まさかの志村ダンゾウに憑依   作:けらけた

5 / 5
第4話 変わりゆく現実

 

「で、奴の弟子になったと…。」

「はい…。」

 

あの男には気を付けろとほんの数時間前に警告した筈のダンゾウが妙に達観した顔でマダラの弟子になったと報告してきたのを見て、扉間は頭を抱えた。結局、こうなってしまったか…と。ため息を吐きながら扉間は言葉を紡ぐ。

 

「…あの男の言ってる事もあながち間違いでは無い。太古の英雄の因子が見つかったとなれば、その手の人間が貴様を狙いに来るだろう…忍など関係なく、あらゆる人間がな。恐らく今の志村家ではお前を守り切る事はできん。しかし、あのうちはマダラ(●●●●●●)が背後に居るとしれば、下手にお前を狙う輩はいない。その点に関しては安心しても良いだろう…しかしだ―――…。」

「…あのマダラ様が善意で俺を弟子にするわけがない…と。」

「その通りだ。恐らくお前の力を利用するつもりでいる。ゆえに、お前もあの男を利用(●●)しろ。」

「利用する…。」

「そうだ。奴がお前を利用すのならば、お前も奴を利用しろ。それと、ダンゾウ…何かあれば逐一、俺に報告しろ。分かったな。」

「はい。」

 

扉間の言葉にYESと答えてしまったダンゾウだが、内心、忍術学校を卒業していない餓鬼に言う事なのか…とも思ったが、そうも言ってられなくなったのも事実である。あのマダラの弟子になってしまったのだから…一応、自分が出来る限り調べたところ、あの男は弟子などとった事は無い。そんな人間が弟子をとったとなれば、多少、ざめつくだろう。すぐに父の耳に入るのは確実だ。

 

「くれぐれもあの男には気を付けろ。」

 

そう言った扉間の眼差しは酷く心配そうだった。ナルトスでは散々、卑劣とかコラにされていたが、この人も血の通った人間なのだ。ならば、うちはマダラはどうなのだろう?漫画では主人公の前で立ちはだかる敵として、あまり掘り下げられなかったが、実際はどうだったのだろう。

 

折角、あの男の弟子になるのだから、漫画では描かれていない部分のうちはマダラの姿を見てみたいと―――純粋にダンゾウは思った。

 

 

 

 

 

 

マダラに弟子になれと言われ一晩が経ち、ダンゾウはマダラに指定された木の葉から少し離れた深い森の切り開かれた場所にある演習場に到着した。忍術学校が休みなのもあって、朝早く来いと命令されていたため行くと、既にマダラが待っていた。鎧に身を包んだ姿では無く、うちは一族の人間が何時も着ているラフな装束だ。

 

「ふん…来たか。さっそくだが、修行を初める―――が、その前に貴様がどれ程、出来るか試させてもらう。俺にかすり傷を負わせたら終わりだ。くるがいい…俺を殺す気でな。」

「分かりました…全力で行きます。」

 

かすり傷追わせられる訳ねぇーだろ!歴戦の忍と忍術学校卒業すらしてない餓鬼が勝負になるかっ!と叫びたかったが、あちらはただ単に此方の実力を確かめたいだけであって、負けたって死ぬ訳では無いが…まぁ、殺す気で来いって言われたんだから、本気で戦わないとね。角都戦のようなヘマはしない!って、何か微妙にフラグを立てた気がする。そんな事を考えながらダンゾウはマダラから距離を取ると、足を大地と同化させ、即座に触手を展開した。ダンゾウの操る大地の触手の先端が、槍や剣などの武具へと姿を変える。そして、一呼吸置いた後、25本程の切っ先がマダラに向かって撃ち放たれた。それと同時に何かに割れる音と衝撃音が演習場に響き、辺りに砂煙が舞い上がる。

 

「まさか、須佐能乎(スサノオ)を貫くとはな……少し驚いたぞ。」

 

その声と共に砂煙の中から、巨大な青い髑髏の様なヒト型が双剣を振り回しながら現れた。しかし、そのヒト型の胸辺りにはダンゾウが放った武具が突き刺さり、其処からひび割れを起こしている。ソレを見てダンゾウは須佐能乎(スサノオ)が出て来るとは思いもよらなかったため、驚いていた。

驚いていたのはマダラも同じである。その一撃、一撃は普通の忍であれば止めの一撃であり、幾ら歴戦の忍であっても無傷ではいられず、下手すれば立つことすら儘ならない程、打ちのめされるだろう。須佐能乎(スサノオ)が無ければマダラとて無事では済まなかった。その事を知ってか知らずか放つダンゾウに対して、マダラは笑みをこぼす。目の前に居る少年を鍛え、力を引き出せばどれ程の化け物になるか―――楽しみでならない。

 

