スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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「またお前か」と言われそうな今回。
大丈夫、彼女との最後の戦いです。
さすがに次はないです、ご安心ください。
それにしても土日は突然アクセス数が爆発的に増えて、
お気に入り登録してくれる人が激増しましたが
一体アレはなんだったのか……


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想を書いてくれると作者喜びます。
要望などは個別にメッセージ機能なり
ツィッター(@neko_neko_xojya)でお寄せ下さい。
※感想欄に書くと規約に引っかかるため
※要望は全てに対応できるわけではないのはで予めご了承ください。


068.「つまんねぇ面になったじゃねぇか」

「私が突っ込むから、

 しっかり付いてきなよ!」

 

本隊と別れたウェズたちは

ケーラを先頭に駆ける。

人数が少なくなったウェズたちに

ダーカーの群れは

容赦なく押し潰そうと集まってくる。

 

「ダッキングブロウ!」

 

エルアーダの尻の棘を

紙一重で避けて強烈な一撃を

下半身のコアに叩き込む。

バウンドして吹き飛ぶエルアーダ。

だが彼女はすぐに追い付き、

それを踏み台にして飛び上がる。

その先にいたのはカルターゴ。

前面を強固な装甲で固めたダーカーであり、

頭から放つレーザーは非常に射程が長く強力だ。

だが彼女は横薙ぎに放たれたレーザーを、

まるで棒高跳びのように

空中で体を捻りながら華麗に回避して、

そのまま相手を飛び越して裏に回りこむ。

 

「フリッカージャブ!」

 

そして頭の後ろのコアを

パオネリアンが正確に打ち貫く。

 

「さすがは『地獄への水先案内人』!

 まさに今の貴方に相応しい言葉ですね!」

 

後ろに続くナイトメアが称賛する。

彼はタルナーダを振り回し周囲から寄ってくる

まるで風船のように丸々とした魚、

ダーカッシュたちを蹴散しながら追いかけていた。

元々『地獄への水先案内人』の

二つ名の由来は

自分を除きパーティが

全滅することからだが、

ダーカーがひしめくこの巣窟……

地獄といっても過言ではない場所を

切り開いて進む今の勇敢な彼女の姿には

これ以上に相応しい名はないだろう。

 

「それに比べて『悪夢』を

 名乗るハンターさん、

 名前に負けてるんじゃないの?」

 

そんな彼にケーラは

からかうようと笑いながら言い放つ。

ナイトメアは愉快そうに

その挑発に応え

 

「ならば私も、お見せしましょうか!」

 

振り回していたタルナーダを前に放り投げる。

武器を投げて何をする気かと思えば

 

「ライドスラッシャー!」

 

ソードがフォトンを纏い飛び、

真っ直ぐと突き進む。

ナイトメアはキャストの大きな体だというのに

その上に器用に乗り

まるでスケボーのように進む。

 

「何故私がナイトメアという名か、

 とくとご覧に見せましょう!」

 

ソードはウネリながら敵の群れに突っ込む。

勢いよく突き進む様はまさにロケット。

大気を壁を打ち抜くがごとく

ダカンやクラーダといった

小さなダーカーは勿論、

クラバータやキュクロネーダといった

中型のダーカーですら押し潰して進む。

 

「ナイトメア、やるじゃん!」

 

ケーラはそんな彼を足蹴にして

更に奥へと跳んでいく。

負けじとナイトメアも追いかけて行った。

 

「やれやれ、随分と楽しそうだな」

 

後ろに続くウェズが苦笑いをする。

隣りにはシェスタが

相変らずタバコを吸いながら併走している。

 

「まっ、これだけダーカーがいりゃ

 どこを殴っても敵だ。

 楽しいんじゃないの?

