スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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坑道とくれば機甲種。
機甲種が出てきたらなら勿論、リリーパも出現。
そんな雑魚戦のお話です。


【挿絵表示】

表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


042.「……なんか、聞こえねーか?」

『……惑星リリーパの地下に

 最近になって坑道エリアが発見された』

 

トゥリアの声が静かな空間に響き渡る。

 

『……地表とは違い、

 まだ動いている機械もあるし、

 強力な機甲種もいるみたい……気を付けて』

 

声以外には、

かつんかつんと歩く音だけ。

 

『……で、みんなどうしたの?』

 

ただならぬ雰囲気についにトゥリアが尋ねる。

距離を開けて歩くのはライガンとメディリス。

そして前にいるのが

 

「なんでもありませんよ。

 ねえ、ウェズもそう思うでしょう?」

 

あからさまに機嫌が悪いレシアと

 

「姉さん、どうしてそんなに喧嘩腰なの!」

 

これまた口調の強いミリア。

 

「……はあ」

 

そしてその間に挟まれて、

非常に気まずそうにしているウェズだった。

ちなみに一応はスノーフレーク所属になった

アンジュはまだ戦闘用の

パーツの修復が終わっていないのと、

「一般常識」をミミに教わっている勉強中なので、

今回は連れてきてはいない。

 

『……メディリス、あれ、どうしたの?』

 

「やめて! 私に話を振らないでお願い!」

 

先日の通信の件で

後ろめたいことのあるメディリスは

姉妹の視線を避けるように

ライガンの後ろに隠れる。

とばっちりを受けて突き刺さるような視線に、

彼もどうしたものかと言葉をつぐんでいた。

そんな様子にウェズもさすがに耐えかねて口を開いた。

 

「とりあえず、二人とも。

 真面目にやってくれ」

 

周囲を見回してキャスティロンを装備しなおす。

 

「そろそろ機甲種もいる危険なエリアに入る。

 見通しは悪いし、警戒しながら進みたいんだよ」

 

坑道エリアは惑星リリーパの地下……

何かの施設跡のようだった。

地表とは違い無機質な壁や床で構成されおり、

何かわからないコンテナや散乱し、

また太いケーブルがたくさん走っている。

一応、照明はところどころ生きているが、

その灯りは薄暗く、

辛うじて天井の隙間から漏れてくる

地表の光を頼りにせざるえない。

 

「ライガン、先頭を頼む。

 メディリスは後方で警戒。

 レシアはメディリスの傍で」

 

「わかりました」

 

「うむ、了解だ」

 

「索敵に注力するね」

 

フォーメーションを組みながら、

非戦闘員がいることを思い出す。

 

「ミリアは中央でつい歩いてくれ。

 何かあればライガンを盾にしていい。

 左右からのは俺が防ぐ」

 

「は、はい……!」

 

マスターの指示に全員が従う。

その様子にミリアは感心したように

 

「まだアークスになってから

 日が浅いって聞いてましたけれど……

 凄いしっかりしてるんですね」

 

その言葉にウェズは首を振る。

 

「こんなことで感心されてもな。

 さすがに何度もクエスト行ったから慣れただけだ。

 それに……」

 

彼はチームメンバーを見回す。

 

「みんなが頼りになるからな。

 背中を任せられるってもんだ」

 

最初はダカン相手に右往左往していたのに、

少しは自分も成長したかと思う。

けれど、慢心は危険だと、

火山であのアークスに体で教えられた。

だから、決して自分が強くなったと思わないこと。

常に強くなることを意識する……

そうしなければならない。

 

「ウェズさん! 上から!」

 

メディリスの叫び声。

考えるよりも先に体が動いていた。

 

「舌を噛むなよ!」

 

「えっ!?」

 

ミリアを抱えて横に跳ぶ。

何が起きたかわからない彼女はきょとんとするが

 

ガシャンッ!

