東方風天録   作:九郎

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やっぱり戦闘描写苦手だなぁ。


では、本編です。


山風

「これより訓練を始める、オイ、クロ貴様一番乗りだったな?貴様が最初じゃ、ここにおる哨戒天狗達相手に倒れるまで闘え」

 

キッと鴉天狗は、青年を睨む。

 

青年が何をしたのか理解しての事だろう。

 

ちょっとした嫌がらせである。

 

「ハイ」

 

青年は、冷淡に答えた。

まるで、機械のように。

 

「ッ!!これが、訓練用の木刀だ、何時までその大剣を背負っとる気だ?さっさと下ろさんか!!」

 

青年の返答にイラつきながら鴉天狗は、怒気を交えて言う。

 

「下ろすなんてとんでもない、背負い続けなくちゃ……」

 

ニコッと青年は、笑った。

 

それを見て鴉天狗は、呆れた顔をした。

 

「勝手にしろ、後悔するのはお前だ」

 

「ええ」

 

また、青年は機械のように答えた。

 

そして、武道場の中央に立つ。

 

ダラッと身体の力を抜いて構えも何も取らずに立った。

 

「てめぇ、よくも同僚に手ぇだしてくれたな!!」

 

青年の1人目の相手となる白狼天狗が青年を睨んだ。

 

「はて?なんの事やら?」

 

青年は、とぼけた顔をして白狼天狗を煽る。

 

「貴様ああああ!!」

 

白狼天狗は、頭に血が昇って逆上して青年に斬りかかる。

 

勿論、木刀でだ。

 

斬られても青年は、死なない。

 

そして、斬られても白狼天狗は、死なない。

 

それが幸いだった。

 

ザンッ!!

 

悲鳴や呻き声すらあげる事なく白狼天狗は、倒れた。

 

 

青年は、ダラッと立っている。

 

「貴様ああああ!!」

 

仲間が倒されたのを見て逆上した天狗達が次々と青年に襲い掛かる。

 

「なっ、止めんか貴様ら、正々堂々と一対一で……」

 

指導者である鴉天狗の言葉など彼らには聞こえなかった。

ただ、暴徒と化した天狗達が徒党を組んで青年に襲い掛かる。

 

その時の青年の表情は、焦っていたのか?

 

困っていた顔をしたか?

 

それとも、絶望的な状況だと思って途方にくれたか?

 

 

否、断じて否である。

 

 

青年は、笑った。

 

ニャァと口角を吊り上げて笑った。

 

純粋に楽しいと思ったのだ。

 

多対一など体験した事がなかったし、何故だか気分が高揚した。

 

きっと、これは戦闘特化の天狗の性なのだと青年は理解する。

 

そして、前のようにそれに対して嫌悪感が湧かなかった。

 

 

ズバッと天狗が青年目掛けて打ち込む。

 

しかし、青年は、スルリと避けた。

 

獲物に群がる蟻の如く。

 

何度も何度も天狗達は青年に打ち込む。

 

しかし、それは全て空を切ったゆく。

 

「風……」

 

見ていた鴉天狗は無意識に呟いていた。

 

幾重にも重なる剣戟を一太刀も浴びずに避けて行く青年の姿を

どうやっても、捕らえられずに、スルリと掌から抜けて行く風と形容したのだ。

 

風は、形が無い。

 

だから青年は構えない。

そして、捕らえられない。

 

しかしながら、自然界の風というものは、表情がある。

 

時には春風のように優しく包み込むように草木に生を運び、そしてある時には木枯らしのように冷たく死を運ぶ。

 

ザンッ!!バシッ!!ドスッ!!

 

リズミカルに青年は、立っている天狗達の数を減らして行く。

 

速くて激しい。

 

「山風……」

 

また、無意識に鴉天狗は、呟いた。

 

今の青年は、山から一気に駆け下りて行く風なのだ。

 

疾く、そして阻む者を薙ぎ倒して行く。

 

そして、1分も経たない内に、武道場は、死屍累々となった。

 

「つまらない……」

 

ハァと青年は溜息を吐いた。

そして、鴉天狗の方を見る。

 

 

「ッ!?」

 

ストンと鴉天狗は尻餅をついた。

 

(首を……斬り飛ばされた?)

 

ダラダラと冷や汗をかいて鴉天狗は、青年を見たので。

 

青年は、ガッカリして再び溜息を吐いた。

 

その瞬間である。

 

「ッ!?」

 

背後から何者かが青年を襲う。

 

ガキイィッ!!!

 

咄嗟に青年は、受け止めた。

 

「よぉ、0点……オレが相手してやるよ、良いだろ?哨戒天狗の隊長が遊んでやるんだ。」

 

「誰?」

 

青年は、首を傾げた。

 

「祇園燈次」

 

冷淡に黒狼天狗は答える。

 

「そんな奴は知らん」

 

青年も冷淡に答えた。

 

「ハッ、前にお前を殺しかけた男だぜ?何を強がってんだよ」

 

ヘッと息を吐いて黒狼は笑う。

 

「え〜、訓練中に乱入されたら困るんですけど〜お帰り下さ〜い」

 

にやけた顔して青年は、面倒くさそうにクルリクルリと木刀を回転させる。

 

「物足りないんだろ?」

 

青年を見てニヤリと黒狼は笑った。

 

その言葉を聞いて

 

「まぁ、さっきよりか楽しめそうだ」

 

と青年は、回答して笑う。

 

 

 


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