スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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初めてきちんとしたNPCが登場しました。
しかもエーデルイーオーはイオと『センパイ』が
一緒にラブラブしながら設計したという設定になっています。
そして本編には存在しない謎のセンパイ専用の武器の存在。
2次創作っぽくなってきました。
影が薄いメインヒロインと妹の関係は次回です、はい。



【挿絵表示】


表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html
ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
ちまちまと連載していこうと思います。


020.「こいつならお前さんにぴったりだろう」

「姉さん、どうして連絡してくれないの!

 凄く心配してたのに!」

 

レシアと同じ銀髪なのだが、

ロングヘアーの姉とは違い、

長い横髪以外は後ろで綺麗に編んでまとめていた。

たしかストレートアップという髪型だったか

服装はツナギを思わす衣装……

白いオールブリンクを着ているのだが、

作業中で暑かったのか前を大胆に開けている。

 

「えーと……これにはわけがあって、ですね……」

 

姉の方には後ろめたい理由があるのだろう、

明らかに怒り心頭の妹の目を直視すらできない様子。

顔立ちもよく似ているのだが、

どちらかというとクールな姉とは違い、

妹は感じ何事も前向きに挑んでいく活発さがあった。

正真正銘の姉妹なのだろうけれど、

正反対のイメージを持つ二人だった。

なお大胆な格好をしている妹より、

胸囲は露出の少ない姉の方が多いようである。

 

「どんな理由があってもダメに決まってるじゃない!

 ちゃんと納得できる説明を聞かせてよね!」

 

そう言って彼女はウェズとライガンに軽く会釈してから、

姉を引きずって店内へと入って行った。

 

ライガンに視線で問いかけられるが、

ウェズは事情は知らないとばかりに肩を竦めた。

 

「やあライガン、久々だな。

 昨日連絡が来るまで

 ワシは死んだとばかり思っていたよ」

 

店内に入ると、そこは薄暗くて狭い店内だった。

工房は裏にあるのだろうけれど、

商品棚にはほとんど武器は置いておらず、

教えてもらわねば

ここが武器ショップだとはわからないかもしれない。

 

出迎えてくれたのは随分と歳をとった

メガネのヒューマンだった。

行儀悪くカウンターに足を乗せて

態度も悪そうに座って出迎えてくれた。

一見すると子供かと思う小柄な体型だが、

なんとも含みを持ったような複雑な表情は、

歳を重ねなければできないだろう。

 

「トラア、先ほどの少女は?」

 

奥の工房に視線を向けて問いかけると、

困ったように苦笑いをして髭をさすっていた。

 

「2か月ほど前に突然、

 弟子入りさせてくれって飛び込んできてな。

 まー、筋はいいから雇ったのさ。

 性格は見ての通りのじゃじゃ馬だよ」

 

ウェズの顔を見て

 

「ミリア=エルシアって名前だ。

 まあお前さんの連れの妹みたいだが、

 どんな事情があるのかはワシは知らんよ」

 

そしてこの話は終わりと横に置く仕草をした。

 

「ワシはトラア。ここの店主だ。

 ライガンから事情は聞いてるよ。

 黒耀牙のレイにカタナを折られたらしいな。

 まあワシから言わせてもられば、

 シガルガで折れた程度でよく耐えたなと

 褒めてやりたいがね」

 

「そういうモンなのか?」

 

てっきり情けないと言われてると思ってた

ウェズは首を傾げた。

 

「おう、腕の一本なくなってても不思議じゃなかったさ。

 ほれ、手をだしな」

 

突然差し出された手を訳も分からず握り返す。

トラアは眼を閉じて何かを探るように深呼吸する。

3分くらいそうしていただろうが、

息を一つついて手を放した。

 

「なるほどな」

 

そう言って工房の中へ入って行った。

 

「なんだったんだ?」

 

「うむ、トラアはああすることで、

 そのアークスにあった最適の武器を見つけてくれるのだ。

 腕は確か、信用してくれて大丈夫だ」

 

「なるほど、

 それで武器のディスプレイ自体があまりないのか。

 選ぶのはアークスじゃなくて店主ってわけだ」

 

アークスにもこだわりがあるように、

武器職人にもこだわりがあるのだろう。

ウェズのようにあまり武器の知識がない新米にとっては

ライガンがここを紹介してくれたのはありがたい。

 

すぐにトラアは戻ってきた。

足腰が弱いのかよっこらよっこら歩いてきた。

 

「ほらよ、こいつならお前さんにぴったりだろう」

 

渡されたのは持ち手のところに「目」が付いたような、

それでいて全体的に無機質なデザインの不思議な鞘。

抜くと鞘とは裏腹にシンプルな反身の刀身が出てきた。

シガルガと比べると少し長く、

けれどより「カタナ」らしいフォルムだった。

 

「キャスティロン。

 それがそのカタナの名前さ。

 さっきのミリアが丁寧にフォトンを研磨して作った

 安定性には自信のある代物だ」

 

