スノーフレーク   作:テオ_ドラ

32 / 111
みんな大好きグワナーダを殲滅するお話です。
たった1幕でやられちゃうグワナーダさん素敵!
前回が進展遅かったので今日は連続更新です。
砂漠編も次で終わります。


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
気軽に感想とか要望を書いてくれると作者喜びます


031.「私だって、やらなきゃいけないの!」

「いてて……無事か、メディリス」

 

「……うん、少し打ち身があるくらい」

 

ウェズは抱きしめていたメディリスを

離して立ち上がらせる。

二人は竜巻で打ち上げられ

さっきまでいたのとは違う場所に飛ばされていた。

下が柔らかい砂の場所であったのと、

ぎりぎりフォトンで体を身を護ったのが幸いした。

近接クラスのウェズは衝撃に対しての耐性がある。

これがメディリス一人で飛ばされていたら、

落下の衝撃で動けなかっただろう。

 

……最も、ウェズの不注意がなければ

竜巻に巻き込まれることはなかったのだが。

 

「ウェズさん、ごめんなさい。

 私を庇ってくれて下になっていたけれど……」

 

「ん、ああ……謝るのはこっちだ。

 メディリスが教えてくれなきゃ竜巻でボロボロになっていた」

 

ウェズはそう言いながらも顔をしかめる。

けれど落下の体勢が悪かったらしい。

動けないほどではないが、

少し足を痛めてしまったようだ。

 

「しかし……ここは砂が随分と深いな」

 

周囲を見回すと広場みたいなところだった。

特に調査しなければならないような場所ではないが……

 

「……?」

 

日が暮れてきて周囲は薄暗くなってきている。

そんな中、メディリスは何かを感じた。

微かな……砂の中を這うような……

レンジャーのその仕草がなければ、

ウェズは「それ」の接近に気付かなかっただろう。

 

「危ねぇ!」

 

「……え?」

 

メディリスを抱えてその場から飛んで離れる。

 

ズボッ!

 

先ほどまで二人がいた位置、

その下から何かが勢いよく飛び出してきた。

 

「これは……!」

 

うねうねと触手のような、

それでいて先に爪が3つついた昆虫の足のような……。

赤いコアのような部分からは熱を噴いている。

 

「これはグワナーダ!」

 

周囲からいくつか触手が飛び出してくる。

ゆらゆら揺れて不気味極まりない。

 

「……ウェズさん?」

 

「あ、ああ……大丈夫だ」

 

そう彼は足を痛めているのだ。

苦痛に顔を歪めつつも、カタナを手に立ち上がる。

 

「タイミングが悪いな。

 いや、こういう状況だからか!」

 

先ほど出会ったアークスたちが言っていた

「群れからはぐれた個体」なのだろう。

仲間がやられてしまって慎重になっていたところに、

弱った得物を見つけて襲ってきたのだ。

 

「下がってろ、メディリス!」

 

カタナを構えて飛び出す。

しかし足を痛めているせいかその動きは遅い。

 

「サクラエンド!」

 

キャスティロンの一撃で触手は難なく切れる。

ライガンは全ての触手を切れば

本体が出ると言っていた。

……これならいけそうだ。

横から襲い掛かってくる触手も鞘で防ぎ、

すぐにカウンターで切り裂く。

倒すための火力は申し分なし、

けれど、今はブレイバーの本骨頂、

機動力を活かした戦いができないのが致命的だった。

触手を続いてもう一本を切った時に

 

スボォッ!

 

突如として足元から飛び出した触手に捕まる。

 

「なっ……囮!?」

 

触手は元々は1つの個体から出ているのだ。

一本を囮にして、

そこに飛び込んで来た得物を捕まえる……

狡猾な砂のハンターの戦術だ。

動きの遅くなっているウェズは格好の餌食である。

 

「くっそ……!」

 

すぐに足元のを切ろうとするが、

 

ズボッズボッ!

