死戦女神は退屈しない   作:勇忌煉

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第22話「あれ? 同性結婚じゃないの?」

「前期試験なぁ……」

「勉強しなくていいのか?」

「もう覚えたから大丈夫」

 

 前期試験まであと二日。アタシとハリーとその愉快な仲間たちは猛勉強に励んでいた。

 ……正確にはアタシ以外の全員が、だけど。アタシはイツキからパクったエロほ――参考書を読んでいる。

 

「ていうかなに読んでんだよ」

「成人向けの参考書」

「………………はぁ!?」

 

 さすがはウブなハリーちゃん。見事な茹で蛸の完成である。

 

「なんつーもん読んでんだおめーは!」

「読むか?」

「え、えっと……少しだけなら――やっぱいい!!」

 

 この反応がいいんだよ。ほら、周りの男子も顔を少し赤くしながらハリーの方を見てるし。

 アタシはどうかって? 見られることはあんまりないな。

 よくわかんねえけど目が合ったら殺されるって学校中の噂になってるし。

 多分、去年暴れまくったのが原因だろうな。屋上の扉についた血なんか未だに取れないし。

 

「早くしてくんねえか?」

「いや、帰りたいなら先に帰れよ。これ自習だから」

「は? 自習?」

「……先生の話、聞いてなかったのか?」

 

 全然聞いてなかった。

 

「アタシはどうしようかな」

「オレとしては帰ってほしい」

「……なんだとゴルァ」

「待て。ここでキレるのはさすがによしてくれ」

「なんで?」

「皆はおめーと違って勉強してるからだよ!」

 

 皆、という言葉に反応したアタシはとりあえず周りを見てみた。

 アタシが振り向いた途端、一斉に目を逸らすクラスメイト。

 あれ? アタシお前らになんかしたったけ? なんもしてないよなぁ?

 

「――ぶっ殺す」

「やめろサツキ! そんなんだから皆に避けられるんだよ!」

 

 ごもっとも。別にいいけど。

 

 

 

 

 

 

 

「試験が終われば合宿かぁ……」

「……合宿?」

「ああ。なんか試験休みを使って旅行するんだと」

 

 その日の夜。アタシは合宿の準備をしつつ、最後の癒しであるファビアと会話していた。

 ぶっちゃけ癒しになるのならファビアでなくてもいいんだけどね。

 癒しにならねえのなら利用価値はねえし。だから今のファビアは癒し要員である。

 

「…………サツキも行くの?」

「一応な」

「……そう」

「その間、家の出入りは自由にしていいぞ」

 

 コイツならまだジークよりは信用できる。

 

「さすがにお菓子やご飯は出ねえがな」

「…………自分でなんとかする」

 

 さすがはファビア。ジークやハリーとはある意味次元が違う。

 アタシは一服しつつ、冷蔵庫から買っておいたビールを取り出す。

 

「このビールやタバコともしばらくお別れになるのか……」

 

 なんせ姉貴が同行するからな。一つでも持参すれば間違いなく盗られる。

 イツキはそういうのやってないから大丈夫だろうけど。

 いや、アイツもなんだかんだでアタシらの弟だからな……将来的にはやりそうだ。

 

「……大丈夫。なんとかして買っておくから」

 

 マジか。

 

「いや、アタシとしてはありがたいけど――お前、未成年だろ?」

「……サツキも人のこと言えない」

 

 ごもっともでございます。そういやそうだ。もしここが地球ならアタシもバリバリの未成年だ。

 いや、こっちでも未成年だったな。今までよくビールを入手できたものだ。

 

「やっぱりうめえなぁ。ところでプチデビルズは元気か?」

「……うん」

 

 アイツらとは最近会ってないもんな。んーと、確かド○キーみたいな一号、縞模様の二号、槍を持った三号がいたはずだ。

 まあ、コイツが元気っていうなら元気なのだろう。悪さしてそうだけど。

 

「とにかく、試験は余裕だから準備しなきゃ」

「……手伝う」

「お、助かるわ」

 

 そういえばジークもアタシのいない間にここへ来そうだな。

 アタシは一枚の用紙を取り出し、ジーク宛の置き手紙を書くことにした。

 そうだな……置き手紙なんだしどうせなら壮大にいくか。

 

「ファビア。合宿初日だけはここに来るな」

「……わかった」

 

 ここまで理解が早いとは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、無事に試験が終わったねサツキちゃん」

「るせえよ」

 

 合宿当日――違う、初日か。アタシは金髪おっぱいが運転する車に乗っている。

 姉貴の言う通り試験は無事に終わった。成績は今回も学年5位。今もこの順位をキープしている。

 ハリーの奴は二桁で喜んでたけどな。まあ、それが普通か。

 