 

上から突然何か降ってきた。

砲台に2本の足がついたような機甲種、

シグノガンだった。

着地して、すぐに発射体勢を取る。

 

「ゾンデ!」

 

けれど撃たすこともなく、

すかさずレシアが雷のテクニックを発動させる。

落雷で感電し膝を折ったシグノガンに、

 

「アサルトバスター!」

 

ライガンの新調したばかりの槍、

ラムダライゼノークが貫いた。

動力部を破壊された機甲種は力なく崩れ落ちる。

 

「あっ、ありがとうございます」

 

壊れたシグノガンを見ながら

ミリアは礼を言う。

ウェズは抱えていた彼女を離した。

 

「これくらいで礼を言われてちゃキリがねーよ。

 気にすんな」

 

そう言って、物陰を指差す。

 

「ちょっと隠れていてくれ。

 初めて坑道に来た俺たちを

 歓迎してくれるらしい」

 

視線の先、

前方にはのそのそと機甲種たちが集まってきていた。

4脚の機甲種が4、人型の機甲種が1。

スパルタンA、スパルガンは砂漠で戦ったが、

戦ったことがない人型機甲種も混じっていた。

 

『……ニンジャみたいなのがシグノビート、

 高い機動力を持ってるから気を付けて』

 

先に調査していたアークスたちからの情報なのだろう。

大体のことがわかるだけでもありがたい。

 

「サンキュー、トゥリア!

 俺とライガンがまず4脚を倒す。

 二人は人型の牽制を頼むぜ!」

 

近接職が先に飛び出す。

接近を感知したスパルガンが後ろを向き、

背面の装甲が開き、

スタングレネードを発射してくる。

 

「もうその攻撃は知ってるんだよ!」

 

至近距離で爆発すると一瞬ではあるが

意識を失うほどのモノだが、

少しでも離れれば耐えれる。

ウェズはキャスティロンを抜き

 

「カンランキキョウ!」

 

抜刀の一閃でグレネードを器用に弾き返した。

センサーの近くで爆発したグレネードは、

スパルタンAとスパルガンの機能を一時停止させる。

 

そこへライガンが腰を据え、

チャージしたフォトンを一気に放つ!

 

「スライドエンド!」

 

横薙ぎの一閃が機甲種たちを真っ二つにした。

新しくなった槍の威力に

ライガンは満足気に頷く。

 

「このっ、このっ!」

 

パンッパンッ!

 

メディリスがコンテナの上から狙撃を行う。

機動力が高いというだけあって、

シグノビートはステップで器用に弾丸を避けていた。

当たらないことに苛立つメディリスだが、

目的は足止めだ、十分に役目を果たしていた。

 

「……えっ!?」

 

だが仲間がやられたことを察したのか、

突然にニンジュツのように

胸の前で印を組むようなポーズを取り

 

シュンシュンシュン……

 

残像と共になんと5体へと分身した。

 

「ど、どいうこと!?

 全部質量がある!?」

 

ホログラム投影による分身であるならば、

メディリスのセンサーがすぐに本体を見分ける。

だが今増えたシグノビートはどれも質量がある……

つまり全部が「本物」なのだ。

 

手からレーザーブレードを出し、

近くにいたウェズに一斉に襲い掛かろうとするが

 

「ならまとめて倒せばいいだけでしょう!」

 

その傍に、レシアの投げたタリスが浮いていた。

 

「ギ・ゾンデ!」

 

発生した電撃はシグノビートの一体を感電させる。

それだけで終わらず、

電撃は次々とシグノビートたちを追撃していく。

 

「お前が本体か!」

 

雷撃を受け、本物以外のシグノビートが薄くなっていた。

すかさずウェズはフォトンアーツを発動させる。

 

「ツキミサザンカ!」

 

下からの切り上げでシグノビートを破壊した。

本体の消滅と同時に分身たちも姿を消す。

 

『敵性反応、全て消滅』

 

トゥリアの声に全員が武器を収めた。

 

「……凄い」

 

物陰から見ていたミリアは、

スノーフレークの戦いに放心していた。

武器を作ることを生業にしているが、

実戦を見るのは初めてらしい。

その様子にレシアはため息をつく。

 

「もう気が済んだでしょう?

 これでミリアは帰ってください」

 

……りー。

 

「え、姉さん!

 まだ私は来たばかりだよ!」

 

……りっりっ。

 

「これから奥にどんな機甲種がいるかわかりません。

 ですから、足手まといだって言ってるんです」

 

……りりっりりっ。

 

「私は今、とっても勉強になってるの!

 武器を作るにはやっぱこの目で見ないとダメだって、

 先生が言ってたことがやっとわかったの!」

 

また始まった姉妹の言い争いだったが、

ウェズは何かに気付く。

 

「二人とも喧嘩は後にしてくれ!

 ……なんか、聞こえねーか?」

 

二人が押し黙ると、

メディリスも頷く。

 

「なんだか……切羽詰った声のようなものが……」

 

『……集音マイクで拾ってみる』

 

なにかトゥリアが操作すると

 

「りっりっりりりりりっ!」

 

大音量でなにやら甲高い鳴き声が坑道に響き渡った。


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