スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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ヴォルドラゴン戦です。
火山を総べる地獄の王にいかにして、
スノーフレークのメンバーは勝つのか……



【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
ちまちまと連載していこうと思います。


023.「俺は、敗北を忘れちゃいない!」

全身を覆う強固な鱗に、

空を覆わんがごとき巨大な翼。

ところどころ生えた角から、

体内から抑えきれない熱量を放出している。

マグマの中を歩いてきたのか、

全身は黄金色になっており、

熱のカーテンを羽織っているよう。

全長は10メートルはあるだろうか、

いや、尻尾まで含めたらその倍はいくか。

 

「こいつぁ……でけぇな」

 

ドラゴン、まさに人々が想像する脅威の存在そのもの。

ヴォルドラゴン……

この火山という地獄を総べる龍の名だ。

まるで2階建ての建物が襲ってくるようなモノ。

歩くだけでも体浮くような振動が伝わってくる。

 

「ウェズ……あれを」

 

レシアが指差す先は龍の顔。

いやその少し横に……

 

「ダーカー因子の浸食核……」

 

けれどまだ、

完全に自我を失っているわけではないらしい。

暴れては我に返ったかのように立ち止まるのだ。

 

「どうする、マスター」

 

問いかけるライガンに、ウェズは少し考え……

 

「……いけるがわからねぇが、浸食核を破壊するか」

 

「そんな余裕、ありますか?」

 

「いや、つーか、あれを倒しきるのは俺たちには無理だ」

 

冷静に判断をする。

完全に倒しきるのは難しい……

けれど浸食核を破壊すれば、

少なくとも争う理由はなくなるはずだ。

 

「二人とも、危なかったら撤退するぜ」

 

「了解しました」

 

「うむ、犬死にはゴメンだからな」

 

頷きあう。

 

『……巨大な熱量、くる!』

 

トゥリアの警告に三人は散開して離れる。

狙って撃っているのではないだろう、

無理なく三人は避けれたが……

 

ドォン!

 

岩ごと貫通し、爆発が起きたかのように、

ごっそり地面が抉られていた。

そして熱量のせいで周囲の岩まで溶けている……

 

「当たるわけには行かねーな……」

 

ウェズは岩陰を駆け抜けながら、接近する。

 

「アサギリレンダン!」

 

まずは感触を確かめようと

キャスティロンで背後から胴体へ斬撃を浴びせるが……

 

キンッキンッ!

 

甲高い音で弾かれた。

それどころか皮膚の持つ熱量に飲まれそうになる。

 

「マスター!」

 

身をかがめて、

後ろから迫ってきた尻尾を辛うじて避けた。

ウェズに注意が向きそうなのを

ライガンは槍で牽制しながら意識を逸らさせる。

 

「ライジングフラッグ!」

 

けれどまるでダメージが通らなく、

鼻先についた角を振り回してライガンは弾きとばされた。

 

「バータ! バータ!」

 

レシアが岩陰から氷の地走りをぶつける。

だが皮膚に当たりはするものの、

その皮膚が持つマグマの盾の前では焼け石に水だった。

 

炎のブレスがレシアがいた場所を襲うが、

走りながらテクニックを撃つ彼女はもうそこにはいない。

 

「くっそ、なんつー硬さだ!」

 

まるで黄金に輝いたように光る体、

それが攻撃を弾いてしまうのである。

 

『……弱点を解析している』

 

リアルタイムで送信されるデータから、

トゥリアも戦ってくれているらしい。

ここは彼女を信じるしかないだろう。

 

「ライガン、前と後ろで翻弄するぞ!」

 

「おうっ!」

 

前はヴォルドラゴンの注意を引かねばならない。

後ろは振り回される尻尾を避けながら攻撃しなくてはならない。

即興ではあるが、

きちんとした役割分担ができていた。

 

「バータ!」

 

だからこそ彼女への注意を逸らせる。

レシアはなんとか皮膚の熱を冷まそうと、

繰り返して氷のテクニックを放っていた。

 

「……モ……エロ!」

 

ヴォルドラゴンが叫ぶ。

すると声に呼応したかのように

地面からマグマが噴出してきた。

 

