スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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というわけで始まりました、浮遊大陸編。
ライガンさんはスクラップになりましたので、
編成が今回は変わります、はい。
今日はメセタ不足に喘ぐとあるお話。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


Episode 1 :Save King from the pains(浮遊編)
051.「それ、聞かないとダメか?」


「……つーん」

 

完全にへそを曲げてしまったアンジュに

どうしたものかとウェズは途方にくれる。

こんな時に限って

チームメンバーはウェズしかいない。

レシアはミリアのところへ

新しい武器を調達に行き、

メディリスは射撃訓練をしているらしい。

ライガンは……坑道での損傷が

想像以上に酷かったので、

全てのパーツを換装しているとのこと。

 

「な、なあ。

 そろそろ機嫌直してくれねーか」

 

チームルームのバーカウンター。

グラスに入ったミルクをストローで吸いながら

ジト目で少女は睨んでくる。

 

「うそつき」

 

「うっ……」

 

「色んなモノを見たらいいって言ったのに、

 私のこと、置いて行った」

 

「……いや、そのな」

 

アンジュのことをミミに任せて、

地下坑道へクエストに黙って

行ったことを怒っているのだ。

しかしウェズは別に嘘をついたわけではない。

 

あの時に言った言葉は

 

『好きにしたらいいさ。

 うまいモン食うだけでもいいし、

 色んなモノを見たらいい』

 

クエストに行かなくても

オラクルには彼女が

行方不明になっていた頃にはなかった

知らないモノはたくさんあるだろう。

そういう意味では何も間違っていない。

 

「まいったな……」

 

そう説明しても

アンジュは全く納得してくれなかった。

彼女はじっとしているよりも、

体を動かす方が好きらしい。

それがスポーツではなく、

ダーカーを退治することというのは、

さすがに年頃の女の子としてはどうかと思うが。

 

「ごめんなさいね、マスター。

 私もちゃんと伝えたのだけれど」

 

ミミが困ったような笑みを浮かべながら、

ウェズにもミルクを出してくれた。

本来はトゥリアがすべきチームルームの管理を

彼女がしてくれているのだ。

世話をしていてくれたミミ曰く、

「基本的なアークスのことは理解はしたけれど、

やはり実践で学んだ方が吸収が早いかも」

ということだった。

 

つーんとする幼い彼女を

どうやって機嫌を直したものかと考えていたが……

 

「……そんなマスターにとって、

 悲しいお知らせがあるのだけれど」

 

「あら、トゥリアおかえりなさい」

 

布に包まれた何かを抱えた

トゥリアがチームルームに戻ってきた。

彼女が話を持ってくると

どうにも嫌な話にしか思えない。

しかも今回はご丁寧に「悲しいお知らせ」とまできた。

 

「……なんだ、そのお知らせってのは」

 

「……プライドが折れる話か、

 財布が悲鳴をあげる話か……どっちがいい?」

 

どちらもロクでもない話だということは

聞くまでもなくわかった。

 

「それ、聞かないとダメか?」

 

「……ダメ」

 

深く、深くため息をついた。

 

「じゃあ、プライドの方から頼む」

 

当然ながらまだ実績を積み始めたばかりの

スノーフレークの財源は苦しい。

金銭的な話はできれば後回しにしたかった。

 

「……ん」

 

トゥリアは包みをアンジュに渡す。

受け取った彼女は一瞬何かと考えていたが、

すぐにパッと顔を輝かせて包みをあけていた。

 

「それは?」

 

「……アンジュの新しい武器。

 ガンスラッシュゼロはもうボロボロだったし、

 この子ならもっと強い武器を扱えるって。

 だからレシアの妹がいる武器屋に注文してた」

 

彼女が取り出したのはシャープなデザインの

黒を基調としたガンスラッシュ。

銃機構のパーツが赤く、

シンプルながらも

非常に洗練されたデザインだった。

 

「……バウガーディン。

 ガンスラッシュゼロより大きいけれど、

 軽量してるから重さは変わらないと思う」

 

「へえ、アンジュ。

 格好いい武器じゃねーか」

 

まるで新しい玩具を買ってもらったかのように

彼女は嬉しそうにバウガーディンを弄っていた。

 

「……余裕そうな顔を

 しているウェズに悪いけれど、

 えっと、プライドの話をするとね」

 

「え、これが関係あるのか?」

 

トゥリアはさっと目を逸らして

彼にとって辛い思いをする現実を告げた。

 

「……バウガーディンは

 ディオシガルガより遥かに出力が高い。

 一流のアークスが使うレベルの武器。

 ……スサノグレンと同レベル、と言えばわかる?」

 

「……は?」

 

つまりはどういうことだろう。

トゥリアは「ご愁傷様」と手を合わせた。

 

「……アンジュ=トーラムは、

 ウェズ=バレントスより

 アークスの資質が現時点で既に高いという結果」

 

アンジュはチームルームの

広い場所に行き、

楽しそうに振り回していた。

それを車いすのミミが慌てて止めに行く。

 

「マジか」

 

「……マジ」

 

それしか言えなかった。

 

「……あの子の今時点のフォトン感応力ですら

 間違いなくチームで飛び抜けて一番。

 才能もあるからこれからの伸び代も含めると、

 きっといずれは……」

 

ウェズは何も言えずに

天井を見上げた。

まあ確かにプライドに関わる話だ。

何度もクエストを重ねて、

やっとレイ=タチバナに近づけたと思ったのに。

なんだろうか、

こう、才能という一言で済まされると、

これは確かにきつい。

 

「……頑張らないとな」

 

カウンターに突っ伏す。

そんなウェズに追い打ちするように

トゥリアは端末を取り出した。

 

「……それで財布が悲鳴をあげる話だけど」

 

「聞きたくない……」

 

けれど無常にもアークス補佐官見習いは読み上げる。

 

「……請求書。

 ライガンのライゼノークが25万メセタ。

 あわせてパーツ換装費が42万メセタ。

 ……これは前より良いパーツにするから。

 あ、アンジュの体の治療費と調整費は

 セラフィさんが出してくれたから大丈夫」

 

「……ま、まあ。

 それは必要経費だしな」

 

結構な金額に頬をピクピクとさせるウェズ。

そして問題の金額を発表する。

 

「……バウガーディン、75万メセタ」

 

「はあ!?」

 

ライガンの武器とパーツ代を

あわせたよりも高かった。

 

「……あのガンスラッシュは

 それくらいのシロモノだから」

 

「あのよ、返品とかできるか?」

 

トゥリアが視線を向けた先には、

楽しそうに新しい武器を使うアンジュ。

 

「……取り上げられる?」

 

「……」

 

バリンッ!

 

彼女が引き金を引いたのか、

壁に掛けられていた

モニターの一つが激しく割れた。

 

「……チームルームの

 サイドモニターの修繕費5万メセタ。

 今のスノーフレークの予算から

 差し引いてオーバーした金額が……」

 

はい、と手元の端末を見せる。

 

「……53万と7000メセタ。

 難しいけれど報酬の多い依頼持ってきたから。

 ……まあ、頑張って」

 

魂が抜けたように惚けたウェズは

返事もできずにただ、頷くだけだった。

 


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