スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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通り過ぎたアークス、
それがアナタです。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想を書いてくれると作者喜びます。
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078.「……知ってるのか?」

ライガンがラムダハイペリオンで、

イエーデを捕まえ脇の湖に捨てる。

 

「どうにも原生種が逃げてきているようだな」

 

レシアは炎のテクニックを撒き散らしながら、

周囲の状況を確認する。

 

「ほとんどが浸食されているので、

 理性を失っているはずですが………」

 

まるで何かから追われるように、

奥から原生種たちが走ってくるのだ。

本能的に危機を感じている……

そんな脅威があるということだろうか?

 

「あんまり良い感じじゃないね」

 

ガルフの死骸の山を築いたケーラが

腰に手を当てて一息ついていた。

 

「何か起きる前触れってことか?」

 

ウェズも不気味さを感じて呟く。

与えられた地点の掃討作戦。

限りなくシンプルではあるが……

 

ゴゴゴ……

 

その時、突然に地面が揺れる。

揺れるといっても、

よろめく程度でそこまで大きくはない。

 

「地震?」

 

揺れはすぐに収まる。

しかし惑星ナベリウスに今まで何度か来ているが、

地震を感じたのは初めてだ。

他のメンバーに視線で問いかけると、

全員がわからないとばかりに首を振る。

 

周囲を見回すと、

先ほどまで大挙として

押し寄せてきていた原生種たちが

すっかり影を潜めていた。

 

「暗く……なってきた?」

 

見上げる。

地震による影響で何かが起きたのか、

気付けば青空は消え、

不気味な薄暗い紫色の空に。

ダーカー因子によく似た

もやのようなモノまで立ち込めてきていた。

 

「これは、地面から出てきていますね」

 

レシアが地面に触れながら断言した。

まるでなにかに蓋をしたところから、

零れあふれ出てきているよう、

黒い粒子が舞っている。

 

「なんだかちょっと不気味なんだけど」

 

「うむ……よくないことが

 起きているのは間違いない」

 

スノーフレークの面々は

何が起きても対応できるように、

身を寄せ合い集まった。

 

お互いに背中あわせで

周囲を油断なく見回す。

数秒の静寂の後、

 

「ダーカー反応増大……来ます!」

 

いち早く敵の存在に気付いたレシアが叫ぶ。

 

ギィィィィィィィ!

 

不快な鳴き声と共に、

ダカンが周囲に沸いてくる。

1重、2重……

 

スノーフレークを取り囲むように

次々と出現するダーカーたちは

幾重もの輪を形成していく。

 

「ちっ!」

 

明らかに異常な数だ。

ここまでの数が同時に沸くなど、

経験をしたことがない。

今の今まで原生種だけで、

ダーカーは現れていなかったというのに。

それともまさか、

原生種たちはこれを予め感じ取っていた……?

 

それぞれが武器を構えて、

迎撃しようと構える。

 

だが……

 

アガァァァァァァァ!!!

 

突如として響き渡る断末魔。

それも一匹や二匹ではない、

頭を抱えたくなるほどの

耳をつんざくような悲鳴は

数十匹を一斉に駆逐していっているよう。

 

「……なんだ!?」

 

たまらずにウェズが叫ぶが、

その横を何かが猛烈な勢いで通り過ぎた。

 

「……」

 

マントとフードを被ったアークス。

全身を黒い布で覆っているので、

種族も性別もわからない。

 

「……え?」

 

ただ、一瞬目があった気がした。

 

そのアークスは剣のような武器をかざし、

雷撃を身に纏い、

壁となったダーカーの群れを強引にかき分けて行く。

 

――イル・ゾンデ

 

普通のアークスではまず無理だ。

いくらその上級テクニックであっても、

そこまで敵を吹き飛ばす力はない。

だがそれを成し得ているのは、

そのアークスのフォトン量が圧倒的過ぎるのだ。

 

まるで雷の鳥のように舞うアークスに、

出来の悪い映像みたいに

触れたダーカーは消滅していく。

暗がりに現れた、一筋の閃光。

闇を切り裂き駆け抜ける。

 

その先には、もはや先すら見落とせないほどの、

ダーカー、ダーカー、ダーカー……

一寸の隙間もないダーカーたちの壁を、

そのアークスは突っ込むつもりなのだ。

無謀、けれどそのアークスであれば……

そう誰しもにも思わせる絶対的な存在感。

 

「お、おい、ちょっと待てよ!」

 

「君、そんなに急いでどうしたの!?」

 

後ろから続いてきたのは、

そのアークスの仲間だろう。

赤い髪のショートヘアーに、

露出の少ない戦闘服、赤いアドヴェント。

体格は中肉中背、

ソードを背負っているのでクラスはハンターか。

ヒューマンの男性であり、

鼻から左の頬にかけて傷跡があるのが特徴的だ。

もう一人は栗色の毛を後ろで

二つにまとめたニューマンの女性。

ロッドを背負ったフォースで、

ゆったりとしたコートのような服装なのだが、

胸元がだけが少し露出の多い赤のバリスティックコート。

 

「おい、エコー!

 あいつに遅れるなよ!」

 

「あっ、ちょっと、待ってよ!」

 

二人はもう必死に

先行するアークスに追いすがっているようだ。

横を通り過ぎる時に、

女性のアークスは「ごめんね」と

軽く手を振って走って行った。

 

彼らが向かっている先は、

「絶対に進入禁止」とアークス本部から、

厳命されていたエリア。

だというのにまるで気にした様子もなく進んでいく。

 

「やれやれ……想像以上の力ですね」

 

そして彼らのパーティの最後の一人は、

少し独特な格好をしていた。

まるでピエロのような派手な格好に、

クルーンハットに黒いサングラス。

ニューマンの男性なのだが……

一目見ただけで「格が違いすぎる」とわかる

そんなフォトン量。

 

戸惑うウェズたちに

彼は一瞬だけ立ち止まり、

 

「ご苦労様です。

 後は私たちに任せておいてください」

 

緊急事態だというのに似つかわしくない

微笑みを見せて先行するアークスたちの後を追った。

周囲にいたダーカーたちも

彼らのパーティを追いかける。

 

先ほどまでの喧騒から一転、

敵もいなくなった中、スノーフレークは立ち尽くす。

突然のことにぽかーんとする

ウェズとレシア。

 

「な、なんなんだ……?」

 

「わかりません……

 ただ、私たちより

 上位のアークスだとは思うのですが」

 

そこでベテランたちに知っているか?と

尋ねようと振り返ると……

 

「馬鹿な……」

 

驚愕したような表情のライガンと、

 

「……嘘でしょ?」

 

信じられないといった顔をするケーラ。

 

「……知ってるのか?」

 

恐る恐るウェズが尋ねると、

ケーラが呆れたような表情を浮かべる。

 

「……最後のグラサン、

 あれは……」

 

一度、深呼吸で息を整えてから、

その名前を告げた。

 

「六芒均衡の三……カスラ」

 

一瞬、何を言われたかわからない

ウェズとレシア。

 

その隣でライガンが小さく呟く。

 

「そうか……」

 

そんな存在ですら一目置く存在。

それが一番最初に通り過ぎたアークス。

 

「あれが、噂のアークスなのか……」

 

 

――後に英雄と謳われるアークス

 

 

その伝説は、もう少しで誰もが

目にすることになる。

惑星ナベリウスに封印された存在、

その復活の刻は、もう目の前なのだから


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