そうマダラが思っている最中、ダンゾウはと言うと須佐能乎(スサノオ)の双剣から放たれる衝撃波を命かながら躱していた。まだ行われていないが、第四次忍界大戦でのマダラ無双にて蹂躙されるモブの気分である。衝撃波により飛んでくる石や瓦礫を土の触手で弾きながら、どうやってこの場を切り抜けるか思考を張り巡らせた。そう―――第四次忍界大戦時、我愛羅が須佐能乎(スサノオ)の覆っていない足元の砂を使ってマダラを外に叩きだしていたのをダンゾウは思い出す。彼と同じようにマダラを外に出した瞬間、武具で攻撃すれば手傷を負わせられるかもしれない。しかし、土の触手を足場にして掠る事なく避けられるのが容易に想像できた。ならば、あえて外に出さず真正面から挑めば―――あの須佐能乎(スサノオ)を破壊し、驚いている間に傷を付けれるかもしれない…。

 

「(例のアレを試しにやってみるか…全力でやるって言ったしな。)」

 

ダンゾウは数百メートルほど大きくマダラから距離を取ると、地面から一本の槍を生み出す。身の丈を越える槍を掴むとダンゾウは深呼吸をし、掴んでいる槍にチャクラを、周囲の自然エネルギーを流し込む。その瞬間、地面から目視できるほど大量の自然エネルギーが溢れだした。

 

 

 

 

――――天の鎖(エルキドゥ)、彼は神と人とを繋ぎ止める為の楔。それが彼の本質。

 

神より与えられた使命を果たさぬ英雄王ギルガメッシュを正すため、神よって打ち込まれた槍…それゆえ、その身は反目者を貫き、楔を神の手もとに呼び戻すための神に造られた兵器———すなわち、彼の身体そのものが武具なのである。本来の彼ならば、自らの身体を武具とした神業の槍(エルキドゥ)を放てただろう。しかし、ダンゾウはそうでは無い。ダンゾウは神が直々に生み出した身体では無い、普通の人間の身体なため、その様な事は今のところ出来ない。辛うじて、大地と自らの身体を同化させるのが限界である。

 

それ以上いけば、ダンゾウ自身が()ではなくなり、エルキドゥと同じ体…即ち兵器であり、泥人形になると―――そう察している。人では無くなることを畏れたダンゾウは、別の方法で彼の宝具を人の身で再現するため、色々な方法を試した。その結果、一本の槍を媒介にして放つことが出来るようになった。といっても、本家に比べれば威力は俄然弱いが、それで十分だった。美しい光の粒子がダンゾウの持つ槍を核として、大量のチャクラと自然エネルギーの奔流を生み出し、徐々に渦巻き、天を貫くほどでは無いモノの巨大な竜巻となりった。

 

「(あれは―――まずい!)」

 

その光景を見た瞬間、マダラは先ほどまで見せていた余裕を捨て、即座に臨戦態勢になり、通常の須佐能乎(スサノオ)から完全体須佐能乎(かんぜんたいスサノオ)へと切変え、森羅万象を砕く斬撃を―――ダンゾウに向かって容赦なく放つ。それに対してダンゾウも、神気を纏う槍を構え、マダラに向かって全力で槍を解き放った。

 

 

「――――『人よ、神を繋ぎ止めよう(エヌマ・エリシュ)』――――ッ!!!」

 

 

ダンゾウの放った槍は完全体須佐能乎(かんぜんたいスサノオ)の放った大地を切り裂き続ける斬撃に真っ向から衝突し、そして――――。

 

 

眩い光が視界を覆った後、世界から音が消えた―――そう錯覚した瞬間、何かが徐々に割れていく音共に爆発音と衝撃波が周囲に巻き散り、熱風が襲う。視界が晴れれば、其処には須佐能乎(スサノオ)が破壊され、ボロボロになったマダラの姿があった。幸い怪我は頬のかすり傷だけのようだ。ソレを見たダンゾウがまず第一に思ったのは…。

 

「(や…やり過ぎたァ―――!!!)」

 

顔を青くするダンゾウとは逆にマダラは嬉々として言う。

 

「ククッ、合格だ。これより本格的に貴様を鍛えてやる。だが、その前に…少々、やり過ぎたな。」

 

そうマダラが服に着いた土ぼこりを払いながら言ったので、改めて周囲を見渡せば、先ほどまであった筈の木々は無くなり、地面は先ほどの戦闘で生々しく抉れ、辺り一面、草一つ生えていない荒野に成り果てていた。演習場がこうなるとは思っていなかったダンゾウはますます顔を青くさせる。

 

「場所を変えるぞ。付いてこい。」

「は、はい。その前に、この演習場…。」

「放っておけ、係の者が直すだろう。」

 

そうぶっきらぼうにマダラが言い放ち早足でその場を去るのを、ダンゾウは慌てて付いて行った。勿論、この後、演習場を整備する忍が泣いたのは言うまでもない。

 

 

 

 

隣の演習場に移動すれば、先ほど使っていた演習場とは違い木々が生い茂っていた。そんな中に、マダラが設置した的が置いてある。ダンゾウは両手でクナイを握り、指の股に挟むと、置いてあった人型の複数ある的の真ん中に正確に当てた。その次は、マダラの指示通りチャクラを用いて手を使わずに木登りしたり、水の上を歩いたりもした。