「きやっ!」

 

まさか地面から攻撃が来ると思っていなかったので、

攻撃の衝撃にレシアが飛ばされる。

 

「レシア!」

 

「私は大丈夫です!」

 

「無理なら言えよ!」

 

ウェズは彼女を信じて、

持ち場を離れずに攻撃を続ける。

と言ってもまるで歯が立たないのだが……

 

この戦いで厄介なのは、

ヴォルドラゴンの見境ない攻撃だけではない。

壁や地面を流れるマグマも、

いくらフォトンで体を護っているとは当然触れては危険。

あわせて火山洞窟は全てのモノが強力な磁場を含んでいる。

ちょっとしたことで岩石たちが

突然に動き出したり砕け散ったりするのだ。

 

戦場としては最悪と言えるだろ。

 

「マスター、らちがあかん!」

 

「泣き事は帰ってからにしようぜ、ライガン!」

 

ライガンがそう言うのも無理はない。

まるでダメージらしいダメージを与えれないのだ。

 

けれどそれはヴォルドラゴンにとっても同じこと。

鬱陶しい小さな人間たちを

仕留めれないことにいら立っているのは間違いない。

 

「……ウゴア」

 

少し唸ってから、

 

バサッバサッ……

羽ばたきながら空へと体を浮かべる。

その高さは決して高くないが、

地面にいるウェズたち三人を見下ろすには十分だ。

 

「なんか……マズいな」

 

何をしようとしているのかわからないが、

本能が危険だと警告してくる。

 

「凄い熱量が、集まっている!」

 

レシアが叫ぶ。

そこで三人はヴォルドラゴンが

何をしようとしているか気付いてしまった。

 

――地面全てを焼き払うつもりだ!

 

この火山洞窟では避けようがない。

放たれたらゲームオーバー。

だが……

 

『……弱点がわかった!

 尻尾の先、結晶を壊して!』

 

トゥリアの解析が終了を叫ぶ。

 

「尻尾の先って……飛んでやがるぞ!」

 

ほんの少しその情報が早ければ……

 

「マネージャー、俺の槍に氷を付与してくれ!」

 

だが諦めないライガンが走る。

 

「ラ・バータ!」

 

もう考えている暇はない。

レシアは言われた通りにタリスを投げる。

それを受け取ったライガンは

溢れだす冷気に左腕が凍るも構わず、

穂先へとつける。

そして……

 

「セイクリッドスキュア!」

 

力いっぱい空に向けて槍を投擲した。

 

「コレデ……オワリダ!」

 

まさに炎を吐きだそうとしていた瞬間、

 

「当たれ!」

 

槍は結晶を貫く。

普通であれば熱で弾かれたが、

レシアの氷のテクニックが相殺したのだ。

 

「ウガァァァァァァァァァァァァ!」

 

結晶を失ったヴォルドラゴンは、

体にまとっていたマグマを維持できずに

熱量の鎧が溶け落ちる。

 

「ウェズ、頼みました!」

 

「任せろよ!」

 

空中でよろけているドラゴンに向かい、

ウェズは岩を蹴って高く飛ぶ。

狙いは鼻先の浸食核……!

 

「……ナメル、ナ!」

 

けれど、それはヴォルドラゴンにとって一番危険な場所。

 

そう、先ほどまで口に貯めていた炎がまだ残っていたのだ。

飛んでくるウェズを撃ち落とそうと首を動かす。

飛んでしまったウェズに、空中で避けるすべはない。

タイミング的には、ウェズのカタナが届くより先に、

ヴォルドラゴンが火弾を放ち小さな人間を焼きつくすだろう。

 

だが――

 

「俺は、敗北を忘れちゃいない!」

 

今までのウェズなら、何もできなかっただろう。

けれど、強くなると決めたから。

カタナを鞘から抜く、そして

 

「ヒエンツバキ!」

 

あの剣士が自分を倒するのに使ったその技を、

今度はウェズ自身が放った。

 

ヒュンヒュンッ……

 

投擲されたキャスティロンは寸分たがわず、

無防備になった浸食核を切り取った……。

 


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