スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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こっそりとセラフィさんが登場して、
凍土編が終わりました。
これでEP1の半分が終わったことになります。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


039.「嬉しくて、泣いてるんです……」

凍土からチームルームに戻ると、

そこにはトゥリアとは

別のアークス補佐官が待っていた。

 

「突然、来てしまい申し訳ありません。

 どうしても直接お話ししたいことがありまして」

 

はっきりとした顔立ちに、

くりっとした愛嬌のある瞳。

濃い栗色の髪の女性で、

前髪を左右に流し

後ろ髪は編み込んで綺麗にまとめていた。

編み込みアップスタイルという髪型だったか。

トゥリアとは違い、

正規の補佐官のようだった。

 

「えーと、アンタは?」

 

メディリスは連れて帰ってきたアンジュを医務室に、

ライガンはトゥリアとデータ解析をしているので、

今チームルームに戻ってきたのはウェズとレシアだけだ。

ミミもどこかへ行っているのか不在らしい。

 

「あっ、自己紹介がまだでしたね!

 私はセラフィ。

 見ての通りアークス補佐官です」

 

ウェズとレシアは顔を見合す。

正規の補佐官が何の用だろうか?

用事があるならコフィーのように

通信で済ませればいいと思うが……

 

「もしかして、アンジュのことですか?」

 

レシアはセラフィが来た用事を察した。

彼女は頷き、

 

「トゥリアから相談されたのです。

 あ、あの子は私にしか言ってませんよ!?

 実はゴーストの話をあの子にしたのは、

 私なんです」

 

彼女はデータ端末を手渡してくる。

それは外部との通信機能のないタイプだ。

余程見られたくない情報があるのだろう。

 

そこに映し出されていたのは

なんだか頼りない優男のデータ。

 

「レックス=トゥフォード……

 研究者みたいだが、誰だ?」

 

セラフィは頷き、

詳細なプロフィールに切り替える。

 

「はい、アンジュ=トゥフォードの父親です。

 5年前、オラクルの市街地で

 事故死したことになっています」

 

「そんな……」

 

「いや、だってあいつの父親は凍土で……」

 

直接彼女が来た理由がわかった。

確かにこれは

通信回線を使うのは危険だろう。

 

「レックス博士は

 私の父……コーウェンと付き合いがあり、

 私も何度かお会いしたことがあります。

 まだ小さい頃のアンジュとも。

 けれど、不可解な死亡……

 そして遺体も知らぬ間に

 処理されたことになっていました」

 

深入りしては危険な話だ。

もしかしたら、

調査船の墜落にも

オラクルが関わってるかもしれない。

 

「表だって調べることもできずにいたのですが、

 今回、貴方たちがあの子を

 見つけてくれて本当にありがとうございます!」

 

彼女は頭を下げる。

レシアはそんな彼女に尋ねる。

 

「私たちは偶然出会っただけですから、

 セラフィさんに礼を

 言われるようなことではありません。

 ……それよりも、

 本題は別にあるんじゃないですか?」

 

「……?

 そうなのか、セラフィさん」

 

レシアの探るような声色に

彼女は気まずそうなそうな顔で頷く。

 

「……その通りです。

 実はあの子の面倒を頼みたくて。

 本当なら私が引き受けたいのですが、

 私は今、少し父のことで

 アークス本部から目を付けられていて

 あまり自由には動けないのです……。

 勝手なお願いだとはわかってるんですけれど、

 お願いします!」

 

セラフィが何かのデータを転送してくる。

それはアンジュという少女のプロフィール……

いや、偽造された身分証明書だ。

名前もアンジュ=トーラムになってる

バレたら彼女の

補佐官としての身分が危ないどころか、

重い処罰の対象になるレベル。

 

「ウェズ、あなたが決めてください」

 

レシアが判断を委ねる。

けれど、彼女はウェズが

どう答えるかもうわかっているのだろう。

確認するかのような声だった。

ならばウェズは応えるだけだ。

 

「セラフィさん、いいぜ。

 元々は俺たちについてきた子だ。

 面倒見るのは当然……、

 まあ本人が凍土に帰りたいって言うかもな」

 

それにまだ駆け出しのチーム……

スノーフレークなら本部も気付かないだろう。

いちいちメンバーを一人一人、

把握してるとは思えない。

 

「ありがとうございます!」

 

セラフィが深く、深く頭を下げた。

ウェズとレシアが顔を見合わせて笑う。

 

「……セラフィお姉ちゃん?」

 

その時、チームルームの扉が開く。

 

「アンジュ……私のことを覚えているんですか!」

 

そこにいたのは、

メディカルルームから帰ってきたアンジュ。

けれどキャストのパーツではなく、

ぱっと見は生身と区別がつかない手足。

ピンクを基調とし赤いラインの入った

パーカー風のトップレスと、

ひらひら揺れるミニスカート。

腰には光る五角形のアクセが

いくつか縫い付けられていて

キラキラと光を反射する。

マリーウィンド、

年相応の可愛い服装だ。

髪型の今は三つ編みをほどき、

長い髪を後ろに流していた。

 

「まだ体が慣れてないから

 ゆっくり馴染ませないと駄目だよ!」

 

後ろから慌てたようにメディリスも入ってくる。

そしてウェズたちに気付く。

 

「どうかな? 可愛いでしょ!」

 

「ああ、よく似合ってる」

 

「えへへ、大成功!」

 

得意気なメディリスの様子に、

服を選んだのは多分、彼女なのだろう。

 

「アンジュ!」

 

セラフィはアンジュに駆け寄り、

力強く抱きしめる。

 

「……セラフィお姉ちゃん?

 痛いよ」

 

「良かった……アンジュ、本当に生きてて良かった……」

 

「……泣いてるの?」

 

「嬉しくて、泣いてるんです……」

 

しばらくはそっとしておこうと思い、

ウェズたちは離れる。

 

「連れてきて、良かったな」

 

「そう、ですね」

 

どうして彼女たちの情報が

改竄されたかはわからない。

けれど、ここに泣いて

喜んでくれる人がいるならば

そんなことは今は考える必要もないと思った。

 

こうして、スノーフレークに新しい仲間、

アンジュ=トゥフォード……

いや、アンジュ=トーラムが加わった。

 

また一歩、物語は先へと進んでいく。

 


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