スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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本編ではできない戦闘機に乗っての
クォーツドラゴンと空中戦です。
某聖なる剣の物語の神獣戦を思い出しながら書きました。
実際しようとすると風圧とかその他諸々で
まず不可能でしょうけどロマンですよね。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


058.「諦めるにはまだ早いぜ!」

戦闘機が着陸をする。

 

「マスター、

 すまない、待たせたか」

 

新しく生まれ変わったライガンは

外見全てが変わっていた。

以前はどこか警察組織を思わす

落ちついた「シェリフシリーズ」だった。

全てのパーツを換装し「バルドルシリーズ」になり、

肩アーマーは大きく広がり、

また膝には盾を思わす追加装甲。

顔もセンサーを多くして、

全体的にずっしりとしたフォルムになっている。

遥か昔の北欧神話に登場する

光の神の名を冠した威厳高いパーツだ。

 

「高いメセタ出しただけあって、

 格好良いじゃないか!」

 

「ああ。

 機動力の代わりに

 防御力も上がっている。

 これでまた盾になれるというモノだ」

 

満足気に頷くライガン、

やはりスノーフレークの守護神である

彼がいれば安心感が違う。

 

「おい、早く乗ってくれよ!

 すぐに敵さんが攻撃してくるぜ!」

 

コックピットからパイロットが叫ぶ。

 

「俺はオプタっていうんだ!

 本部からの要請で助太刀に来たぜ!」

 

コックピットで親指をサムズアップしていた。

ヘルメットにゴーグルと

典型的なパイロットの装備なので、

どんな風貌をしているかわからないが、

どうやら若い男らしい。

 

「助かる!

 飛んでるあいつにお手上げだったところだ!」

 

スノーフレークの面子は戦闘機の上に乗る。

上にはいくつか支えになる持ち手があり、

身をかがめる。

 

「振り落とされるなよ、行くぜ!」

 

戦闘機が急発進する。

 

「……!」

 

レシアが真っ青な顔で手すりをしがみつく。

戦闘機の上とはいえ、

フォトンでシールドを張っているため

風圧で落とされることはない。

だが高所恐怖症の彼女にはさすがに酷だったか。

 

ドォンッ!

 

クォーツドラゴンのミサイルを辛うじて避け、

離陸して空へ飛ぶ。

 

「ここからなら攻撃も届くよ!」

 

「……ん」

 

メディリスがアサルトライフルで、

アンジュはガンスラッシュの

ガンモードで応戦する。

いくらクォーツドラゴンが空を飛べるといっても、

戦闘機を振り切れるほどの速度ではない。

それに攻撃をしようとすれば

相手は速度が下がるのだ。

 

「マスター、これを使うといい」

 

ライガンが手渡してきたのは灰色の筒。

なんだと思って受け取り持ち手を弄ると、

 

ガチャッ!

 

まるで花びらのような4枚の外装が開き、

中からフォトンの発射口が現れる。

 

「ラムダティグリボウ……

 そうか、バレットボウか!」

 

花びらの部分に

黄色いフォトンの輪がクルクルと回り、

自動で照準を補正してくれる。

バレットボウの扱いが

苦手なウェズにも

使いやすい弓といえよう。

 

「戦闘機の予備兵装だからな、

 大事に使ってくれよ!」

 

「わかってるさ!」

 

バレットボウと

アサルトライフルにおいての違いは、

フォトンの収束率である。

連射を得意とする長銃に対して、

一撃の威力が高いのが弓だ。

勿論その分、フォトンの消費量は高いが

このような空中戦では真価を発揮する。

 

「ペネレイトアロー!」

 

強烈なフォトンの矢を放つ。

これだけ離れていても

高い収束率を持つ矢なら、

距離よる威力減退の影響が少ない。

 

ダダタダダダダッ!

 

ライガンは戦闘機の

火器管制システムに接続して、

備え付けられた2門の機銃で戦っていた。

キャストならではの戦い方と言える。

 

「おいおい敵さん必死だねぇ!」

 

お蔭でオプタは操縦に集中できるので、

攻撃を回避しながらドラゴンを追従していた。

アムドゥスキアの空を

縦横無尽に飛び回り逃げるクォーツドラゴンを

戦闘機はしつように追いかけて行く。

 

「サ・メギド!」

 

レシアもなんとかタリスを

構えておっかなびっくり

闇のテクニックで攻撃をする。

顔も上げれず狙いを定めれないので、

ホーミング性能の高いテクニックで攻撃をしていた。

 

「ォォォォォォォォォォォォッ!」

 

クォーツドラゴンの甲高い鳴き声。

空の王と言えども、

こうして空中で戦った経験はないのだろう。

もどかしげに羽の付け根から

皮膚の一部の堅い部分を

ミサイルとして発射してくる。

弾自体はそこまで大きくないのだが、

磁力を帯びて勢いよく突っ込んでくるため、

貫通力は高いのは

えぐれた地面が証明している。

 

「あらよっ!

