死戦女神は退屈しない   作:勇忌煉

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第44話「もうイヤやこの三人」

「さてと、行くか」

「どこ行くん?」

「デ――」

「嘘や絶対に嘘やっ!!」

「……………………まあ、嘘だけど」

「よかった……」

「んじゃ、今度こそ行くわ」

「あっ、サッちゃん!」

「……んだよ」

「どこ行くん?」

「またかコラ」

「はぐらかしたサッちゃんが悪いんよ?」

「姉弟でいろいろと街を回るんだけど……」

「はいっ!! それ(ウチ)も行くっ!!」

「……やめといた方がいいぞ?」

「それでも行くっ!!」

「…………いやだからやめといた方が――」

「それでも行くっ!!」

「勝手にしろぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「お、サツキちゃーん!」

「よう」

 

 アタシは今、姉貴やイツキと街で合流している。

 コイツらと一緒に出掛けるのは地球にいたとき以来だからな。ちょっと楽しみなんだわ。

 なんせいざというときには罪を擦りつけることができるからな。それなのに――

 

「――お前マジでついてきたのかよ」

「うぅ……」

 

 なんか増えてしまった。そう、なんか増えてしまったのだ。

 

「あれ? なんでジークさんが……? あ、もしかしてデート中だった?」

「殺すぞ」

「…………冗談だよ姉さん」

 

  テメエなんてこと言いやがるんだ。コイツはコバンザメみたいについてきただけだっつの。

 ほら見ろ、ジークもかなり引いてんじゃねえか。ていうか頼む、お前は今すぐ帰ってくれ。

 

「ジーク。帰れ」

「い、イヤやっ!」

「なんでだよっ!? テメエ明らかに自分場違いじゃね? 場違いじゃね? って顔してんじゃねえか!」

「それでも、来てもうたからには帰らへんよっ!」

「いやそこは二つ返事で帰れよ!」

 

 はっきり言って迷惑でしかない。

 

「まあまあサツキちゃん。来ちゃったものは仕方ないよ」

「夫婦ケンカはそこまでにしてさ、早く回ろうぜ。時間がもったいないし」

「ふ、夫婦……!?」

「そだな。あと夫婦じゃねえよ」

 

 それだとハネムーンに行かなきゃなんねえからな。

 

「どこから回るのかな~?」

「そうだな……公園でよくね?」

「そだな。俺もちょうど休憩したかったし」

「皆ほとんど動いてないと思うんやけど!?」

 

 あのジークがツッコミをした……だと……?

 

(なあ、今日のジークおかしくねえか?)

(どうして?)

(いやだってよ、あのジークがまともにツッコミしたんだぞ? 普通ならあり得ねえよ)

(確かに。いつもなら姉さんがツッコミ役だもんな)

(うーん……たまにはそういうときもあるんじゃない?)

(…………そういうことにしとくか)

(そだな)

 

「さ、三人して何を話してるんや……?」

「「「禁則――なんでもねえ」」」

 

 アタシたちの声が綺麗にハモる。

 前みたいに甘ったるい声は出さねえぞ。あれ気分が悪くなるからな。

 

「このあとどうする?」

「ケンカしようぜ!」

「それいつもやってるように思えるんやけど!?」

「いや、ここはスカートの中を撮るべきだろ」

「イッちゃんって変態さん……?」

「いやいや二人とも、ここは間を取って闇拳クラブにでも行こうよ」

「そんなクラブあるわけないやろ!?」

「それ2、3年ほど前に参加したことあるわ。そのとき連勝していた奴を半分ほど再起不能にしてやったけど」

「再起不能はやり過ぎやろ!? っていうかほんまにあったん!?」

「じゃあテメエはどうしたいんだよ!」

「どうせあんたは姉さんと核融――イチャイチャしたいとか言うんだろ!」

「なんでジークちゃんはこんな変態さんになってしまったのやら……」

「え? あれ!? なんで(ウチ)が責められとるんや!?」

 

 ツッコミがうるさいからに決まってるだろ。

 

「まあいいや。こんなの放っといてさっさと行こうぜ」

「だからどこに行くんだよ?」

「街をぶらつきながら決める」

「もうそれでええやん……」

 

 よくねえよ。刺激がなさすぎる。とてもつまんねえ。

 そういやあの闇拳どうなったんだろう? アタシが連勝していた常連をぶっ潰して以来、それらしい噂がなくなったんだよなぁ。

 

