スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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凍土編に突入しました。
あんまりみんな良いイメージもないような凍土。
良いレアはないマップは歩きにくい……
今回はそんな白銀の世界に住む存在の話です。
というか原生種は何食べてるんだろうか。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


Episode 1 :A lion-hearted girl(凍土編)
033.「ここは……アタシ達の縄張り」


一面は白銀の世界。

降り止むことのない雪と、

時として襲い掛かる猛烈な吹雪。

一年を通して……

いや、もう既に40年以上も植物が息吹くことすらない。

 

そんな大地に住む生物たちが

何を糧に生きてるかは不明だ。

けれど原生種たちは過酷な環境に適応し、

そこに確かに生存していた。

 

寒さに耐えるための

特殊な体毛に覆われた白い原生種……

それは30匹近くはいる狼たち。

 

――その群れの中に彼女はいた。

 

淡い青白い髪を三つ編みにしてそれが4つ、

先には尖ったアクセがついている。

どこかお嬢様を思わせる髪型に、

まだ幼い丸みをおびた顔立ち。

けれどその目つきは非常に鋭く、

どこかアンバランスな印象を受ける。

彼女は何を思っているのだろうか。

 

「……」

 

驚くことに彼女は狼たちと並んで立っていた。

まるで群れの仲間の一人であるかのように。

ナベリウスの原生種たちは群れの仲間意識が強い。

ゆえに多種族が混じっていることはほぼ皆無だ。

彼女もまた、狼だとでもいうのだろうか。

 

小高い丘にいる彼女たちが見下ろしているのは、

広々とした雪原。

本来そこには雪の白しかないはず。

 

だがそこには黒い点々……

そう、ダーカーたちがいた。

カブトカニのような、いやヤドカリが近いだろうか。

背中に赤いコアを露出し、

のそのそと何することなく歩き回っていた。

ミクダと呼ばれるダーカーだ。

コア以外は非常に堅い甲羅で覆われている種である。

 

「……ゥゥ」

 

群れの長である一際巨大な白い獣が彼女を見る。

彼女よりはるかに大きく

体長は3メートルはあるだろう。

その獣の視線を受け、

彼女は任せてと言わんばかりに頷いて――

 

「……っ!」

 

小高い丘から飛び降りる。

それは人間からすれば無事では済まない高さだ。

けれど彼女は躊躇なく飛ぶ。

 

ブォォォォォォ……

 

あわや地面に激突というところで、

彼女の脚から青い光が噴射され静かに着陸した。

彼女はヒューマンではなくキャスト。

頭部や胴体は生身のようだが、

手足は完全にパーツで構成されていた。

体をまとうのはまるでレーシーなゴシックの衣装、

手足はシンプルですらっとした

飾り気のない装甲に覆われている。

特徴的なのは体を護るように配置された、

腰の4つの鋭いシールドのような飾りだろうか。

それはアリス・リーパーと呼ばれるシリーズだった。

 

「ここは……アタシ達の縄張り」

 

足からのホバーを噴かせながら、

彼女は一直線にミクダの群れに突っ込む。

ミクダはコアを攻撃しなければ倒せない。

なので接近に気付いて

一斉に正面を向いて歩いてくる群れは厄介だ。

 

「……」

 

けれど彼女は慌てることもなく腰から武器を抜く。

ガンスラッシュ・ゼロ。

それは剣と銃が一緒になった銃剣。

木目調のグリップに、シンプルな黒い刀身と銃身。

アークスの基本装備であるそれは、

使いやすい反面、威力には乏しい。

 

「エインラーケン」

 

けれど彼女にはそれで十分。

すくい上げるように刃で下からミクダを打ち上げ、

クルクルと回転しているコアを正確に銃で撃ちぬく。

 

集まってくる群れに対しても冷静だった。

 

「スリラーブロード」

 

弾倉をミクダたちの後ろに投げ、それを銃で撃ちぬく。

フォトンの詰まっていた弾倉は爆発し

後ろからミクダのコアを吹き飛ばしていく。

 

「レイジダンス」

 

慌て逃げようとしたミクダも

後ろを向いたのが仇となりコアを刺されて動かなくなる。

 

殲滅に要したのはほんのわずかな時間だった。

ダーカーたちが消滅したのを見計らって

原生種の長もやってくる。

 

「……ゥゥ」

 

そして褒めるように彼女に体を擦りつける。

彼女も嬉しそうに顔を緩めなすがままにされていた。

種族は違えとその姿はまるで親子のようだった。

 

このあたり一帯は彼女たちの縄張り。

敵対勢力は排除するのみ。

 

「……うん」

 

満足そうに武器をしまう彼女。

いくつものダーカーを葬り去ってきた

彼女たちはまだ知らない。

 

 

――今までとは比べものにならない、

  強大な敵が迫ってきていることに。

 


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