まさかの志村ダンゾウに憑依   作:けらけた

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プロローグ 

 

転生者――――それは、自称神の手違いによって死に、お詫びに漫画やアニメなどの技を未熟な精神では操れない強力な力を転生特典としてもらい、平行世界の漫画やアニメの世界に前世の記憶を持ちながら転生し、その世界を良い様にも悪い様にも変え、破滅させたり崩壊させる面倒くさい異分子。

 

というのが、基本的な共通点ではあるが少々違うのである。もとより、手違いで神が人を殺すミスを犯すわけがない。もし神が係わっていたとしたら、それはミスではなく故意で人々の因果律に関わり行われたもので間違いないだろう。

では、問おう。

善良な神々が、精神が未熟で扱い切れず破滅するであろう力を転生特典などと言って与えるだろか―――――否だ。善良であるならば、その力を持ったら如何なる末路になるか事細かに教え、止めるよう諭すだろう。そして、こうも付け足す。

 

『漫画の中の登場人物がその強力な力を扱えるのは、彼らを取り巻く環境とそれ相応の修業を行ったり、精神が強かったからだ』と。

 

普通に生きてきた凡人に対して、彼らが自分で自分の力をコントロールできず破滅するような力を与える善良な神はいないのだ。前世の記憶と強力な力を持たせて、転生させるぐらいなら、さっさと彼らのご先祖たちが居る天国やら天界に送るだろう。

では、一体誰が、精神が未熟なモノ達にそんな力を与えるのか――――それは、邪神や悪神だ。

 

きっとそうだ。何故、確信をもって言えるのかと言えば、オレはその邪神に騙されたからだ。

オレが事故で死んだ後、ソイツは良くある転生小説に出てくる神様のように出てきて、何でも願いを叶えるといった。だから俺はソイツに対してこういった。

 

『チートは要らない、ハーレムも要らない。某殺人鬼の様な穏やかな生活が出きれば良いからモブにして欲しい。現代日本の社会に近ければとても良い。』

 

それを聞いた自称神は一瞬驚いたが、ニンマリと薄気味悪く笑って了承するとオレを転生させた。その時点で薄々、嫌な予感はしていた。

 

そして、その予感は的中し、オレの願いとは真逆の事をあの神は叶えたのだ。

 

なにせ、転生した先は現代日本とは似ても似つかない武家屋敷が並んだ里だった。テレビもない、ケータイもない、iphoneもない、ゲームもない、漫画もない、書物に描かれている文字は全部ミミズみたいな文字。全然、現代の日本と似つかねぇ!!

 

―――何よりも衝撃だったのは、父の職業が……SINOBIだったのだ。

 

最初の頃は信じなかったが、修行してる姿を見て、どうあがいても某NINJA漫画に出てくる忍ばないSNOBIだった。それも、木の葉隠れの里が出来ていない時代―――即ち、創設期の頃だ。殺し合いしまくってる時期である。いや、SINOBIは常に殺し合ってたな。もう自分の望んだ平穏からは遠ざかっている。

もう一つ、衝撃だった事がある。

 

それは、自分の名前が…『志村 ダンゾウ』だからだ。

 

某NINJA漫画に出てくるモブ…ではなく歴とした主要人物であり悪役の名前。里のためと言いつつ、自分が火影になるという野望を叶えるため、木の葉崩しの手引きをしたり、九尾を操るのと写輪眼が欲しいから、シスイの目を奪い取ったり、イタチの心を利用したり、うちは一族がクーデターを起こすよう誘導して写輪眼狩りしたり、千手柱間の細胞を大蛇丸に研究させて、写輪眼を腕にくっつけたり、サスケや長門、色々な忍に恨みかったり、ペイン襲来を利用して綱手を弱らせ火影の座を奪ったり、里にいる人々を見殺しにしたり、里を危険に晒し続けた等々やらかしている。自分が思うに、彼は里と言うシステムを守っていただけで、里に居る人々を守ってはいなかった。