「とりあえず行こうや」

「へーい」

「そだね」

「おー!」

 

 一人うるさい。

 

 

 

 

 

 

 

「これなんかどう?」

「スミさん……?」

「おいおい、ここはこれでいいっしょ」

「怒るよイッちゃん?」

「なんで俺だけ怒られるんだよ!?」

 

 服屋にて。アタシたちは今、ジークに学生服を着せている。それと猫耳と尻尾。

 いわゆるコスプレってやつだな。ちなみに姉貴が勧めたのはスク水、イツキが勧めたのは某麻雀アニメで悪石なんとか仮面な女子が着ていた巫女服だ。しかもすっげえはだけたやつ。

 

「ほらほら、早くやれよにゃんにゃん!」

「やらせてどうする気なん!?」

「写真を撮って商品にする――」

「売られてまうんか(ウチ)!?」

「――って、イツキが言ってた」

「シバくでイッちゃん!?」

「汚えぞ姉さん! 俺に罪を擦りつけるなんて!」

 

 擦りつけてはいない。実際にお前、そういうことやってるじゃん。

 まあ、アタシもそれを参考にさせてもらってるんだけどね。

 

「ジークちゃん本人はサツキちゃんのものでしょ?」

「ちげえよ」

「そこんとこどうなのジークさん?」

「え、あ、うぅ…………!」

 

 問い詰められたジークは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 ……え? なんだその満更でもない感じは? 肯定するようならブチのめすぞ?

 

「う、(ウチ)は……」

「ん?」

(ウチ)は……」

「何かな?」

「…………に、にゃんにゃん♪」

「あ、尻尾が取れたからやり直しね」

「えぇ――っ!?」

 

 急ににゃんにゃんしたかと思えば尻尾が取れてしまったらしいのでやり直しとなった。

 ドンマイ、ジーク。一切手助けはしないからそこんとこよろしく。

 当のジークは顔をさらに赤くしてにゃんにゃんポーズのまま固まっている。

 よし、後でイツキが撮った写真をもらうとしよう。撮るのめんどいし。

 

「ほらジークちゃん! もう一回やりなよ!」

「早く早く!」

「サッちゃん一生のお願いや! ここから連れ出して! お姫様抱っこで!」

「へぇ、こんな服もあるんだな」

「サッちゃんのアンポンターン!」

 

 後でシバく。

 

 

 

 

 

 

 

「もうイヤやこの三人……」

「どうした? アイス食べないのか?」

「食べるに決まってるやろ……!」

 

 あれから数時間。アタシたちはジークを使って存分にストレスを発散すると同時に様々な方法で弄んだ。

 ガーターベルトを着用させたり、体操服を着せてから路地裏に放り込んだり、単純にパシったりと。

 路地裏に関しては餌として利用したから釣れた連中はアタシと姉貴でボコった。

 

「今日はお疲れだったね♪」

「誰のせいやと思ってるんよ……!?」

「いや、ついてきたあんたが悪いかと」

「全くだ。姉弟水入らずだったのに来ちゃったし」

「ま、ジークちゃんで三人目だよ」

(ウチ)以外にも被害者が……!?」

 

 そういやいたな。

 

「とにかく、今日は久々に楽しかったな」

「そだね。こんなに楽しい休日は久々だったよ」

「いい商品――もといサンプルも手に入ったし一石二鳥だ」

「……………………」

 

 アタシたちがそれぞれ感想を述べる中、ジークはただ一人俯いて黙り込んでいた。

 ま、放っておこう。アイツもアイツでそれなりに疲れているはずだし。

 そんなこんなで今日はストレスが発散できたということもあって楽しい一日となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな扱いあんまりやぁ――っ!!」

 

 なんか後ろでジークが叫んでいるけど気のせいだろう、きっと。

 

 

 

 




《今回のNG》TAKE 85

「今日はお疲れだったね♪」
「誰のせいやと思ってるんよ……!?」
「お前だろ」
「ジークちゃんだね」
「ジークさんでしょ」
「仮にそうやったとしてもこれは酷すぎやろ!?」
「いや何がだよ?」
「こ、この格好や!」
「あぁ、チアコスか」
「私はいいと思うけど?」
「とりあえず足上げようか」
「ほんならイッちゃん、そこに頭を置いて」
「待て! それだと俺の頭が踵落としでザクロになってしまう!」
「はよ置け!」
「だが断る!」

 カメラどこだっけ……。



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