだ」

 

冷淡に言ってやったけれど、少女はニコニコ顔を止めなかった。

 

「私、こいしって言うの!!貴方は?」

 

無視かよ……

さっさと帰ってくれれば良いのに。

 

「オレ?クロだよ」

 

「なんだか、猫の名前みたいね〜」

 

「猫に名前つけるようなノリで付けられた名前だからね」

 

ムスッとした顔で答えてやった。

 

「その割には誇らしげに言うね〜」

 

「ああ、気に入ってるんだ」

 

無意識にそんな答え方をしていたのか、自分でも不思議だった。

 

まぁ、あの子がくれた名前なのだ、大切にしたい。

 

「私ね、散歩してるだけだよ?別にこの先に用事なんてないの。でもね?地底は退屈なの」

 

ポーン地面の石ころを少女は蹴飛ばして言った。

 

それが何処かの天狗に当たらないかなぁと考えた。

 

「だったら、ここに来るのはオススメしないな。他の天狗達はオレみたいに優しくないぜ?こいしちゃん、殺されるかもよ?」

 

「大丈夫だよ、私はみんなに気付かれないから……『無意識に意識』してるクロは多分例外なんだよ、とっても数少ないね。」

 

遠い目をしてこいしちゃんは言った。

 

無意識に意識?

まぁ、的は得ているんだと思う。

何故だか分からないけれどそう思う。

 

「大丈夫だろうけど、オレはこいしちゃんが危ない目に遭うのは嫌だな、今のオレの立場じゃ守れないから」

 

「優しいんだね、クロって、それにクロは嘘をついた。立場上守れなくたってそんなの御構い無しにクロは、守りに来そうだよ?そんな顔してる」

 

ギクッとした。

 

自分の腹の内を見透かされた。

 

嫌な子だと悪態を吐いてやろうかと思ったけれど、きっとこの子はただ、思った事を素直に言ってるだけだけなのだ。

 

純粋な子なんだな……

 

「オレは優しくなんてないさ、面倒な仕事が嫌なだけだよ。さぁ、さっさと帰りな、ここは危ない」

 

オレはこいしちゃんを下山させるために回れ右させ元来た道を帰る様に促した。

 

「また、会いに来て良いかな?」

 

名残り押しそうにことりちゃんがこっちを見た。

 

「絶対にダメ、オレも二度と会いたくないし………………仕事中は」

 

最後だけ小声で言った。

 

自分の言葉でこの子を傷付けるのが嫌だから。

 

「また今度ね……」

 

最後の言葉が聞こえていたのか聞こえていないのか分からなかったけれど、ニッコリと笑うこいしちゃんの顔を見たら。

 

きっと聞こえてたんだなぁと思って少し恥ずかしかった。

 

 

 

 

 

 


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