「レシアの妹がこれを作ったのか……

 へえ、初めて持つのに手に馴染むな」

 

持って見て完成度が高いとすぐにわかる。

姉はアレだが、妹は優秀らしい。

 

アザナミからもらったシガルガを折られたのは悔しいが

けれど新しい得物にウェズは目を輝かせる。

 

「けどそいつじゃ、レイのスサノグレンには勝てないぜ」

 

そこで店主は意地悪そうに水を差してきた。

 

「そうか……」

 

見るからに落ち込んだウェズだったが、

ライガンはトラアに尋ねる。

 

「勿論、何か考えがあるのだろう?」

 

「当然よ。

 スサノグレンは業物、

 そう簡単に勝てる武器は用意できん」

 

そして工房をくいっと指差し、

 

「だからお前さん用にとっておきを今から、

 あの子に作らせようと思うてな。

 どうせいずれ、レイと戦うつもりなんだろう」

 

くっくっくっと笑っていた。

 

「ありがとうよ、トラアさん。

 完成するまでこのキャスティロンで鍛練させてもらうさ」

 

そこで思い出したように

 

「こいつのお代はいくらになるんだ?」

 

値段も聞かずに話を進めてしまったことに今更気付いた。

ライガンもすっかり失念していたらしく、

「うぅむ」と唸っている、この店は高いのかもしれない。

だが何故か上機嫌なトラアは

 

「5万メセタでいいよ。

 実は最近、大入りの発注が入ったのさ。

 懐がほくほくだからな!」

 

あまりに安すぎる価格。

余程嬉しいのか高笑いをする。

訳が分からず顔を見合わせる二人だったが

 

「店長、オレの弓はできているか?」

 

そこへ他のアークスが入ってきた。

ウェズは誰だろうかと思って見ると

 

「……あれ、イオじゃねーか」

 

アザナミからブレイバーの指導を受けた、

自分のもう一人の新米アークスだった。

 

「ウェズ?

 こんなところで会う偶然もあるんだな」

 

青いショートカットヘアーに、

デューマンである証の

2本の角と左右色の違う瞳……オッドアイ。

ぴっちりとした戦闘服エーデルゼリンを好んで着ており、

ぶっきらぼうの口調とボーイッシュに姿が印象的な少女だ。

ウェズのカタナとは違い、彼女は弓を使う。

けれどこう見えてストイックな少女で、

日々の鍛練を怠らず、

いつも一人でクエストに行き腕を磨いている。

実はウェズは同じ師を持つとはいえ、

あまり接点はなく、別段に仲が良いわけではない。

 

「おお、お嬢さんか。

 できておるぞ、お前さんのためだけの弓がな」

 

トラアが用意していたのかすぐに取り出してくる。

それはクワドラプトをベースにした弓らしいが、

羽根のようなパーツがついていたり、

全体的にシャープにはなったけれど

それでいて力強い印象を持つフォルム……。

 

「これが、センパイとオレが作った弓……」

 

彼女は嬉しさを隠しきれない様子で受け取り、掲げる。

 

「エーデルイーオー。

 あいつとお前さんの愛の結晶だな。

 やれやれ、本職より完成度の高い設計図を作られると

 ワシらも商売あがったりだとあいつに伝えてくれんか」

 

「店主、あっ、愛とか言うなよ、恥ずかしいだろ!

 そ、それにオレとセンパイはそんな関係じゃない!」

 

先ほどから出ている「センパイ」とは誰のことなのだろうか。

 

「ところでセンパイの武器はまだできていないのか?」

 

「無茶を言うな。

 あんな規格外で複雑すぎる化け物そう簡単にはできん。

 もうしばらく待てと伝えておいてくれ」

 

そこでトラアは話題についていけなかった

ライガンとウェズを見て、ニヤリと笑う。

 

「そのお嬢さんに作ってやった

 『エーデルイーオー』が強化費とカスタム費含めて500万メセタ」

 

隅に置かれた何かの部品を指さし、

 

「で、その『センパイ』の特注品の武器

 『レッドゼファー』は3500万。

 お嬢さんの分も含めて既に一括で支払い済みだ」

 

さすがに耳を疑った。

 

「あー……そりゃ、俺の武器とか小銭ですらないな」

 

「うむ……なんだか俺らが恥ずかしくなってしまうな」

 

二人は揃って複雑な表情を浮かべる。

 

「オレ、センパイを探して礼を言ってくる!

 店主、エーデルイーオー作ってくれてありがとな!」

 

そんな二人など目にも入らないようで、

キラキラした表情で店から出て行った。

スノーフレークとは比べ物にならない上客を

トラアは満面の笑みで見送っていった。

 

レイとの戦いで強くなろうと決意したウェズだったが、

既に済む世界が違う同期を姿を見せつけられて、

ちょっぴり挫けそうになったのは、秘密である。

 

手にしたキャスティロンを握りしめる。

 

「負けないぜ……」

 

その言葉には切なさが隠しきれていなかった。


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