スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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【スノーフレーク】
エピソードⅠ 最終回
The flower of the snowflake blooms


094.「出会えて良かった」

ウェズは眩しい光に目を細める。

見上げると青々とした木々の合間から、

照り輝く太陽が顔を覗かせていた。

 

「久しぶりですね、

 こうしてゆっくりとするのは」

 

後ろから歩いてきたレシアが声をかける。

ウェズは「そうだな」と小さく答え、

ゆっくりと歩いて行く。

 

二人がいるのは惑星ナベリウスの森林エリア。

ダークファルス【巨躯】が復活して

遺跡のあったエリアは大変なことになったが、

惑星の反対側に位置する森林には

ほとんど影響はなかったらしい。

変わらぬ豊かな自然と、

鳥たちのさえずりだけの静かな空間。

 

今日は他のメンバーは連れてきていない。

簡単な素材を集めるだけのクエスト、

今のウェズとレシアであれば

散歩のようなものである。

 

「ダーカーの姿も見当たらないな」

 

「遺跡エリアには

 相変らずダーカーも多いようですが、

 森林では最近ほとんど見ないと聞いています」

 

原生種もこちらから刺激しなければ、

積極的に襲ってくるモノでもない。

現に惑星についてから、

まだ一度もカタナを抜いていなかった。

 

しばらく二人で歩いていたが、

 

「ほんの少し前のことだというのに、

 ……随分と懐かしいですね」

 

レシアが両手を上げて

体をほぐすようにうーんと伸びをする。

冒険の始まりだった惑星ナベリウス。

久々にくると感慨深い。

 

「特にこだわりがあったわけでもなく、

 チームを作ったのにな。

 なんだかんだで仲間も増えて、

 賑やかになったもんだ」

 

「そうですね、なんだかおかしいですね」

 

彼女は出会いの頃を思い出しているのだろうか、

少し恥ずかしそうに笑う。

 

「あの頃から少しは強くなったとは思うが、

 実感もあまりないしな。

 何に手こずっていたんだっけ、俺たち」

 

「ダカンですね。

 それでコフィーさんに

 呆れられたのも懐かしいです」

 

昔話をしながら二人は並んで歩く。

ウェズもレシアもアークスになったのは

過去の生い立ちからの消極的な理由だ。

始まりには大した意思もなく、

正直に言うと惰性でアークスをしていたのが事実。

だというのに今は戦う意味を見出し、

そして護りたいモノもお互いに出来た。

それこそが……

成長したといえることなのかもしれない。

 

「あっ」

 

そこでレシアは何かを見つけたようだった。

 

「どうした?」

 

声をかけるが、彼女は何も言わずに

少し道から外れたところへ行く。

 

そこには……

 

「スノーフレーク」

 

スズランによく似た見た目の

白い花たち……スノーフレークが咲き乱れていた。

生い茂る木々の中、

まるでスポットライトのように

そこだけ綺麗に陽光が刺している。

 

「……えいっ」

 

いつも落ち着いた彼女にしては珍しい、

どこか幼く悪戯っぽい掛け声。

 

彼女はごろんと仰向けに花畑に寝転がった。

 

「おいおい、花が潰れてるぞ」

 

「いいじゃないですか、

 これだけ咲いているんですから」

 

呆れたように声に、彼女は笑って返す。

ウェズはそこで彼女が何故そうしたか、

そこでやっと気づいた。

 

(ああ……そうか)

 

レシアと出会った最初の時、

彼女は今のように

スノーフレークの花畑で寝転がっていたのだ。

あの時と同じように、

太陽の光に眩しく輝く白い花たち、

そこに黒を基調としたヴィオラマギカと

彼女の美しい銀髪が照り映える。

 

「ウェズ、ほら……

 日差しと風が気持ちいいですよ」

 

彼女が穏やかな口調で誘う。

ウェズは「仕方ないな」と笑い、

同じように寝そべった。

 

あの頃と今では色々変わったけれど、

一番変化したことは……

彼女との関係かもしれない。

ウェズとレシアは正反対の性格だ。

無理やりペアを組まされた時は

とてもうまくやっていける自信などなかった。

だけれど今では

お互いに背を預けられる

とても大切なパートナー。

 

「本当だな……

 これは眠くもなる」

 

「そうでしょう?」

 

二人はそれからしばらく、

無言で陽だまりの中で風を感じていた。

スノーフレークの花の

どこか優しい香りがとても心地よい。

 

ウェズは空を手を伸ばす。

 

その手の先には何もない。

だけれど、もうその手で、

大切なモノを掴むことができたから。

護りたい……想いを見つけた。

 

「出会えて良かった」

 

それはどちらが口にした言葉だったろうか。

わからないけれど、

でも二人とってはもう言葉にしなくても

お互いに通じ合っている想い。

 

 

ダークファルス【巨躯】は倒された。

だけれどこれからは

より戦いは激しさを増すに違いない。

隠された「真実」……

アークスたちはそれと

向かい合わなければならない。

「優しい嘘」の先には辛い現実が待っている。

ウェズとレシア、

そしてスノーフレークというチームも

それに立ち向かって行くことになるだろう。

 

 

けれど、今だけは……

この静かな時間に抱かれて微睡んでいよう。

 

 

 

目を覚ました時には

また新しい冒険が始まるのだから……

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 




3か月にも及ぶ連載でしたが、
これでスノーフレーク【EP1】
The flower of the snowflake blooms
は最終回となります。
最後まで読んで頂けた方々、
そして感想や応援をしてくれたみなさん……
本当にありがとうございました。
20万字にもなり長編2冊分の量になってしまいましたが、
無事に完結という形になります。
みなさんに支えられたお蔭でここまでくることができ
感謝の言葉しかありません。

もし少しでも面白いと思って頂けた方は、
評価や推薦、感想など一言でもいいので書いてもらえれば
非常に私のモチベーションが上がります。
誰かに「面白かった」と言ってもらえるのが
書いた甲斐のある一番の瞬間となります。
特に派手な宣伝もしていない本作ですが、
それでもたくさんの方が読んでくれて本当に嬉しい限りです。
もっと色んな人に読んでもらいたなーと思いつつも。

さてEP1は終わりとなりますが、
次回は年明けくらいからEP1.5として
ほとんど触れなかった緊急クエストや
またサプキャラ、ゲストキャラとの絡み、
ついでに普段の日常の場面など描けたらなと考えています。
立ち位置としてはEP2が始まるのでの数か月という設定です。
一回きりだったゲストキャラもまた出せますし、
更には追加もできる期間となります。
「自分のキャラも……」と興味がある人は連絡をください。
※感想欄には書かないでください、規約違反となります。


なお、スノーフレークではEP1.5の表紙絵を描いてくれる人や
また挿絵を描いてくれる人を大募集中です。
EP2はまた引き続きリミさんに表紙を描いてもらいたいと思いつつ、
今忙しいようなのでEP1.5のまで頼むのは申し訳ない……。
文字って地味だから、イラストあった方が絶対映えますよね!
可愛い絵書いてくれる人 求め!

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