 

例えるならば彼は月だろう。周りの犠牲が無くしては輝けない夜に浮かぶ月。

 

真に火影になるべき人間は太陽のように人々を照らすモノでなければいけない。元より木の葉と言う大木を支える〝根〟と表している癖に表側に出ようとする大馬鹿野郎だ。

大木を支える根っ子が表に出ると言う事は、木の葉隠れの里と言う木が引っくり返ると同意義だ。あの男が火影になったらきっと木の葉は滅んでいただろう。

だからといって、彼の全てを否定する訳では無い。きっと彼も苦労した末にあゝなってしまったんだろう。

 

何だかんだで里の事は思っていたようだ。まぁ、卑の意思を一番多く継いでしまったから仕方ない。卑劣様の教育不足だ。いや、教育した結果か。

だからといって、自分はあゝなるつもりは無い。もとより、火影になる野望もない。

SINOBIとしてではなく普通の人間として生きて居たいのだ。子供に囲まれて穏やかに老後を過ごしたい。

 

ぶっちゃけ、NINJAに成りたくないのだが、志村一族の跡継ぎとして拒否権なく強制的にSINOBIにさせられてしまった。このご時世、忍一族に生まれた男児は人手不足もあるだろうが強制的に忍になるのだ。それと、転生特典なのか知らないが、某運命の錆の一人である泥人形さん…エルキドゥの能力が使えた。勿論、彼…?の宝具は使えない。辛うじて武器を象った泥の触手は出せる。きっと、力不足なのだろう。その事に関しては色々と安心した。いきなりあんなモノが使えたら恐怖しかない。暴走させて周りの人間を巻き込むなんてまさに悪夢だ。少しずつ、修練して使えるようになればいいのだ。

 

しかし、異常な感知能力を父に買われ否応なく戦場に連れて行かれた。

あぁ、自分の望んだものとはどんどんかけ離れていく。あの邪神はきっと愉悦部に所属している。そうに違いない。

 

何時かぶっ殺してやる。

 

 

 

 

 

 

 

初めて戦場に出た日。その日は雲一つない晴天だった。

 

しかし、そんな青空の下には敵味方関係なく地面を覆うように屍の山が築かれている。どれもこれも苦悶の表情を浮かべ静止していた。血や生臭いにおいが辺りに立ち込める。まだ4歳になったばかりの自分が見ていいモノでは無い。いや、子供が見るべき光景ではないだろう。中身が20歳近いからこそ正視できるが、自分の精神が4歳児ならば怯み、目をつぶって泣いていたに違いない。

 

なにせ、目の前に転がってる骸を築く原因を作ったのは自分なのだから。自分の持つ感知能力を用いて、敵が向かってくるであろう場所に起爆札や地雷などのトラップを仕掛け、それを用いて殺した。勿論、爆風で敵の血肉が弾ける瞬間や爆発に巻き込まれて死んでいく彼らの姿や悲鳴が目に焼き付いて離れない。爆発に巻き込まれて尚、生き残ってる忍達は一族の大人たちが止めを刺していた。

 

そんな地獄のような光景を、涙を流さぬよう我慢して耐えているが涙が溢れそうだ。

そんなオレに追い打ちを駆けたのは一人の敵一族の忍だった。仕掛けた地雷にかかってしまったんだろう、彼は上半身から下が後かともなく消し飛んでいる。

黒目黒髪、戦闘服からしてきっとうちは一族の忍だ。そんな彼はオレを見て虚ろな目で手を伸ばしか細く呟いた。

 

「……カ…ガミ。」

「…え?」

「あぁ…か…ガミ…俺の……息子……よ……すま…ない…。」

 

そう言って男は息を引き取った。彼にはオレの肉体年齢と同じくらいの息子が居たのだろうか。彼の帰りを待つ家族が居たのだろうか。そう考えていると同時に背後に立つ父が静かに語りかけてきた。

 

