死戦女神は退屈しない   作:勇忌煉

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第26話「不良ナメんじゃねえよ」

「あー終わった終わった」

 

 アタシはストラトスがどうなったか確認してみると、叩きつけたストラトスを中心にクレーターができていた。決め手はパワーボムだ。

 わりと威力が出ていたのか、ストラトス本人は全く動く気配がない。どうやら完全に沈黙したようだな。

 あとは……幸いにも周りにある木が無事だったことに喜ぼう。

 

「よっしゃ! 周囲への被害を最小限に抑えたぞ」

〈よっしゃ! ではありません。やり過ぎであることに変わりはありませんからね?〉

 

 そんなことはない。いつもならトラウマができるほどにボコっている。

 そういやストラトスの使っていた流派――確か覇王流……だっけか。まだまだ伸びるかもな。

 

「アインハルトさん!」

 

 沈黙したストラトスはヴィヴィオに任せるとしよう。後始末とかマジめんどいし。

 イツキもヴィヴィオと同じようにストラトスの元へと駆けつけていた。

 

「カラコン一号。二号は任せたぞ」

「えっ? さ、サツキさんは!?」

「ロッジに戻る」

「あ、はい……それとわたしはヴィヴィオです!」

 

 ツッコむところそこかよ。思わず転けそうになったじゃねえか。

 ま、そこそこ楽しめたから問題ねえかな。そう思いつつ、アタシはその場を立ち去ろうと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あたぁっ!?」

 

 ――立ち去ろうとしたら後ろから思いっきり蹴飛ばされた。

 誰だいきなりアタシの腰を蹴飛ばしたクソッタレは!? ケツじゃないだけマシだが。

 

「…………やっぱテメエか」

「悪いな。なんか俺も体動かしたくなったんだわ」

 

 振り向いた先にいたのはイツキだった。しかし、蛇に睨まれた蛙のような表情とは打って変わって闘争心丸出しの好戦的な表情をしている。

 ……今のでスイッチ入ったのかよお前。以前はそんなことなかっただろ。

 アタシはすかさずバリアジャケットを着用した。向こうも着用してるからな。

 

「なんでだよ」

「理由がなきゃケンカできねえのかおめえは」

「あ゛ァ?」

「……いいよ、なんでも。やろうぜ、地球の続きだよ」

 

 こんのガキ……言わせておけば調子乗りやがって。

 あとケンカすんのに理由はいらねえよ。これ常識な。

 

「ったく、お前はどこまでもバカだなぁ?」

 

 アタシとイツキはゆっくりと構え、すぐさま右拳を互いの顔面へ同時に突き立てた。

 クソッ、意外といてえな。伊達に努力してるわけじゃないってことか。

 拳が直撃した衝撃でアタシとイツキは二、三歩ほど下がってしまうも、アタシは間髪入れずに奴の顔面を右拳で殴り飛ばす。

 殴られたイツキもお返しと言わんばかりに同じく右拳でアタシの顔面を殴ってきたのでこれを受けきり、前蹴りを入れる。

 

「――んのヤロォ!」

 

 頭にきたのか、イツキは右のハイキックをぶつけてきたのでこれをガードする。

 次に簡易的な飛び蹴りをかましてきたので横に逸れて回避し、殴りかかろうとするも裏拳を繰り出してきたのでバックステップでかわす。

 すぐに右拳を突き出したがこれも受け止められ、逆にボディブローを打ち込まれ、追撃のアッパーが繰り出されるもギリギリで回避した。

 アタシはなんとか反撃しようと繰り出された右蹴りを受け止め、右手で肩を掴んでから頭突きをお見舞いした。

 

「っ!?」

「テメエばっか動いてんじゃねえよ!」

 

 奴の動きが止まった一瞬の隙を見逃さず、膝蹴りを入れてから左拳で殴り飛ばす。

 踏みとどまったイツキは右拳をアタシの顔面に打ち込み、前蹴りを入れてきた。

 

「ナメんなクソガキ!」

「しま……っ!?」

 

 しかし、それらを受けきったアタシは再び突き出された右拳を左腕でガードし、渾身のハイキックをぶつけた。

 これをモロに食らったイツキは見事にぶっ倒れた。はっ、準備体操でくたばってんじゃねえよ。

 

「チィッ! こんのアマァ……!」

 

  イツキは痰を吐きながら立ち上がり、今度は左蹴りを入れてきたがアタシはこれを軽々と受け止める。

 するとこれを狙っていたのか、奴はアタシが蹴りを受け止めると同時に空いていた右脚でこっちの顔面を蹴飛ばしやがった。

 アタシは当然不意をつかれ、見事にぶっ倒れる。クソッタレが、なかなかやるじゃねえか。

 

「あー……いってぇ~」

「余裕こいてんじゃねえよ……!」

 

 アタシとイツキはすぐに立ち上がり、間合いをとる。これがまたいてえのなんの。

 こっちの態度がよほど頭にきたのか、額に青筋を浮かべたイツキはアタシの懐に膝蹴りを入れてからハイキックをかましてきた。

 アタシも負けじと奴の顔面に肘打ちを繰り出し、かわしたところを狙ってジャンプしてからの後ろ回し蹴りをかました。

 

「クッソ……」

 

 あれを食らったってのに踏ん張るか。さすがはアタシの弟ってとこかぁ?

