スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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チームルームがスノーフレークにもついに実装されました。
まあチームルームが増えても何かあるわけではないですが。
あわせて次回は26回目にしてやっとサブヒロインが登場します。
ウェズとレシアに忍び寄る三角関係の足音……!


【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。



Episode 1 :Despair gives courage to a coward(砂漠編)
025.「ここが、俺たちの城だ」


クエストから戻り、一晩体を休めてから

ウェズたちは普段来ない区画を歩いていた。

トゥリアが連絡事項があると言っていたので

聞いてみるとそれは朗報だったのだ。

 

「チームルーム?」

 

『……そう。

 スノーフレークの活動も認められたのと、

 グレイシールドが使っていたルームがあったこと。

 ……その二つの要因から今回、

 スノーフレークにチームルームが与えられた』

 

グレイシールド、ということは……

 

「うむ。俺たちが使っていたルームを

 スノーフレークでも使えるように

 申請を出しておいたのだ」

 

元グレイシールドのメンバーのライガンが頷いた。

 

「形としてはチーム合併にしておいたのだが、

 スノーフレークは実績も浅い若いチーム、

 申請が通るかわからなかったので黙っていた」

 

「合併……ということは、

 それじゃもうグレイシールドは……」

 

レシアは気付く。

それに込められたライガンの想いを。

彼は笑って首を振る。

 

「良いのだ。

 ミミとも話した結果だ。

 新しい道を踏み出さねばならない」

 

完全に、グレイシールドというチームは

書類上からも消滅したということ。

それだけの想いを込めて、

彼はスノーフレークに参加してくれていたのだ。

 

それがわかってはいるはずだ。

だがあえてウェズは軽い調子で礼を言う。

 

「ありがとよ、ライガン。

 いやー、チームルームってのは

 うちには縁がないと思ってたぜ。

 人数も少ないしな」

 

普通はもっと人数が多いチームのためのモノ。

けれどそれは逆に、それだけ人数が増えると……

少しでもアークス本部が

スノーフレークに期待してくれたということ。

そうでなければ限りあるチームルームを

いくら合併とはいえ与えてくれなかっただろうから。

 

『……そこの扉。

 そこがスノーフレークのチームルーム』

 

きちんとチーム名が書かれたプレートを見て、

ウェズとレシアは少し感慨にふける。

ここまであっという間だった。

 

「さあ、マスター」

 

「ウェズ、入りましょう」

 

二人が脇に控える。

ウェズは頷き、扉を開けた。

 

「ここが、俺たちの城だ」

 

まず入るとすぐに目につくのがミーティグルーム。

3人がけの椅子が並んで3つ、

それが左右にあるので18人座れる。

中央は少し高くなっておりマスターのための場所なのだろう。

頭上にはアークス本部からの情報、

それこそクエストや惑星やエネミーに関するデータ、

そういった様々なモノが

複数のディスプレイに表示されていた。

これなら大勢での作戦会議にも使えるだろう。

 

「すげぇな……」

 

足を踏み入れて右手側を見ると……

 

「……おかえりなさい」

 

小柄なニューマンの少女がいた。

左右にロールを巻いた特徴的な亜麻色の髪……

 

「トゥリア!」

 

そう、今まで通信越しでしか話したことがない、

スノーフレークの補佐官(見習い)の少女がそこにいた。

いつもは愛想の悪い彼女も

少し照れているのかそっぽを向いている

 

「……今日から、ここが私の職場だから。

 ここからみんなをサポートする」

 

なるほど、チームルームにはそういう役割もあるのか。

これならオペレーターとの連携も取りやすい。

ウェズは手を差し出し

 

「トゥリア、改めてよろしくな」

 

「……ウェズは無茶ばかりするから、

 今後は私の言うことは聞いて」

 

握手をした。

 

「トゥリア、大型相手の時の

 弱点の情報、助かりました」

 

レシアも続く。

 

「……それが私の仕事だから。

 クエスト中にウェズと喧嘩しないで」

 

そしてライガンも握手をしようとしたのだが

 

「……いぇーい」

 

「お、おう。いぇーい」

 

何故か彼とだけはハイタッチだった。

ウェズとレシアは顔を見合わせて首を傾げる。

 

「……もう一人、チームルームにいるから。

 彼女にも挨拶してあげて」

 

「彼女?」

 

トゥリアがチームカウンターとは反対方向を指さす。

そこには……

 

「ミミ!」

 

元ライガンのチームメンバーのミミ=ロミがいた。

白いセーターに栗色のスカート……

ハートウォーミングコーデという服を着ている。

その姿はもう完全に戦う姿ではなかった。

彼女はメディカルルームで入院していたはずだが……

慌てて駆け寄るライガンに、

彼女は穏やかな笑みを向けて

 

「ライガン、私なら大丈夫よ」

 

ウェズとレシアにも手を振る。

彼女がいたのは簡易のバーみたいなモノ。

棚にはアルコールだけでなく、

何やら色んな飲み物や更には薬まで並んでいる。

そのカウンターの中にミミはおり、

彼女は車いすに乗っていた。

 

「少しでも何かお手伝いできないかと思ったの。

 私はもうアークスとして戦えないから」

 

視線でウェズに「どうかしら?」と尋ねてきたので、

迷わずにマスターは頷いた。

 

「ああ、助かるぜ。

 チームルームにいるのがトゥリアだけじゃ不安だしな」

 

「……どうしてそこで私の名前が」

 

不満そうな声が聞こえるが、

誰もが彼女の普段の生活態度から不安を抱えていたからだ。

ライガンが心配そうに、

というより随分と過保護に車いすで作業をする彼女に

あれやこれや世話を焼こうとしていた。

ウェズは苦笑しながらそれを見てから、

視線を始めてチームルームを改めて見る。

 

「なんだか、随分とチームらしくなりましたね」

 

横に並んだレシアも同じように見回していた。

 

「ああ、楽しくなってきたじゃねーか」

 

それからしばらく二人は無言でいたが、

 

「ありがとうな」

 

この前とは逆に、今度はウェズから礼を言った。

何が、とは言わない。

それに気付いたのだろう。

彼女は笑って

 

「どういたしまして」

 

ただ一言、そう返した。

言葉にしなくても、通じている……

そんな想いが、二人にはあったから。

 

「……こほん!」

 

そんな二人に、トゥリアは咳払い一つ。

 

「……マスター、マネージャーに伝達事項がある」

 

「チームルーム以外に、まだあるのか?」

 

その言葉に彼女は頷き、

 

「……うん。実は」

 

チームルームの入り口へと視線を向けた。

そこには見知らぬアークスが一人、

いつの間にか立っていた。

 

「――入団希望者がいるのだけれど」

 


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