死戦女神は退屈しない   作:勇忌煉

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第30話「楽しめるかどうかだろ」

「さすがに3連戦はキツいわねー」

「本当だね」

「正直私はいけたかなー」

「お前と皆は違うんだよ……ていうか初戦以降、全く参加してねーだろ」

「あ、ノーヴェ」

「おう」

「私だけじゃないよ。多分サツキちゃんもおんなじこと考えてる」

「それにしてもあんた、随分変わったわね」

「何が?」

「あたしたちと初めて会ったときはかなり荒れてたじゃん」

「それは――ノーヴェの方だろ。私は平常通りだったはずだ」

「さらっとあたしを巻き込むな」

「どっちもどっちじゃない」

「そうそう。特にスミレなんか敵味方関係なかったもんね」

「それは今もだ。私に歯向かうなら容赦はしねえ」

「昔よりはマシよ。あのときのあんた、おもしろいと思ったことならなんでもする人間だったんだから」

「だっておもしれーじゃん」

「だからお前と皆は違うんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

「インターミドルで強い子って実際本当に強いよねえ」

「そうなの!」

「良い例ここに」

「待て。なぜアタシなんだ」

 

 模擬戦が無事に終わり、ロッジで休憩していたのだが……この有り様である。

 ようやくインターミドルの話題が持ち上げられたのだ。

 模擬戦は姉貴と共に集束砲に飲み込まれてリタイアした。

 わりとマジで計画通りなのだよ。2、3戦目は参加しなかったけど。

 ちなみにイツキは2戦目でヴィヴィオと対決している。

 

「え? サツキさんってそんなにスゴい人なんですか?」

「八重歯へし折るぞ」

 

 それだとアタシがホラ吹きみてえじゃねえか。

 

「そういえば、以前お会いしたときに会場では敵同士とか言ってましたけど……」

「そうなんですか?」

「まあな」

 

 ここでアタシは少しだけ疑問に思う。あれ? もしかしなくてもコイツら忘れてねえか?

 それはそれでなんか釈然としねえが……まあいいか。

 

「大会が始まればすぐにわかることだろうし」

 

 アタシの呟きは誰にも聞こえなかったらしく、ガキ共は未だにはしゃいでいた。

 そのあとはストラトスが大会出場を決意したかと思えばまさかのデバイスありません事態に陥り、ルーテシアが真正古代(エンシェント)ベルカな大家族こと八神と愉快な仲間たちに協力を要請するということで話は終了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 真夜中。またしてもウェズリーがベッドに侵入してきたので放置プレイを使って撃破した。

 だが、それのせいで眠れなくなったのでロッジの外にて久々に精神統一をすることにした。

 ぶっちゃけスポーツ選手がやるような練習はあんまりやってねえからな。

 かといって完全な才能の塊というわけでもないが。

 

「………………ストラトスにイツキか。どうした?」

「あ、その……眠れなかったので少し起きてたら集中力のようなものを感じたので――」

「ここに来たってわけだ。ていうかあんた、人間やめろよ」

「だが断る。アタシは人間だ」

「…………」

 

 まさかストラトスやイツキの部屋にまで伝わっているとは思わなかったな……。

 ちなみにヴィクターが言うには観客席にまで伝わっていたこともあるとか。

 

「インターミドルに出る理由は――やっぱ覇王の悲願に関係することか?」

「はい」

「それとイツキ。お前は出ないのか?」

「興味ねえよ」

 

 ストラトスの行動原理はある程度ノーヴェから聞いている。

 それでも詳しくは知らんし、どうでもいいけど。

 ついでに言うとイツキがインターミドルに出ないのは予想済みだ。

 

「……無理だな」

「姉さんもそう思う?」

「……なぜサツキさんもイツキさんも、わかったような言い方ができるんですか?」

「わかるからだ」

 

 いくらベルカ王族の子孫とかいっても、コイツはジークみたいに別格ってわけじゃない。

 いや、ベルカ王族の子孫自体が別格なのか? うん、それはないな。

 まあ、アイツは王族じゃなくて戦闘民族っぽいやつらしいけど。どこのサ○ヤ人だよ。

 もしもコイツが誰がどう見ても規格外ならアタシやイツキが黙っちゃいないだろう。

 