 

「さっきからクソだのなんだのうるせえんだよクソバカ」

「それを言うならテメエもだろクソアマ」

「…………」

「…………」

 

「「誰がクソアマ(バカ)だァ!?」」

 

 今回ばかりは頭にきたぜクソが。アタシはすかさず奴の脇腹に右拳を二発ほど打ち込む。

 対するイツキも右拳でアタシの顔面をぶん殴り、再び殴りかかってきたがアタシはこれを腕が組み合った状態になるように受け止める。

 そして膝蹴りを二発ブチ込み、そこそこ大きな木がある方へ放り出す。

 

「イィッシャァ――ッ!」

 

 するとイツキはその木を蹴って飛び上がり、アタシの顔面目掛けて回し蹴りをかましてきた。

 さすがのアタシもこれは防げず、モロに食らって倒れてしまった。

 ヤッベェ、コイツぁ想定以上だわ。まだ想像を越えたわけではないがな。

 アタシはゆっくりと立ち上がって血の混じった痰を吐き捨てる。

 ふとイツキの方を見ると、完全にしてやったりな表情になっていた。ムカつくな。

 

「まだこれからだろうが」

「相変わらずなんつータフさだよ……アイちゃんと戦ったあとだってのに」

 

 体勢を整え、イツキの顔面を思いっきりぶん殴った。

 奴も踏ん張るとすぐに殴りかかってきたが、なぜかさっきよりも攻撃の精度が落ちていたので楽々かわすことができた。

 どうやらぶん殴られた際に目を痛めたらしい。アタシは間髪入れずにもう一発拳を打ち込んだ。

 

「っ! こんにゃろ……!」

 

 今度は連続で殴りかかってきたが、やはり攻撃の精度が落ちているので簡単にかわせた。

 次に繰り出された左拳をしゃがんで回避し、すかさず前蹴りを入れた。

 すると奴はアタシの懐に突っ込んできた。アタシはこれをなんとか受け止め、肘打ちを三発ほどかましてから引き剥がす。

 そして頭突きをお見舞いし、左蹴りをぶつける。

 

「この……!」

「オラッ!」

 

 イツキはその蹴りを受け止めるも、それを狙っていたアタシは体を横回転させ、左側から右の回転蹴りをブチかました。

 左脚を受け止めている状態で同じ左方向から入れられた蹴りを止められるはずもなく、奴はこれをモロに食らってド派手にぶっ倒れた。

 もちろんここを見逃すわけがない。アタシはすぐに立ち上がるとイツキのマウントを奪い、右拳で顔面を二発ほどぶん殴った。

 さすがに響いたのか、イツキはとうとう動かなくなった。

 少し息を荒くしながら、アタシはその場にいる連中全員にはっきりと告げる。

 

 

 

 

 

「…………不良ナメんじゃねえよ、クソ共が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

「あ、アインハルトさん!」

「ヴィヴィオさん……私は……」

「大丈夫ですか?」

「今は動けませんがなんとか大丈夫です。……イツキさんは?」

「え、えーっと……」

「…………あれ? どうしてイツキさんが倒れているんですか?」

「それはですね……」

 

 

 ――しばらくお待ちください――

 

 

「と、というわけなんです……」

「………………私が気を失っている間に一体何が……!?」

「ごめんなさい! わたしにもわかりません!」

 

 

 

 




 今回派手に暴れたイツキが主人公の外伝作「学校嫌いな彼は死戦女神の弟」もできればよろしくお願いします。


《緒方サツキの悪いところ》

雷帝
「一つ一つ挙げていくとキリがありませんわ。代表的なものでいうならよく私の顔面を殴る点ですわね」

砲撃番長
「悪いところとかマジでキリがねーよ。強いて言うならサボり癖が凄まじいところだな」

不良シスター
「悪いところって……そもそも存在自体が――」
※これ以上は彼女の命が危ないので断念せざるを得なかった。

アホ○ア
「うーん……よく暴力を振るうところやね。特に(ウチ)なんか()()()()()で……」

天瞳流師範代
「ふむ……スポーツマンシップがないところかな?」

魔女っ子
「…………悪いところだらけ。でもやっぱり嫌いにはなれない」



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