 

更に2本周囲から出てきてウェズを捕縛する。

キャスティロンを奮いたくても身動きがとれない状態だ。

 

――……

 

何か大きなモノが砂の中を動いて迫ってくる。

恐らく、本体だろう。

動けなくなった得物を仕留めるために来ているのだ。

 

「このやろう……!」

 

レシアとライガンさえいれば、

すぐに触手を切ってくれるだろう。

だが、今はここにはいない。

 

「……ウェズさん!」

 

いや、一人だけ助けられるアークスがいた。

 

「……!」

 

メディリスは懐から

ヤスミノコフ3000Rを取り出す。

 

構えてから、その銃先がプルプル震えているのに気づく。

 

そう……自信がなくて、

まだ試し打ちすらしていない。

初めての銃……

いやそれどころか彼女はメナアリス以外使ったことがないのだ。

 

どうして彼女がメナアリスに拘っていたのか。

それは憧れだった祖父の愛銃だからだ。

今ほとんど隠居状態になった祖父だけれども、

とてもとても格好良かった。

あんな格好良いアークスになりたい、

そう思って飛び込んだアークスという仕事。

 

(でも、私は全然ダメだった……)

 

当てられなかったらどうしよう。

屈強なキャストのライガンだから、

誤射しても無事だった。

けれど手負いでフォトンの弱っている

ウェズに当たったら……

 

――怖い。

また自分を否定されるのが怖い。

 

構えている銃の引き金が引けない。

 

(やっぱり、私には無理だよ……)

 

目の前で苦しんでいる人がいるけれど、

私には何もできない。

 

「メディリス!」

 

けれど彼は彼女の名前を呼んだ。

 

「失敗しても構わねぇ!

 好きなように撃っちまえ!」

 

失敗してもいい。

それは、彼女が落ち込んでいた時に言ってくれたあの言葉。

彼の視線が真っ直ぐにメディリスに向けられる。

 

「……うん!」

 

だから、応えよう。

 

「私だって、やらなきゃいけないの!」

 

必要なのは精密射撃だ。

彼女はその場にうつ伏せに寝そべり、

銃を前に突出して狙いを定める。

それは狙撃に特化した姿勢。

ヤスミノコフ3000Rはメナアリスより

二回り以上小さな長銃だ、

これなら私でも使えるはず。

銃身はもう震えていなかった。

 

「狙いは……そこ!」

 

ウェズの足元から飛び出す触手には

ひょろっとした遅い部分がある。

そこならば……

 

「スニークショット!」

 

バシュンッ!

 

フォトンの弾丸が真っ直ぐに飛び出す。

 

「当たって……!」

 

バシンッ!

 

狙いは逸れたが、

ウェズを捕まえる3本触手の一本を貫いた。

喜んでいる暇はない、

もう時間はないのだ。

 

精神を研ぎ澄ます。

今度は外さない。

この狙撃体勢なら反動を気にしなくていい。

 

バシュ、パシュンッ!

 

すかさず2発撃つ。

真っ直ぐに飛ぶフォトンの弾丸。

 

キャアシシシシシシシシシ!

 

甲高い悲鳴が砂漠に響き渡る。

見事に残りの2本の触手を撃ちぬいたのだ。

 

「あれが本体か!」

 

本当にウェズのすぐそば、

そこに砂から飛び出してきたのは、

まるでアリジゴクのような鋭い顎を持つ、

ムカデのような黒いダーカー。

砂の熱に耐えきれなり、

腹のような部分にある赤いコアを露出させた。

熱で空気が揺らめく、

間違いなくあそこが弱点だ。

 

「ウィークバレット!」

 

すかさずメディリスはそこへ特殊な弾丸を撃ち込む。

ウィークバレットとは撃ちこんだ部分の

フォトンを活性化させる特殊弾頭だ。

ダーカーや浸食された存在にとって、

フォトンは絶対的な威力を誇る。

それを活性化させることにより、

よりフォトンによる攻撃の威力を上げるのだ。

 

これが、レンジャーが

パーティにおいて必須とされる所以。

 

赤くマーキングされた場所はウェズの目の前。

 

「これなら問題ないぜ!」

 

痛む足をこれが最後と踏ん張る。

キャスティロンにありったけのフォトンを込めた。

 

「アサギリレンダン!」

 

何度も何度もカタナを振るい、

弱点を切り裂いていく。

赤いダーカー因子が鮮血のように飛び散る。

表面はズタボロになってコアは中まで見えていた。

 

「ピアッシングシェル!」

 

そこをメディリスの撃った貫通弾が貫き

 

ギィシャアアアアアアア!

 

グワナーダは絶命した。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。