スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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もう最初から思ってたんですよ、
ウェズとベルリックはキャラが被ると!
そんな二人の邂逅です。
そして「複製体」の話は、
当然ながら今後の話の伏線です、はい。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


055.「この恩は必ず返すぜ」

「アンジュ、無事か!」

 

ウェズたちが遅れて到着した時には

もう戦闘は終わっていた。

トゥリアから近くの交戦反応の報告を受けて、

苦戦しているらしいという判断から

足の速いアンジュに先行してもらっていたのだ。

 

「……ん」

 

アンジュは短く頷く。

どうやら無傷らしい。

 

「キミたちはこの子の

 チームメンバーなんだな」

 

そこにいたのは2人のアークス。

騎士姿で仮面をつけたハンターと、

尻もちをついて座り込んでいるフォース。

 

「ああ、チーム『スノーフレーク』っていうんだ。

 まだまだ新米チームだけどな。

 アンタたちは?」

 

尋ねると仮面のアークスが、

胸に手を当てて大仰しく頭を下げた。

 

「オレたちはチーム

 『仮面の騎士団』っていうんだぜ。

 オレはマスターのベルリック。

 それでこいつが……」

 

青年は少女の手を掴み、立たせてあげる。

 

「メンバーのティオです!

 この度はありがとうございました!

 この人が来てくれなかったらボクは……」

 

先ほどの戦いを思い出したのか、

震えだした彼女をベルリックは

腰に手を回し抱き寄せる。

「危険な目にあわせて悪かった」と

安心させるようにぽんぽんと背を叩く。

 

(……ウェズさん、あの二人やっぱり?)

 

(いや、聞くのは野暮だろ)

 

メディリスがひそひそ尋ねてくるが、

ウェズは肩を竦めただけだった。

彼女は色恋沙汰には興味津々らしく、

随分と仲の良い2人を

ちょっと羨ましそうに見つめていた。

 

「俺たちは――」

 

スノーフレークの面々も軽く名乗り、

調査に来ていることを伝える。

ベルリックはなるほどと頷き、

アンジュに改めて頭を下げた。

 

「アンジュ、ありがとうよ。

 借りは必ず返す、

 それが仮面の騎士団の流儀だぜ」

 

「……うん」

 

お礼を言われたことに

アンジュは少し満足気に頷く。

 

「それで、仮面の騎士団は

 浮遊大陸には何の目的で来てたんだ?

 補佐官からは調査に来てるのは

 俺たちだけだと聞いてたんだが」

 

ウェズが尋ねると

ベルリックは少し言い辛そうに言葉を詰まらせ

 

「行方不明になった

 仲間を探しているんだ」

 

「行方不明?」

 

そういえばメディリスから

クエスト前に聞いた話に似ている。

ベルリックは端末を開いて

情報を空中に映し出す。

そこにいたのは初老のヒューマン。

少し神経質そうな顔をしており、

名前はエランコット、クラスはレンジャー。

 

「一週間ほど前にクエストに出たきり、

 キャンプシップごと

 行方不明になったんだ。

 それ以降、連絡がつかない」

 

「それで浮遊大陸に?

 何か手がかりがあったの?」

 

メディリスが尋ねると

彼は少し言葉を選んでこう言った。

 

「複数の惑星でエランコットらしき人物が、

 アークスを襲っているという報告があった」

 

ウェズとメディリスが顔を見合わした。

本当に噂と通りの話だったからだ。

 

「ボクたちは……

 エランコットがそんなことするはずないって、

 それが、わかってたから……

 真実を確かめようとしてたんです」

 

目撃談が複数あったことで、

仮面の騎士団は手分けをして

色んな惑星を

探していたということらしい。

どういうことだとウェズは考えるが、

なんとも変な話で何も思いつかない

 

「アンジュ……

 先ほど、戦った相手は……

 どんな姿をしてましたか?」

 

そこへウェズに背負われたままのレシアが

苦しそうな低い声で尋ねてきた。

 

「レシア、気が付いたのか」

 

「……すいません、

 まだしばらくこのままにしてください。

 少し、まだ眩暈が……」

 

相当辛そうだった。

高所恐怖症もここまで来ると

これからはクエストは選ばないといけない、

ウェズは密かにそう決めた。

 

キャストのアンジュは

戦闘データを常に記録している。

彼女がレシアの端末にデータを転送して、

レシアは何かのデーターと見比べ始めた。

 

「……やっぱり、そういうことですね」

 

彼女は背負われたまま、

ウェズの肩越しに手を伸ばし、

持っていた端末をみんなに見せる。

そこに映し出されたデータをに

ベルリックとティオは

驚いた表情を浮かべた。

 

「こいつは……!」

 

「ボクたちを襲ったアークス……」

 

データにあったのは2人のファイター。

ツインダガーの使い手である

チーム「ファイブボール」のドレク。

もう一人はダブルセイバーを好む

チーム「蒼天月下」のアニヨレヌ。

二人とも歴戦のアークスたちが

 

「エランコットさんと同じで……

 行方不明になってるんだ」

 

メディリスが小さく呟く。

そう、二人ともステータスが「音信不通」。

それもここ一週間の間にだ。

 

「この2人には接点は

 まるでないようですね。

 だから複数の場所で目撃された

 あなたたちのチームメンバーも……」

 

ガンッ!

 

ベルリックが力任せに

岩を剣で砕いた。

 

「くそっ!

 そういうことだったのかよ!」

 

「ベルくん……」

 

怒り任せに叫ぶベルリックに

それを心配そうに見つめるティオ。

 

「さっきの奴らは多分、

 ダーカイムやヴィスポルトと同じ

 ダーカーの兵器だぜ!」

 

「ダーカー兵器だって?」

 

「ああ、あいつらが襲って来る前に

 ダーカー兵器の発する

 『予兆』のようなものを確かに感じたんだ!

 ただ、少し、ノイズのような……

 電気が走るような……

 今までにないものだった」

 

彼らの話をまとめるとつまりは……

 

「行方不明になったアークスたちを

 何らかの方法でダーカーたちは『複製』して、

 それをアークスたちを襲わせてってわけか」

 

幽霊よりも、

よっぽど性質が悪い話だ。

ここにきて話の重大性に

誰しもが気づいてしまった。

 

「この情報をトゥリアに送り、

 アークス本部にも

 対策を練ってもらいましょう」

 

「何かわかったら、

 オレたちにも知らせてくれ!

 エランコットが……

 まだ生きてるかもしれないってことだ!」

 

「うん……ベルくん、

 少しわかっただけでも収穫だよ!」

 

けれど叫ぶ2人にもわかっているはず。

ただの行方不明ではなく、

ダーカーに関わることである以上、

生存は絶望的であるということは。

それでも諦めないのは、

彼らはそれだけ仲間を

大切に想っているということ。

 

良いチームなんだなと、

ウェズは見習わなければならないと肝に銘じた。

 

「スノーフレーク。

 この恩は必ず返すぜ。

 何かあれば遠慮なく言ってくれ」

 

拳を突きだしてきた。

 

「ああ、困った時はお互い様、

 その時は頼む、仮面の騎士団」

 

ウェズは自分の拳も前にだし、

コツンあわせた。

 

「行こう、ベルくん。

 他のメンバーたちとも情報をあわせて、

 方針を練りなおそう」

 

「そうだな、ティオ」

 

そう言って二人はテレパイプを設置して、

キャンプシップへと戻っていった。

 

 


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