「サツキちゃん、ここまで来て逃げるのはなしだからね?」

「誰が逃げるかよ――ところでその金髪おっぱい誰?」

「もしかして私、忘れられてる!?」

 

 運転手の金髪おっぱいが少し慌てる。事故だけは勘弁な。死ぬのはお前らだけだが。

 

「サツキちゃん、テスタロッサだよ。ほら、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」

「なんだその無駄に長い名前は」

 

 いくらなんでも長すぎる。実在する人物にしては長すぎる。

 架空ならまだそれ以上に名前の長い奴がいるけどな。例えば山神ル○シーとか。

 

「よろしくな、テスタロッサ」

「私って影薄いのかな……?」

「そ、そんなことないよフェイトママ!」

 

 お前の目立つところなんてその金髪と揺れるおっぱいだけだろ。

 フェイトママという呼び方から察するにどうやらヴィヴィオのおふくろみてえだな。

 ……あれ? ヴィヴィオのおふくろってなのはじゃなかったっけ? なんで二人もいるんだ?

 

「お前らどういう家庭なの?」

「確か同性結婚だったような――」

「「違うよっ!?」」

 

 違うんかい。

 

「じゃあなんでママなんだよ。ヴィヴィオを後継者にでも育て上げるつもりか?」

「サツキちゃん。向こうに着いたら――」

「あーあー!! 聞こえない聞こえない!」

 

 その先を聞いたら今回の合宿が絶望の色に染まってしまう。

 こちとら無理やり連れていかれるってのにそれだけは避けたいところだ。

 

「ところでイツキは?」

「もう次元港に行かせてある」

「どうやって行かせたんだよ」

「普通に地図を使わせた」

 

 なるほど。確かにアイツの記憶力じゃ次元港までの道は覚えられないもんな。

 どこに住んでるかは知らねえけど、よく行けたもんだ。

 ていうかアタシが一人で行ってイツキがこの車に乗ればよかったんじゃねえか?

 

「なんでこっちに乗せなかったんだよ」

「そうすると今度はサツキちゃんが逃げるでしょ?」

 

 否定できないのが悔しいところだ。

 

「それにしても八重歯ちゃんは可愛いね~」

「八重歯じゃないです! リオ・ウェズリーです!」

「知ってるよ。八重歯ってその吸血鬼の牙に似てる歯のことだよね?」

「あたしが言ったのは名前で八重歯のことを言ったわけじゃないです……」

「本当にサツキさんのお姉さんだね……」

「うん……」

 

 姉貴はウェズリーの隣に座っている。まさにギリギリって感じだな。

 ていうかそうしないと全員入らない。アタシは空いていたストラトスの隣の席に座っているけど。

 

「それにしても、あのサツキが合宿とか似合わねえな」

「黙れノーヴェ。その鹿みたいな脚をへし折るぞ」

「お前が言うと冗談に聞こえないからやめてくれ……」

「なら茶化すな。アタシは機嫌が悪いんだ」

「サツキさん」

「…………んだよ」

 

 何かと思えばストラトスが真剣な表情でアタシを見つめていた。

 

「再戦の件ですけど――」

「やんねえよ」

 

 なんで一度やり合った奴とまたやんなきゃなんねえんだよ。

 とはいえ、このまま断り続けたら逃げたと思われるな。それはそれで癪だわ。

 はぁ、ホントにめんどくせえけど仕方ないか。ホントにめんどくせえけど。

 

「――やっぱり受けるわ」

「……本当ですか?」

「ああ、ホントだ。ただし、時間と場所はお前が決めろ。いいな?」

「はい!」

 

 いい返事も聞けたことなので、アタシは寝るとしますか。

 幸いなことに姉貴のおかげで今の話は聞かれなかったみたいだし。

 さてさて、合宿では何が起こることやら。まずストラトスとの対戦は確定だけど。

 

 

 

 




 サツキの弟、イツキが主人公の外伝作を投稿しているので見てもらえると嬉しいです。


《今回のNG》


※おまけによりしばらくお休みします。


《サツキ宅にて》

「サッちゃんがおらへん……なんや? 置き手紙?」


『ちょっと宇宙を救う旅に出てくる。
 実はアタシの故郷が大変な事態になってね。
 しばらく帰りません。あばよとっつぁん!
 
 
       ここだけの話(笑)
    実はアタシ――両利きなんだ。
 
 
 P.S.言っとくがご飯はどこにもねえぞwwww』


「………………サッちゃん許すまじ」

 ――ガ・イ・ス・ト・か・く・て・い・や・ね



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