スノーフレーク   作:テオ_ドラ

46 / 111
祝10万字になる回です。どれくらいかというと単行本一冊のサイズですね。
でもまたEP1も半分折り返しのところです。
頑張らねば。
今回の話は「ンなことはいいから早く救援に行けよ」です。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


045.「姉さん……約束だからね!」

「レイ=タチバナ……」

 

一瞬たりとも忘れたことはない名前。

火山で理不尽な理由で一方的に襲い掛かり、

自分を軽くあしらった相手……

 

(落ちつけ)

 

ウェズは昂ぶる気持ちを抑える。

今、自分がすべきことは何か?

もう、あの頃の自覚のない自分じゃない。

ウェズ=バレントスは、

スノーフレークを率いるマスターなのだから。

深呼吸一つで気持を切り替える。

 

「ライガン、体の調子はどうだ?」

 

「……すまない、良くは、ない」

 

トランマイザーの集中砲火を正面から防いだのだ。

勇ましいシェリフシリーズのパーツは

傷がない場所がないほど傷んでおり、

左腕に至っては肘より先が吹き飛んでいた。

それでも右腕で

しっかりラムダライゼノークを掴んでいる。

 

「りっりっりっ!」

 

助けられたリリーパが心配そうに

ライガンの傍で鳴いている。

助けてもらったお礼ということなのか、

もう一匹のリリーパが

何か緑色の結晶を差し出してくる。

 

「これは……フォトンの高純度の結晶?」

 

メディリスが受け取り掲げる。

それは彼らの宝物、フォトンスフィアだった。

ライガンが残った手でリリーパの頭を撫でる。

 

「ありがたく頂戴しよう。

 しかし……これではパーツは直せないな」

 

ウェズは頷いた。

 

「ライガンは先に戻っていてくれ。

 俺とレシア、メディリスで救援に向かう」

 

「うむ……肝心な時にすまない」

 

「何を言っているんですか、

 あなたのお蔭でこの子たちを守れたのです。

 一番の功労者でしょう」

 

レシアがせめてもの応急処置にと

レスタでフォトンを活性化させて、

ライガンの破損箇所を修復する。

とはいえこれだけボロボロになってしまったら、

きちんとした設備で修理しなくてはならない。

 

「ミリア、すまねぇがライガンを頼む」

 

「……はい、わかりました」

 

足手まといになるというのは

これで痛いほどわかっただろう。

彼女は項垂れながらも頷く。

 

「ミリア……」

 

レシアが少し逡巡して、渋々と口を開いた。

 

「仕方ないですね……

 このクエストが終わったら、一度帰ります。

 それで、いいでしょう?」

 

ミリアは驚いたように顔を上げ、

 

「姉さん……約束だからね!」

 

少し無理をしながらも、それでも笑った。

 

「ウェズさん、

 渡したディオシガルガを

 貸してもらってもいいですか?」

 

「ん、ああ、構わねーが」

 

受け取ったミリアは柄の部分を開き、

何やら調整を始めていく。

 

「ウェズさんは他のブレイバーより

 抜刀している時間が短いんです。

 それは居合を重視して、

 鞘に入れている時間が長いということ……」

 

いくつか設定を要領よく行いすぐに終わる。

 

「だからフォトンの出力を上げておきました。

 あまり長い間を抜刀していたら刀身が持ちませんけれど、

 でも、ウェズさんの戦闘スタイルなら 

 こちらの方がいいと思います」

 

「……ありがとうな」

 

腰につける。

先にいるのはレイ=タチバナだ。

何が起きるかはわからない。

 

「姉さんを……お願いします!」

 

深々と妹は頭を下げる。

そのことにどんな意味を込めたのか。

この先の救援任務での危険から守れということか、

あるいはもっと、大切な意味で……

 

「マスター、気を付けるのだぞ」

 

ライガンの言葉にウェズは笑って

 

「そこまでライガンが体張ってくれたのに、

 俺たちも最後まで頑張らないわけにはいかないだろ」

 

そう言ってから力強く礼を言う。

 

「ライガン、ありがとう」

 

そう言って振り返り、通路の奥へ視線を向ける。

 

「トゥリア!

 救援信号が出てるところまでエスコートしてくれ」

 

『……急いでね』

 

「レシア、メディリス!

 雑魚は無視して行くぞ!

 目的地付近で一気に雷撃で破壊してから、

 巨大な反応と交戦に入る!」

 

「わかりました」

 

「了解!」

 

三人は駆けだした。

救援信号が出ているその場所へ。

 

 

その背中を、リリーパたちが手を振って見送った。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。