死戦女神は退屈しない   作:勇忌煉

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第27話「タオル風船は必須なのだよ」

「あークソッ……愚弟のせいで無駄に疲れたぞゴラァ」

「ようサツキ」

「……お前もやる気か?」

「私は君たちと違って大人だからやるわけないじゃん」

「いや、それは理由になるのか?」

「なるさ」

「…………ま、それはそれで残念だ」

「で、あの二人はどうだった?」

「実力的には同格じゃねえか? 多分」

「……あっそ」

「そんじゃ、アタシは戻らせてもらうよ」

「どうぞご自由に」

 

 

 

 

 

 

 

「タオル風船は最高だぜ!」

「サツキちゃん。家族として恥ずかしいからやめてくれ」

「…………チッ」

 

 ただいまお風呂なう。周りが楽しく雑談をしている中、アタシはタオル風船に熱中していた。

 ていうかマジで疲れた。ストラトスだけならまだしも、どういうわけかイツキにまでケンカ売られたし。ブチのめしたけど。

 

「うーん、ここの角度をこうしたらもっといいはず……」

「サツキさーん! 何をしてるんですか?」

「ああっ! ダメだよリオ、邪魔しちゃ――」

「八重歯引っこ抜くぞクソコラ」

「なんでですかぁ!?」

「あーもう言わんこっちゃない……」

 

 こっちはタオル風船を作るのに忙しいんだ。つーかウェズリーよ、顔は嫌がっても雰囲気でめちゃくちゃ喜んでいるのがバレバレだぞ。

 まさかここまでの変態だったとはなぁ……今度そのちっこいケツと八重歯を鞭で打ってやろうか。原型を留められない状態になるまで。

 言っておくがアタシにSMの趣味はない。見るには見るけど。

 

「待ってろよ、今作ってやるからな」

「えっと……」

「サツキちゃん、タオル風船にはかなり凝ってるんだよね」

「あ、あはは……」

「そうなんですか~……」

 

 なんかドン引きされているけど気にしない。そんなことよりもタオル風船だ。

 

「いいぞ、この調子を維持す――」

「サツキちゃん。せっかくの眺めを見逃す気かい?」

「もうあんたを家族として見るのやめようか?」

「やっはは、冗談だよ」

 

 そりゃまあ、大きなお友達にとっては桃源郷で間違いなしだろうけどさ。

 アタシと姉貴を除いてもランスターとスバルとノーヴェの豊満なおっぱいにルーテシアの隠れ巨乳、そしてその他大勢のペッタンコ。

 お尻は……よくわからん。胸は大きさで判別できるがケツはあんまり変わらねえし。

 まあ、人類がまだ四足歩行だった頃の背景がわかればケツの良さもわかるかもしれないけど。

 当時突き出していたのはケツでおっぱいは隠れていたはずだし。

 それにこういうのはイツキの専門分野だ。きっと今ごろ、カメラで撮りまくってるだろうなぁ。

 

 

 ――ブシャァァア

 

 

 なんか鼻血の噴射音が聞こえたけど気のせいじゃないのは確かだ。

 

「キャロ、ジュースくれ」

「あ、はい」

 

 とりあえずキャロにジュースを取らせ、アタシはそのままタオル風船の作成を続行することにした。

 だってタオル風船楽しいし。ケンカほどではないけど楽しいし。

 

「いよっし! 一号は完成した。次のタオル風船っと」

 

 見事な形でござる。これだからタオル風船はやめられない!

 たまたま近くにあったタオルで第二のタオル風船こと二号を作成し始める。

 

「ふむ……これも悪くない」

 

 これまた良い形の風船ができてきたぞ。あとは形を維持できるように固定して……。

 

「ふえっ!?」

「どうしたの?」

 

 突然キャロが声を上げた。いきなりはやめてくれ、タオル風船が台無しになるところだったじゃないか。

 すると今度はランスターが跳ね上がり、すぐさま湯船から上がってルーテシアに抗議していた。

 いや、抗議というより……んん? まあいいや、どうでも。

 

「ここをこうして、次は」

「はわっ!」

「きゃあ!」

 

