スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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勿体ぶってるわけではないのです。
勿体ぶってるわけではないのです。
けどやはり生い立ちとか戦う理由を語るシーンって、
相応のシチュエーションがあると思うのですよね!
あ、妹は別にそんな出番ないので
姉妹でどろぬまの三角関係とかそういうのはないです、はい。



【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html
ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
ちまちまと連載していこうと思います。


021.「女たらしですね」

店主とまだしばらく話すというライガンを置いて、

武器を受け取ったウェズは先に店を出た。

クエストに行く前に一度試し切りもしようと考えていたら

 

「あの、待ってください!」

 

呼び止める声に振り返る。

そこに確か……

 

「ミリア……だっけか」

 

息を切らして、ツナギの少女が追いかけてきた。

なるほど、改めて見るとやはりよく似ている。

ただ……生きる意欲というと大層すぎるが、

「毎日を悔いないように一生懸命!」というオーラが漲っている。

姉は何事もどこか逃げ腰なのに随分正反対なことだ。

 

「少し、お話させてください!」

 

けれど……

もし、あの惑星ナベリウスで出会ったのがこの妹だったら、

ウェズはパーティを組んでいなかっただろう。

それだけは、間違いない。

 

「あの、ウェズさんは姉さんのチームのマスターさんなんですよね?

 姉に、その……もっと家に帰ってくるように言ってくれませんか?」

 

なんか事情を抱えているとは思ったが、

どうらレシアは家族絡みの話らしい。

 

「姉さんから何か話を聞いていますか?」

 

「いや、特には何も聞いてないぜ」

 

正直に答えると「やっぱり……」とうなだれ、

そして顔を上げたと思ったらウェズの手をばしっと掴んで

 

「あの……姉さんは、ですね……!」

 

「待った」

 

ウェズは何か言いだそうとする彼女を押しとどめた。

苦笑いしながら首を振る。

 

「俺はアンタから事情を聞くつもりはねーよ」

 

「え……?」

 

「アンタとはさ、今日が初対面なんだよ。、

 それに対してな

 一緒にクエストを今まで組んできたあいつ……

 レシアが俺に話していないということは、

 あいつなりに考えているということだと思ってる」

 

それは、信頼ともいえる。

まだ出会って日は浅いけれど、

お互いに命を預け合って戦ってきたのだから。

 

「レシアが話したいと考えた時に、

 あいつから直接聞くさ、面倒な話はな」

 

「ウェズさん……」

 

できるだけ、余計な情報を入れずに

自分の目で相方とは付き合っていきたいと思う。

 

「すいません……差し出がましいことを」

 

そこで抱き合うみたいに掴んでいた腕に気付き、

「ごめんなさい」と慌てて離れていた。

あまり免疫がないのか、顔を真っ赤にしている。

こういうところは姉と似ている気もする。

 

「ウェズさんは、

 私なんかより姉のことをわかってらっしゃるんですね」

 

「そんなことねーって。

 あいつのことは俺もよくわからねーし」

 

苦笑する。

本当にわからないことも多い。

彼女は何せ自分のことは話さないし、

表情もそこまで豊かではないはない。

けれど通じ合っている部分も、確かにあった。

 

それがミリアにはわかっていたのだろう。

寂しげな表情を浮かべていたが

 

「これ、姉さんに渡してくれませんか?

 前に使っていたローザクレインの上位モデル、

 『ブルクレイン』です。

 姉もフォトンの扱いが上手になっていましたから、

 これも十分使いこなせると思います」

 

「わかった、渡しておくよ。

 へえ、綺麗な羽だな。

 作った奴が武器に対して真摯なのがわかるぜ」

 

ローザクレインは柔らかいピンク色の羽のタリスだったが、

渡されたブルクレイは、

まるで澄んだ空のような淡い青色。

溢れるフォトンの粒子が幻想的だった。

 

「ありがとう、ございます。

 私が作ったんです、姉さんのことを想いながら」

 

何気なしに褒めてしまったが、

彼女はその言葉をどう受け取ったのか、顔を真っ赤にしていた。

 

「あの、お願いしますね!」

 

ブルクレインを押し付けるように渡し、

ミリアは店へと走って戻って行く。

 

そして途中で振り返り、

 

「ウェズさんの新しいカタナ、私が作りますから!

 スサノグレンに負けない……

 強くて、格好の良いカタナを!」

 

真っ赤な顔で叫んだ。

 

「ああ、楽しみにしてるぜ!」

 

ウェズは彼女が走り去っていき、

店の中に姿が消えるのを見送くる。

一息ついてから、ため息混じりに

 

「ほれ、妹さんが作ってくれた武器だぜ」

 

物陰に声をかける。

そこから出てきたのは

 

「女たらしですね」

 

仏頂面をしたレシアだった。

 

「妹さん、お前と違って素直な子じゃねーか」

 

「言われなくても知ってます。

 手を出したら許しませんから」

 

嫌そうな顔をしながらも、タリスを受け取った。

 

「それで、聞かないんですか?」

 

何が、とは言わなかったので

 

「聞いてほしいのか?」

 

そう顔も見ずに尋ねると、

 

「ダメですね」

 

即答された。

 

「だと思ったよ」

 

まるで最初から決まっていたかのようなやりとり。

けれどそれが心地よかった。

二人は無言で並んで歩いて行く。

 

「ありがとう、ございます」

 

「礼を言われる理由が思い当たらない」

 

「ブルクレインを渡してくれたことにですよ、

 勘違いしないでください」

 

「だから理由がわからないってのに勘違いもクソねーって」

 

今はこれでいい。

 

まだ、二人には時間がたくさんのあるのだから。

 


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