「よくやったな、ダンゾウ。お前の感知能力のお蔭で味方の犠牲を少なくし、敵を大勢殺せた。あのうちは一族の忍を一網打尽にできるとは…お前が居なければ大勢の志村一族の者が死んでいただろう。」

 

父の口から出てきた言葉は労いの言葉ではあるが、何かが少しずれている。

不器用な父の口から出た褒め言葉。あの戦闘狂として畏れられているうちは一族を倒せたからだろうか。普段よりも口調が高揚しており、嬉々と話している。父の部下の忍達もだ。しかし、ダンゾウは父たちと同じように喜べる状況では無かった。寧ろ、その言葉は背後から刀で胸を突き刺されたような錯覚を覚える程、心に突き刺さった。

 

止めろ、やめてくれ。褒めないでくれ。そう叫びたかった。人を殺す手伝いをして褒められるなんてこの世界は狂っている。もうこの世界はフィクションの世界では無い。眼下に広がる地獄絵図も、そんな地獄で勝ったことに喜んでいる男たちの顔も、何もかも異常だ。そんな異常な場所に耐えられず、その場から離れると喉に饐えたものがこみ上げ、そのまま吐き出した。胃の中に何もなかったせいか胃液と空気しか搾り出てこず、体が痙攣するだけで何も出てこない。ただ苦しいだけだった。これが戦争、これが忍、これが地獄。自分がこれからこんな世界に生きていくと思うと気が狂いそうになる。

 

 

でも、気が狂えば父と同じような存在になってしまうのかと思うと、そうなりたくない恐怖で気を奮い立たせた。

 

 

そして、こうも思う。こんな地獄からさっさと逃げ出したいと。

 

 

 

 

 

 

―――戦国時代。

 

一国一里のシステムが構築されていない時代。忍達は傭兵として国に雇われ血に塗れた戦いが続いていた。そんなある時、長年、いがみ合い争い続けていいた千手一族とうちは一族の間に休戦協定が結ばれ、忍連合が生まれ、それに連なる形で志村一族や他の名高い一族たちが加わった。そして、忍連合が火の国と提携し、一つの忍び里が生まれた。まだその里の名前は決まっていない。けれど、ダンゾウはその里の名前を知っている。

 

―――木の葉隠れの里。

 

これから、多くの悲劇と喜劇を生み出す場所。そんな里で自分が如何なる道をたどるか、どういった忍道を持つか、未だに決めあぐねていた。もとより、忍に成りたくなかったダンゾウは戦う理由など持ち合わせておらず、ただ一族のため、そんな風に大人に流されて戦っていただけだった。だからといって、大人に命令されたから仕方なく殺したなんて、言い訳をするつもりはない。自分で犯した事ぐらい、責任をなすりつけず、背負う覚悟は出来ている。そんな時だ。父に呼び出されたのは…また戦場に出されるのかと、内心、毒づいていたが、そんな事は無かった。

 

「お前には千手柱間様と扉間様がお作りになっている忍養成施設に通ってもらう。」

「忍…養成施設……寺子屋のような物ですか?」

「あぁ、そうだ。だが、現段階ではまだ微調整が必要らしくてな。お前には、その調整のため、一族の代表として明日から通ってもらう。分かったな。」

「…はい、分かりました。」

 

そう淡々と受け答えをして、父の居る居室から出ていった。忍養成施設…忍術学校(アカデミー)の事だろう。正直、通いたくないが、一族の面子や父親が五月蠅いので黙って従った。

にしても、例のナルトスで親しまれている卑劣様こと千手扉間と顔を合わせるのか…。

 

 

 

ナルトスを思い出して笑わない様、訓練しなければ…そうダンゾウは使命感に駆られた。

 

 

 

 

 





主人公はPTSDを発症してます。てか、木の葉に限らず忍は大体、発症してると思う。カカシの父親とかとくに。木の葉のメンタルケアはどうなってるんや……。
木の葉のメンタルケアは日本以下だなコレ。






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