スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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坑道編の始まりはデートから。
が、既に殺伐とした雰囲気で大丈夫か!
アークスカフェの京都店に行きたいです、はい。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


Episode 1 :to carry out one's will(坑道編)
040.「髪型も服も似合ってると思ってな」


「おお、これは……」

 

ライガンが感嘆の唸り声をあげる。

手に持ったのは灰色の棍棒のような

不思議なデザインの武器。

ぱっと見では何のカテゴリーがわからないが……

 

シャキン!

 

持つと変形して柄が伸び、

先に黄色のフォトンの刃が発生する。

大柄なライガンよりも更に大きい槍だ。

 

「中々に良いだろう?

 そいはラムダライゼノーク。

 前に使っていたラムダパシレイオンより

 威力は勿論高いが、更には携行性も高い。

 どうだい、お安くしておくよ」

 

武器ショップの店長であるトラアは

自慢げに出してきた。

 

「うむ……少し痛い出費だが頂こう。

 ワイヤードランスもいいが、

 やはりパルチザンが一番落ち着く」

 

ラムダパシレイオンは無理をさせすぎて、

ダークラグネの脚を貫いた時に

ぼっきりと折れてしまったのだ。

あれだけ投げたり振り回して

よく今まで耐えてくれたと思う。

 

「んで、トラアさんよ。

 俺のカタナも出来たって聞いたんだけど」

 

実は元々の用事はウェズに「新しいカタナが出来た」

と連絡があったからトラアの店に来たのだ。

 

「ん……おお、ああ、そうだったかな」

 

すると突然に歯切れが悪い様子で

トラアは明後日の方向を向く。

 

「はあ?

 今朝連絡もらったばかりだぞ?」

 

一体、どういうことだろうか。

明らかに何か知ってはいるが、

誤魔化すような態度にウェズは不審に思う。

突然にトラアは立ち上がり、

一度工房の中に入って、

数分もしないうちに出てきた。

 

「ミリアがお前さんのカタナを作ってるんだがな、

 すまないね、最終調整がまだだったらしい。

 ここの店に届けさせるから待っといてくれんか?」

 

チケットを渡される。

なんかカフェの名前が書いてあり、

「ラッピーパフェ1個無料券!」というモノ。

ウェズは半眼で券とトラアを見る。

 

「意味がわかんねーんだが」

 

ジトッとした目に初老の店主は視線を合わせようとしない。

 

「さて、ワシは知らんよ。

 ミリアがそう言ってるんだ、

 なら本人に後で聞くといいさ」

 

さて一体どういうつもりなのか。

 

「おっと、ライガン。

 お前さんには少し話がある。

 だからウェズ、一人で行ってくれ」

 

「う、うむ……?

 そういうことらしいから、マスター」

 

「ああ……わかった」

 

カタナがもらえないならここにいても仕方ない。

カフェの場所はそんなに遠くないので

徒歩でも15分程度で到着した。

 

見渡しの良いオープンテラスのカフェで

昼食の時間を過ぎたというのに人で賑わっていた。

家族連れや学生が多く

どうにもウェズには居心地が悪い。

正直、カフェだなんてお洒落な場所には

まるで馴染みがないので非常に戸惑う。

愛想の良い店員が案内に来たので

先ほどもらった券を渡すと……

 

「ご予約のお客様ですね!

 こちらへどうぞ!」

 

「は、予約?」

 

奥の席へと案内される。

賑わう店内の中でも

そこは少しだけ離れた位置にあるテーブルだった。

個室ってほどではないが、

近くに席はないので話し声は聞かれない……

そんな席なのだが

 

「レシア?」

 

見知った顔がむすっとした顔で座っていた。

剣呑な雰囲気を察した店員は

メニューと呼び出しボタンを置いてささっと逃げて行く。

 

とりあえずウェズも座り、

改めてこちらを見ようともしない彼女の姿を見る。

いつものヴィオラマギカとは違い、

今日は白いワンピースを着ていた。

薄い布地に花の刺繍がされている、

確か名前はエアリーサマードレス。

長い髪もいつもはそのまま流しているだけだが、

三つ編みにまとめている。

御淑やかなお嬢様、

そう言われても誰も疑わないだろう。

 

「へえ……」

 

「……なんですか?」

 

色白の肌に、端正な顔立ち。

こうしていると、

まるでモデルみたいだなと思う。

今まではアークスとしての相棒として

見ていたけれど、

周囲にいる市民となんら変わりない、

レシアも年頃の少女なのだと認識を改めた。

 

「髪型も服も似合ってると思ってな。

 こうして見ると、

 レシアはアークスなんかより

 もっと違うことした方がいいんじゃねーか。

 随分とお洒落をしてるのが板についてて驚いたぜ」

 

「それは、その、ありがとうございます」

 

ウェズもこれが「デートの待ち合わせ」であれば、

こんなに素直に言葉は出なかっただろう。

改まって女性を褒めろ、

なんてことができるタイプではない。

が、あくまでウェズにとっては

「偶然に街で顔見知りとあった」という認識。

 

「それで……人を呼び出しておいて

 遅刻したことの謝罪は一つもないのですか?」

 

だが、レシアにとっては違った。

そう、彼女は「そのつもり」で来ていたのだ

だというのにいつも通りのアークスの服装で、

かつ平然と遅刻されたら不満にもなるだろう。

 

「ん、俺が呼び出した?

 何のことだよ」

 

「え?」

 

素っ頓狂な声をあげるウェズに、

レシアは何がおかしいと気付く。

彼が嘘をついてるわけではないことが、

一緒に戦ってきた仲ゆえにすぐにわかる。

まだ知り合って間もないが、

けれどお互いのことはわかり合っている自信はあった。

 

「お前の妹、名前なんだったが、

 まあ俺のカタナが完成したって

 連絡してきたんだよ。

 それでなんでかここに行けって言われただけだ」

 

「そういうことですか……!」

 

慌ててレシアは立ち上がり、

逃げようとしたが、

 

「姉さん、どこへ行くの!」

 

仁王立ちしたミリア=エルシアが

入口を塞いでいた。


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