 私にわからない感覚だけどさ」

 

ウェズとシェスタも勿論、

敵を蹴散らしながら進んでいるが、

さすがに前方の2人ほどではない。

 

「私も今まで一緒に戦ったことはないけどね、

 『地獄への水先案内人』と『ナイトメア』は

 そこそこに有名人って話なんだとか」

 

シェスタがチャイナドレスから伸びた

スラリとした足でダカンを蹴飛ばす。

スリットから覗く際どい部分に、

ウェズは思わず顔を逸らす。

 

「そうなのか。

 まあ……あの戦いぶりを見ていたらな」

 

さすがはベテランというところか。

どのような場面でも

臨機応変に対応する戦いっぷり、

まだまだ自分も至らないと改める。

 

「私もアンタも、

 生き延びて戦い続ければ

 大層な名前で

 呼ばれるようになるんじゃないの」

 

その物言いに少し疑問に思い、

まさかと気づく。

 

「シェスタ、もしかして第三世代か?」

 

「ん?

 何を今更言ってるんだい」

 

ガンナーでありながらテクニックも併用……

よくよく考えれば

複数のクラスへの適正がないと

できない組み合せだ。

基本的に『第一世代』『第二世代』とされる

ベテランのアークスたちは

生まれ持った適性のクラスしか使いこなせない。

無理を押して他のクラスの戦いもできるが、

それは最大限に力を発揮できず、

実際にクラスを変えるアークスはごく僅か。

有名なところではゼノというアークスが

レンジャーからハンターに転向したと聞く。

 

対して『第三世代』と

呼ばれるアークスたちは

様々なクラスへの適応が可能になる。

勿論それ相応の用意も必要ではあるが、

ある程度は融通が利く。

 

「……同い年なのかよ」

 

「なに、もしかして

 老けてるって言いたいの?」

 

そして第三世代はウェズと

同じ年齢のアークスからである。

つまり必然的に同い年となるわけだ。

 

「大人びてるってことにしておく」

 

ウェズはそう言って言葉を濁した。

人は見た目には寄らないものだ。

なおオラクルでは

タバコは二十歳からであり

本来であれば彼女は吸ってはならない。

 

「さて、無駄話はさておき……

 もう少しで例のポイントだな」

 

ウェズが端末を見ると、

アークスの反応があった

地点まで近づいている。

比較的に小型のダーカーが多かったため、

4人でもスムーズに進むことができた。

 

「……ん?」

 

レーダーを見ていたから気付けた、

「それ」が接近してくることに。

前の二人は気付いていないだろう。

 

「まさか!」

 

考えてのことではない、

 

「ケーラ、ナイトメア!

 下がれ!」

 

咄嗟に叫び、

ウェズは全速力で駆ける。

 

戸惑う2人を追い越し、

前へ出たウェズは

 

キンッ!

 

影から飛び出してきた「人影」の

攻撃をディオシガルガで防いでいた。

甲高い金属同士のぶつかる音が響く。

 

「なっ!?」

 

シェスタが思わず口元からタバコを落とす。

それもそうだろう、

誰がダーカーの巣で「人」に

襲われると思うだろうか。

 

「……これはもしかして」

 

ナイトメアが足を止めて呻く。

いや、唯一「人影」が襲ってくる

可能性にすぐに気付いたのだ。

 

「これが例の『複製体』ってわけかい?」

 

シェスタが双機銃を取り出し身構える。

当然、出会って然るべき敵、

むしろ今まで出なかったことが不思議である。

 

「対アークス戦はさすがに、

 私も慣れてるとは言い難いですね」

 

タルナーダを構えるナイトメア。

しかしそこで彼は

ケーラの様子がおかしいことに気付いた。

 

「そ……そんな」

 

彼女は呆然と呟く。

ウェズに攻撃を防がれて

奇襲が失敗したと悟ると、

影は一度後ろに跳び距離をあけた。

 

『複製体』特融の赤黒いダーカー因子を纏い

ゆらりと構えるその影が持つのはカタナ。

クラスはブレイバーだろう。

 

「つまんねぇ面になったじゃねぇか」

 

『彼女』を見つめながら

ウェズは毒づき、

油断なくカタナを構える。

 

立ち塞がる影……

ケーラのよく知る人物と同じ姿。

だが颯爽とした立ち姿は見る影もなく、

少し俯き加減に立つ様はまるで幽鬼。

ギロリと除く目は真っ赤で、

こちらを無感情に見つめていた。

『オリジナル』とは姿は同じでも、

まるで違うその模倣体、

それは……

 

「レイ!」

 

――レイ=タチバナのクローンだった


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