 ギリギリってところだな!」

 

惑星アムドゥスキアの空は

複雑な磁界で形成されている。

その中を器用に回避しながら飛ぶ

オプタの腕はさすがと言える。

クォーツドラゴンが

浮かぶ小さな島を砕いて

その破片が飛んでくるが、

予め予想してギリギリで回避していた。

 

バリンッ!

 

「やった!」

 

甲高い破砕音。

さすがは本職のメディリスの狙撃が、

見事に尻尾の結晶を吹き飛ばした。

むき出しになったのは、

柔らかそうな皮膚。

 

「よし、ナイスだメディリス!

 あそこを狙うぞ!」

 

揺れる尻尾を狙うのは難しいが、

数打てば当たる理論で、

とにかく乱れ打ちをする。

 

「マスターシュート!」

 

「エイミングショット!」

 

「スニークショット!」

 

たまにフォトンの弾丸が尻尾を掠り、

クォーツドラゴンは悲鳴をあげる。

確実にダメージは蓄積されていた。

 

スノーフレークの面子が

この調子でいけば勝てる

……そう確信した時、

 

「ちっ、ヤバい!」

 

龍は強引な方向転換で

突然にこちらへ向き直った。

そして口からレーザーを放ってくる。

当然そんな無理な姿勢からの攻撃なので、

狙いを定めれるわけもないのだが……

 

ガンッ!

 

「ちっドジっちまった!

 悪い!」

 

戦闘機の側面をかすり衝撃が走る。

振り落とされないように

全員が手すりを掴むが

 

 

「……!」

 

 

「レシア!」

 

レシアは下を向いていたために

攻撃してくるのを見ていなかった。

 

「えっ」

 

衝撃に対する備えが

全くできていなかった彼女は

呆気なく振り落とされ、

体は宙を舞う。

 

「いやぁぁぁぁ!」

 

メディリスの悲痛な叫び声。

対してレシアは自分がどうなったか

理解が追い付いておらず、

目をぱちくりとしていた。

 

「……くそっ!」

 

考えて行動したわけではない。

けれど、体が勝手に動いた。

 

「マスター、無謀だ!」

 

静止する声を振り切り、

ウェズは

 

「レシア!」

 

戦闘機から跳び、

空を落下していくレシアへと向かう。

 

「……!」

 

やっと自分の状態を認識した彼女は

周囲の景色を見ないように

きゅっと目を閉じていた。

手は祈るように前に重ねられている。

 

「くっ!」

 

ウェズはかろうじて落下する空中で、

彼女の元に辿り着き、抱き寄せる。

 

「レシア!」

 

レシアが驚いたように目を開けた。

 

「ウェズ、何をしてるんですか!」

 

「お前を助けるために決まってるだろ!」

 

「助けるって……!

 貴方は何を言ってるんですか!」

 

空を飛ぶ戦闘機から振り落とされたのだ。

場所が悪く下には浮遊する島もない……

見えるのははるか地上の

火山洞窟の真っ赤な地表。

 

助かる見込みは、万の一つにもない。

 

「くそっ……!」

 

戦闘機はフォトンでフィールドを

張っていてくれたから

上空であってもどこか安心が出来た。

しかしその加護がなくなると

猛烈な風圧を全身で受け、

内臓が飛び出そうになるほどの恐怖感を覚える。

 

「ウェズ……ごめんなさい」

 

ウェズがこうして来てくれたのは嬉しい。

けれどそれ以上に、

道連れのような形にしてしまったのが、

レシアにはどうしようもなく悲しかった。

 

「私……」

 

死を覚悟した。

 

誰からも必要とされなかったた自分。

だけれど……

そんな自分を必要だと言ってくれ青年。

最後に傍にいてくれるのが彼であることは、

とても贅沢なことであると思った。

 

「ウェズ……私は、あなたが――」

 

意地を張ってばかりだった。

自分が素直になれないばかりに

本当のことをいつも話せなかった。

 

だけど、最後くらいは

自分の気持ちを伝えよう。

レシアが口を開こうとした時、

 

「レシア!」

 

強い意思のこもった叫び。

驚いて顔を見ると、

そこにあるのは絶望した顔ではない。

 

一縷の希望を見出した表情。

 

 

「諦めるにはまだ早いぜ!」

 

 

その視線は下へと向けられている。

レシアもその先へと視線を向けると……

 

「あっ……」

 

まさかの光景に、彼女は言葉を失った。

 

 

 


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