「大会予選までは時間があると聞きます。それまでに鍛えれば……!」

「ある程度は強くなるだろうな。でもな――」

 

 そうなればコイツでもエリートクラスはホイホイ進めるだろう。――対戦相手次第で。

 だけどそれまでだ。初参加のルーキーがそう簡単に都市本戦まで来れるわけがない。

 

「世の中そんなに甘くねえよ」

「っ!」

 

 ストラトスの表情が険しくなる。例を挙げるなら、アタシに真っ向から挑んで勝てなかったという事実。

 この実力差をたかだか数ヶ月鍛えただけで縮められるとはとても思えない。

 埋めるなんてもってのほかだ。それだけは絶対にねえよ。

 

「まさかとは思うが、あれがアタシの本気とか思ってないよな?」

「……違うんですか?」

「違うわ。お前と約束したのは『手を抜かない』ってやつだ。手を抜かない=本気を出すなんて方式、誰が決めたよ?」

 

 手を抜かないってのはあくまで気を引き締めるという意味だとアタシは思っている。

 格下だろうと格上だろうといきなり本気を出すのは気が引けるんだよ。マジでつまんねえからな。

 

「それともう一つ。アタシの知る裏舞台にお前の居場所はねえよ」

「…………それはどういう意味ですか?」

「ふはっ――笑わせんな。ぶっ殺すぞ」

「……っ!?」

「姉さんストップ。それ以上はマジで危ないから」

 

 頭に手を当てると同時に()()()()()が出てしまった。だってそうだろう?

 例えるなら世間知らずのお嬢様が素手でプロの殺し屋に勝てます、って言ってるようなもんだ。

 

「ま、大丈夫とは思うが……つまりはそういうことだ。アタシはもう寝る」

「あっそ。お休み、姉さん」

 

 とりあえず、ベッドを占領しているウェズリーの再撃破に当たるとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

「今日から受付……で、間違いないな?」

〈そうですよ。よく覚えていましたね〉

 

 翌日。すぐさまラトに毒づかれた。なんでやねん。

 あれからウェズリーを再撃破するのにかなり手間取った。なのでとても眠い。

 今日が休みでよかったよホントに。学校はあるみたいだけど。

 

〈出場、なされるのですか?〉

「一応な。今年はおもしろそーな奴らもいるし。つまりおもしれーじゃん」

〈マスターらしい理由ですね〉

 

 とりあえず通信端末を使って連中に宣戦布告をしておいた。これで伝わるだろう。

 

 

 

【かかってこいや!】

 

 

 

 たった一言、たった一言のシンプルなメッセージだ。

 うむ、我ながらいい出来だ。細かく伝えるよりずっとわかりやすい。

 

「どうだ、完璧だろう?」

〈ノーコメントで〉

 

 そこはコメントしてほしかった。

 

「そんじゃ、さっそくルーテシアからもらった申請書でも書きますかぁ」

〈今年こそ優勝してくださいよ?〉

「どうでもいい」

 

 優勝よりも、まずは楽しめるかどうかだ。

 

 

緒方サツキ(15)

市立学校高等科2年

Style:我流格闘戦

Skill:(ぜん)(てい)(ほう)(しゃ)

Magic:真正古代(エンシェント)ベルカ

Device:アーシラト

IM参加履歴:3回

最高戦績:都市本戦準優勝

 

 

〈……優勝、してくださいね?〉

「どうでもいい」

 

 

 

 




 リメイク前ではあやふやになった技能(スキル)名も無事に決まりました。

《今回のNG》TAKE 13

「昔よりはマシよ。あのときのあんた、おもしろいと思ったことならなんでもする人間だったんだから」
「例えば?」

「そうだな――おっさんやルーテシアと旅してたときに立ち寄った研究所で大暴れしたのは楽しかったと感じている」

「「「アウトだよ(よ)」」」
「え? どこがアウトなんだ?」
「大暴れってところよ!」
「いや普通だろ?」
「ていうか初耳なんだけど?」
「…………あ」
「待て。なんだそのしまった……! みたいな顔は」
「さあ?」



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