「そういやオレ、ベルカ文字はわかんねーな」
「はっ、アホが」
「んだとてめー!?」
「だ、大丈夫ですよ。私がわかりますから」
「お世話になるッス、エルスさん……」
「アタシは読めるから別にいいけどな」
「マジかよ……」
「ベルカっ子である以上は読めなきゃな」
「なんだ? そういう決まりでもあんのか?」
「ねえよ」
「それにしても、本当にいろいろな本がありますね……」
「伊達に書物庫ごと納まってるわけじゃねえってことだ」
「えーと、確かこっちだっけか?」
「そのはずですけど……」
「……終わった」
「そうか。次は誰を剥ぐんだ?」
「…………その言い方は誤解を生むからやめてほしい」
探索を始めてから数十分後。アタシは予定通りクロと合流した。
クロはすでにハリーやシェベルたちを小さな瓶の中に閉じ込め、エレミアの手記を探している。
それにしても瓶の中に閉じ込めるだけならまだしも、服を剥ぐ必要はあんのか?
「どういう仕組みなんだ? これ」
アタシはウェズリーとシェベルが閉じ込められている瓶を手に取り、中を見つめる。
……なんでお前ら裸で抱き合ってんだ? ひょっとしてそういう趣味?
とりあえずこの瓶でシェイクしてみよう。よく考えたらまたとない機会――
『サツキさん!! あたしに構わず思いっきり振っちゃってくださいっ!!』
『待つんだリオちゃん! サツキのパワーで振られたら嘔吐程度じゃ済まない!!』
『大丈夫ですっ! むしろ本望ってやつですよ!』
『どうすればそんな答えにたどり着くんだい!? 一体サツキに何を吹き込まれたんだ!?』
――なんか寒気がするからやめとこう。
「なんでサッちゃんがそっちにおるんや!?」
「あ?」
あれ? もうツインテール組とご対面か。ほら、あの二人ツインテールじゃん。
しかしこうも早くジークと再会することになるとはな。
ていうかストラトスはどこいった? さっきから見当たらねえけど……
「……もう閉じ込めた」
早いな。
「……クロ、先に行け」
「…………でも」
「大丈夫だ。上手くやる」
「……ご武運を」
アタシはクロが行ったことを確認し、ジークと正面から向き合う。
とはいってもケンカするわけじゃない。残念ながら時間稼ぎだ。
その鍵となるプチデビ二号がアタシの後ろに隠れている。
「なあジーク――」
「許さへんよ、サッちゃん」
「……じゃあどうする?」
「――ぶん殴る」
へぇ、大きく出たな。
「アタシをか?」
「そや。言い訳してもあかんよ」
「お生憎様、そんなものは考えてねえよ」
「ほな歯ぁ食いしば――」
「ジーク、後ろ」
「――へ?」
ジークが後ろを振り向いた瞬間、凄まじい爆発音が室内に響き渡った。背後をとった二号が爆弾を投げつけたのだ。
つーか危ねえな。こっちも巻き込まれそうになったじゃねえか。
「…………」
「おいおい、マジかよ」
あれを至近距離で食らったってのにほぼ無傷かよ。
しかもダメージを受けるどころかエレミアの神髄が濃くなったように感じるんだが。
周囲には高密度弾の弾幕陣が生成されており、その光景を見た二号はビビっていた。
まあ、無理もねえけどさ。ていうかさっきの爆弾って確か呪いを形にしたものだった気が……
「ゲヴァイア・クーゲル」
少し首を傾げながら考えていると、ジークが周囲に生成した弾幕陣を撃ってきた。
一発でも食らえば致命打は確実といっても過言じゃない。――並みの奴だったら。
アタシは二号を庇う形でこの弾幕陣を壊さずに受け止め、一つに束ねる。
次に二号が逃げたのを確認し、左手を猫の手のような形にしてから後ろに引いて構えた。
「絶花――!」
そしてすぐさま左手を突き出し、一つに束ねていた弾幕を弾き返す。
ジークはそれを受け止めようとしたが、螺旋回転が加えられていることに気づいたのかギリギリで回避した。
「んじゃ、この辺でずらかるとしますか」
「逃がさへ――はうぅっ!?」
アタシたちを追いかけようとしたジークが顔面から綺麗に転倒しやがった。
なんつーか……躓いたというより靴のサイズが合わなかったせいで転んじゃったって感じだな。
「あう……な、なんでブーツが……?」
ジークも似たような答えにたどり着いたみたいだ。
……あれ? なんかアイツ徐々に縮んでないか? いや、きっと気のせ――おい待てガチで縮んでやがるぞ!?
内心で驚いている間にジークは幼女となってしまった。呪いってそういうやつか……。
「なんやこれ――――っ!?」
そしてそれは『ちゃんぴおん(笑)』誕生の瞬間でもあった。
閑話休題。
「……落ち着いたか?」
「う、うん……」
あれからひたすらジークを慰めた。とにかくうるさかったよ。
ジークが縮んでいるというのもあるが、キレなかったアタシは絶対に偉い。
しかし呪いと聞いてはいたがまさか幼児退行の類いとは思わなかったぞ。
「動きづらいなぁ~……」
「そりゃそうだろ」
服のサイズが合ってないんだから。
「サッちゃん――
「顔面に絶花ぶつけたろか」
え? 何? 幼女になったからって優しくしてもらえるとでも思ってんのか?
ジークはなんでや!? と言わんばかりに驚愕し、なんか呟き始めた。
内容はあえて聞かなかったことにしておく。
「……貸し三つな」
「え――ふえぇっ!?」
時間がないので仕方なくジークをお姫様抱っこする。
もしかしたら最大級の屈辱かもしれない。まさか嫌いな奴を抱っこするはめになるなんて。
ジークもまさかホントに抱っこされるとは思ってなかったのか、今まで以上に顔が真っ赤になっていた。
「さ、さ、さ、サッちゃぁんっ!?」
「なんだようるせえな」
「え、これ、今
めっちゃ不本意だがその通りだ。
「これで一歩前進や……!」
「…………」
「サッちゃんあかん! それ以上は
~~しばらくお待ちください~~
「次余計なことをほざいたらお前の髪で裸締めをかますぞ」
「は、はいー……」
ジークをダンゴムシのように丸めてからどっかにぶん投げようとしたが、あまりにもじたばたするので結局丸めることはできなかった。
ちなみにお姫様抱っこは継続中だ。どういうわけかジークはいつもより大人しくなってるし。
とりあえず移動しないと始まらないので、警戒しつつその場から立ち去った。
活動報告で実施しているアンケートの期限が迫ってきました。まだの人は協力してくれると助かります。
なお、投票は感想欄ではなく活動報告欄でお願いします。
《今回のNG》TAKE 5
「次余計なことをほざいたら坊主頭にしてやる」
「それだけは堪忍や――っ!!」
「素手で綺麗に抜いてやるから安心しろ」
「安心でけへんよ!?」