スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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夏目漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」とでもしとけ
と言ったのは有名な話ですけど、
なんか「星が綺麗ですね」には
「私の秘めた気持ちを貴方は知らないでしょうね」
という意味があるらしいと最近知りました。
でもこれマイナーでこじつけくさくないです?


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


032.「星が、綺麗ですね」

「はー……ったく、

 すっげぇ体が痛い」

 

「五体満足で終えれたので良かったじゃないですか」

 

全身傷だらけになったウェズを、

レシアが光のテクニックで

フォトンを活性化させて癒していた。

痛めた足だけでなく、

3本もの触手にがんじがらめにされたのだ。

あの時は必死で気付かなかったが、

触手には細かい棘が無数に生えていたので

ウェズの全身は切り傷だらけになっていた。

 

一緒に戦ったメディリスはというと

緊張の糸が切れたのか眠ってしまい、

ライガンが先にキャンプシップへと連れて帰った。

今ここにいるのはウェズとレシアだけだ。

ウェズが岩にもたれて座り込み、

それをレシアが一つ一つ傷を癒していく。

 

「良かったんですか?」

 

「何がだ?」

 

「彼女、入団させるつもりは

 本当はなかったのでしょう?」

 

唐突に言われた言葉に、

ウェズは苦笑いで頷いた。

 

「よくわかってるな」

 

「ウェズはわかりやすいんですよ」

 

呆れたように言われる。

本当はウェズが断りやすいように、

レシアは入団試験を提案したのだ。

 

「チームには確かにレンジャーは欲しい。

 けれど、俺たちもまだ未熟だ。

 ここにてあいつの為になるのか……

 正直に言うと自信なかったしな」

 

最悪、自分たちが至らないばかりに

彼女は命を落とすかもしれない。

自分の身は自分で守れるアークスでないと、

スノーフレークでは危険なのだから。

それならばベテランの揃うチームの方が、

彼女にとってもプラスになると思っていた。

 

「けどさ、メディリスを見ていたら、

 なんだか他人事に思えなくなってさ」

 

「……私たちも、似たようなものですしね」

 

「ならお互いに背中を預け合って行こう……

 そう思っちまったんだよな」

 

ウェズはそう言って「悪い」と謝った。

けれどレシアは首を振り、

 

「あなたらしい、そう思います」

 

治療が終わって、彼女は右隣に腰かけた。

 

「けれど、あまり無茶はしないでください

 あなたは一人じゃないです」

 

静かな、透き通るような声。

 

「私は、あなたがいたから今ここにいるのだから」

 

そう言って、空を見上げる。

陽は完全に沈み、

砂漠には夜が訪れていた。

地表に灯りなんて何もないから、

まるでドームの中にいるように星空が広がっていた。

 

彼女は左空へ手を伸ばし、

少し寂しそうに呟いた、

 

「星が、綺麗ですね」

 

ウェズも空を見上げる。

零れ落ちそうな星々の光。

今にも振ってきそうだ。

 

彼もその星空に右手を伸ばし応える。

 

「だから、一緒に冒険をして知っていきたい」

 

こつんと、伸ばした手と手がぶつかる。

 

「……」

 

知らず知らずのうちに、指を絡めていた。

 

「あ」

 

彼女が声をあげる。

その視線の先には――

 

「流れ星です」

 

二人は、流れ星に願い事をした。

何を祈ったか、それはお互いにわからないけれど。

 

――きっと、想いは叶うから。


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