スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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EP1.5開幕……主人公の女難ともに……!
新しいゲストキャラともに、緊急クエストに挑む……!


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
EP1が終わり、EP1.5は EP2との間の時間軸となります。


Episode 1.5 :Opening of the Interlude(市街地緊急編)
095.「本当ですか?」


処刑を待つ罪人の気持ち……

オラクルにおいて「死刑」という制度はなく、

長い歴史の中で一度もそんな刑に処せられた者はいない。

だからそんな気持ちがわかる人はいないのだが

 

「……」

 

ウェズはまさに今、そんな心境だった。

場所はショップエリアの片隅にある路地裏、

ウェポンショップ「アリトバイエル」。

ダークファルスアームとの戦いで

スサノグレンを無理させすぎたのと、

新しいフォトンアーツ

「カザンナデシコ」にあわせた

セッティングにしてもらうと思って来たのだ。

意気揚々やってきたが、

店に入ってすぐに後悔することになる。

 

「ふぅん……そうですか」

 

目の前には氷よりも冷たい視線を向けてくる少女。

綺麗な銀髪を後ろで綺麗に編んだ髪型と、

白いオールブリンクを着こんでいる店員……

レシアの妹のミリア=エリシアだ。

彼女はスサノグレンを手に持ち、

フォトンの出力を微調整をしてくれている。

 

「いや、その、クエストが立て込んでいてな……」

 

よくよく考えなくても

彼女が不機嫌になるのも無理はない。

あれだけ彼女が丹精込めて作り上げた

努力の結晶であるディオシガルガ、

それをダーカーの巣窟で折ってから

実は一度も顔を出していなかった。

ミリアからすれば

久々に顔を出してくれたと思って喜んで見たら、

出されたのは折れたディオシガルガと

他のアークスが使っていたスサノグレン。

しかもそれを調整して欲しいと言い出す始末。

……面白いわけがない。

職人からすれば「浮気」と捉えられても無理はない。

 

「スノーフレークも最近は実績も積んで、

 認められたみたいだから仕方ないですよね」

 

全然仕方なくなさそうな突き放す口調。

やはり姉妹、

機嫌の悪いレシアとそっくりだ。

こうなると正直、手の付けようがなかった。

残念ながらウェズでは

機嫌の損ねた女性をなだめる術を持たない。

せめてレシアを連れてくるべきだった……。

今までミリアは姉に対してはアレだったが、

ウェズには丁寧に対応してくれていたので

まさかこんなことになろうとは思いもしてなかった。

 

「私、ディオシガルガの新しいチューンとか、

 色々と考えてあげていたんですけど、

 余計なお世話だったみたいですね」

 

「いや、そんなことはないって。

 ミリアは今まで

 俺のカタナを作ってくれていたんだから、

 スサノグレンでも最適に調整してくれる……」

 

「なに言ってるんですか?

 私の作ったカタナと違うんですよ、

 そんなの簡単にできるわけないじゃないですか」

 

「……ああ」

 

せめて折れたすぐ後に

彼女に謝りにきていれば……!

 

「まあ、いいですけど。

 スサノグレン、良いカタナですもんね」

 

「……」

 

――ああ、今までのカタナとは段違いだぜ!

 

――いやいや、ミリアのカタナも良かったぜ!

 

……正直、どう答えても角が立つ。

現実にはディオシガルガは折れ、

ウェズが使っているのはスサノグレンなのだから。

しかも今は亡きライバルから託されたという、

まさに「これ以上にない意味を持つ武器」といえよう。

 

「ふう」

 

彼女が深くため息をつく。

 

「ウェズさん、

 スサノグレンの調整終わりました。

 このカタナは細身で切れ味が良い分、

 とてもデリケートです。

 だからきちんと『定期的に』顔を出してくださいね」

 

「あ、ああ……ありがとう」

 

物凄く強調されて言われる。

これは相当腹にすえているらしい。

かくかくとウェズは頷く。

 

「でも勉強になりました。

 実はまた新しいカタナを作ってるんですよ」

 

彼女が視線を奥に向けると、

そこには書いてる途中の設計図が広げられている。

 

「あれがそうなのか?」

 

「はい。

 ただ今のまま組み上げても

 スサノグレンより性能は落ちます。

 だから今回とった

 スサノグレンのデータも活用して

 もっともっと良いモノに仕上げます」

 

彼女は不機嫌な顔をしたまま、

まるでウェズを睨むように

 

「その時は、必ずウェズさんが

 満足いくカタナにしてみせます。

 レイさんには悪いですけれど」

 

挑戦的な言葉を告げた。

 

「あ、ああ……楽しみにしている」

 

「……本当ですか?」

 

ウェズはすぐに頷いた。

疑うような目をしていたが、

 

「今回の調整にかかったメンテナンス代は

 スノーフレーク宛に

 請求書を後で送っておきますので」

 

そう言って店の奥に入っていった。

結局最後まで機嫌がなおることはなかった。

 

姿が見えなくなるを確認してから、

ウェズは深く深くため息をつく。

 

「ははは、女の扱いがなっていないな」

 

物陰に隠れていた店主、

トラアが意地悪そうに顔を出す。

 

「……助けてくれよ」

 

「嫌だね、ワシまで

 とばっちりを受けたらかなわんからな。

 あの子も最近はすっかり逞しくなったモンさ」

 

「ほんとにな……」

 

ウェズは背を丸めて

しょぼくれた姿で店を出た。

しばらく歩いてから

腰に下げたスサノグレンを取り出す。

綺麗に研ぎ澄まされた刃に

辛気臭い顔をしたウェズの顔が映る。

今のこの表情見たら

レイ=タチバナはなんと思うだろうか。

 

「強くならないとな……」

 

色々な意味で、そう強く決意した。

 

「さて……そろそろトゥリアに

 クエストを用意してもらわないか」

 

前のダークファルス騒動の後から

あまりクエストに参加していない。

チームルームに戻ろうと歩き出すと

 

「……ウェズ?」

 

偶然出会ったのは、

アークス候補生の時の同期のアークス、

アインというヒューマンの少女だった。

 

彼女の少し思いつめた表情を見て、

ウェズはただ事ではないと予感した……




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