 

「全て的の中心に正確に当てている…チャクラコントロールもそうだが基礎的な事は平気そうだな。」

 

ソレを見て、感心しながら言うマダラに対して、ダンゾウは億尾にも出さないが、内心、ドヤ顔していた。根気よく手裏剣が正確に的に当てられる様になるまで一ヶ月から二ヶ月ほど修行した成果だ。ゴルゴ13ではないが、計算し予定された軌道から予定された場所を予定された速度でクナイを投げればちゃんと的に当たったのだ。其処に至るまでの苦労は凄まじかったが…。チャクラコントロールに関しては、大変かと思えば手裏剣よりも苦労せず、僅か1日で終わった。多分、手裏剣術を忍耐強くやっていたから、集中力などが養われたお蔭で簡単に出来たんだろう。

 

そんな中、マダラは少し悩むと信じられない発言をした。

 

「まずはそうだな……体力作りに腕立て伏せ200回、上体起こし200回、スクワット100回、それが終われば其処に斬っておいた丸太を背負ってこの演習場を200周しろ。」

「ファッ!?」

「確かに基礎的な鍛錬は欠かしていないようだが、貴様はエルキドゥの能力に少し頼りすぎている。その力を使わずとも己の身体を強くしろ。分かったな?」

「アッハイ、分かりました。」

 

確かにマダラの言う通りだ…言い返す事など出来ない。ダンゾウは素直に返事する。エルキドゥの能力に頼らずとも強くならなければ…!そうして、地獄は始まった。丸太を担いで本当に演習場を200周走ったり、腕立て伏せ200回、上体起こし200回、スクワット100回、休みそうになると背後から須佐能乎(スサノオ)を纏ったマダラの影分身が追いかけてきたり、隣で罵ってくるのだ。マダラ曰く、体力作りもあるが、どんな状況でも冷静さを失わせないための訓練であり、忍耐力を高めるためのものらしい。そのため、罵声を浴びせてストレスに慣らすだとか。言われてみれば、前世の軍人たちの教官が新人に怒鳴っていたのはそう言う事だったのか…と、今更だが感心した。そんな修行が2週間以上続き、最初は地獄だったが徐々に楽しくなってきた頃…即ち、体力が付けば今度は忍術の修業だ。

 

性質変化を調べてみれば、雷以外は使えるようだ。そのため、マダラはまず最初に火遁の技を教えてきた。当然だろう…なんたって、火遁を主流にするうちは一族だからな。マダラに比べれば、威力が弱いが炎をとりあえず出せたので良しとする。鼻で笑われたけどな!まぁ、修行をすれば威力なんて高くなるさ。その後は、マダラが知っている風遁や水遁、土遁などを万遍なく見せてきた。マダラの術を出すところを、真剣に観察したダンゾウは同じように印を組み術を出すものの、どの忍術もマダラより劣化していた。あまりの劣化ぶりにダンゾウは自分で噴出したが、マダラは馬鹿にすること無く真顔で淡々と言う。

 

「…写輪眼が無いのに其処まで覚えるとはな…貴様の忍耐強さと記憶力の良さは褒めてやろう。一ヶ月、時間をやる。それまでに俺の見せた術を完璧にしろ。後、腕立て伏せも継続してやれ。分かったな?」

「分かりました…後、マダラ師…先ほどの忍術を完璧にマスターしたら何をするんですか?」

「封印術と呪印、幻術、体術について教えてやる。後は座学だ。」

「ざ…座学って…何を…。」

「忍術学校でやる座学では無い。敵地での潜入捜査の技術や拷問のやり方だ。後、耐え方もな。」

 

ニンマリと悪巧みしているような顔をしたマダラを見てダンゾウはドン引きした。ジト目でマダラの事を見ながらダンゾウは呟く。

 

「うわッ…拷問って…マダラ師って、もしかして…SMプレイ好きだったんですか?もしや…柱間様と……。」

「誰が柱間とそんな事をするかァ!完全体須佐能乎(かんぜんたいスサノオ)で追い掛け回すぞ!」

「演習場が酷い事になるので通常の須佐能乎(スサノオ)にしてください。係の人が可哀想です。少しは自重しましょう。」

「フン…仕方あるまい。ならば、須佐能乎(スサノオ)で追いかけてやろう。」

 

 

 

マダラの地獄の猛特訓が行われ、そうして、月日は経ち――――。

 

 

 

 




我愛羅秘伝に古代都市の記述があるやん…ギルガメシュ叙事詩…行けますねぇ(迫真&歓喜)

後、ダンゾウの修業はSASとかネイビー・シールズの訓練を元にしてます。どの特殊部隊の人もそうだけど、ドMが多すぎる…しごかれて喜んだり、楽しんでてさ…。このダンゾウもある意味、マゾかもしれない。
サスケ真伝を読んだんですけど、血継限界を持つ忍が人身売買されてるのが、生々しくて良かったです。下手すりゃ、ダンゾウ君も志村家に生まれず、忍とか関係ない一般人の処に生まれてたら売られてたけどね。(無慈悲)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。