 

 ――ズパァッ

 

 

「この空いてる部分を……」

 

 なんか周りが騒がしいけどどうでもいい。今いいところなんだ。邪魔したら殺す。

 なんかティミルやヴィヴィオまで騒がしいけどそれもアタシには関係ない。

 ストラトスに至っては水斬りをかましている。火事場のバカ力ってやつか。

 

「よし、順調だ。あと一息だな……!」

 

 もう少しで、タオル風船二号が――

 

 

 バシャッ(何かがアタシの胸をタッチする音)

 

 ゴポッ(タオル風船が壊れる音)

 

 

 ――タオル風船二号が。

 

「「「あ……」」」

「…………」

 

 た、タオル風船が……

 

「…………」

 

 タオル風船が……

 

「あっ!?」

「ふえっ」

「うわっ!」

 

 魂のこもったタオル風船が……

 

「がお――っっ!」

 

 アタシの……タオル風船が……!

 

「や――っ!!」

 

 ふ、ふふ、ふふふふふ……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ぶっ殺す」

 

 よくもタオル風船を……タオル風船を……!

 

「アタシは……! アタシは怒ったぞ……!」

「さ、サツキさん! 落ち着いてください!」

「いくらなんでも人殺しはよくねえ!」

「イィッシャァー!!」

 

 体にタオルを巻き、ノーヴェとティミルの制止を振りきって大ジャンプする。

 止めるな、タオル風船を壊した奴――セインをぶっ殺さなきゃアタシの気は収まらねえ……!

 

「え? さ、サツキ?」

「死ねやこのクソッタレがぁ――っ!!」

「ぐふぉ――っ!?!?」

 

 吹っ飛んだセインに追いつくと同時に踵落としを腹部に打ち込む。

 これがまた見事に命中し、温泉にダイナミック落下した。それに続いてアタシも着地する。

 

「まだ終わってねえ!」

「ちょ、サツキ、まっ……!」

 

 浮きながらもなんか言おうとしたセインに跨がり、喋る余地すら与えずひたすら殴り続ける。

 死ねぇ……! ひたすら死ねぇ……! 殴りまくったアタシはセインを片手で水中から引き上げ、何度も何度も頭突きをかました。

 

「サツキ! それ以上はアウトよ!」

「落ち着いてくださいー!」

「セインが死んじまう……!」

「ダメだってば!」

「死ねっ! 死んでアタシに詫びろぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ま、誠に申し訳ありません……!!」

「抑えてください……!」

「離せ……! 離せテメエら……!」

 

 目の前でボロ雑巾になったセインが土下座している。絶好のチャンスなのに!

 なのにストラトスを始めとするガキ共、というかほぼ全員に全力で抑えられて動けない。

 マジで離せキサマらぁ! コイツは今すぐここで汚え花火にするべきなんだっ!

 

「落ち着けサツキ」

「ごふっ!?」

 

 今までどこに行っていたのか、突如戻ってきた姉貴のボディブローがアタシの腹部に直撃した。

 

「よし、皆。もう離しても大丈夫だ」

「――はっ!?」

「気分はどうだ?」

「……………………いいわけねえだろ」

 

 今すぐにでもセインを葬りたい。

 

「チッ。アタシは先に上がっとく」

「へいへい」

 

 そんなわけでアタシは一足先に温泉から退場したのだった。

 あークソッ、せっかくタオル風船の作成を楽しむつもりだったのに最悪だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらサツキちゃん、早かったわね」

「…………ああ」

「……さ、サツキさん? もしかして――」

「それ以上はいけない」

「わ、わかりました……」

「ちょっと部屋で横になってくる」

「そ、そう? じゃあご飯ができたら呼ぶわね」

「…………メガーヌさん」

「ええ、起きてしまったみたいね……」

「一体誰が犠牲になったんでしょう……」

 

 

 

 




《今回のNG》TAKE 39

「うーん、ここの角度をこうしたらも――ああっ! また崩れた! ならもう一回……!」

「…………」
「……は、話しかけづらいね」
「うん」
「そだね」



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