スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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表紙を描いてくれたRimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html


016.「どうしようもなく反吐が出る」

「レシア、裏からも来るぞ!」

 

「わかっています!」

 

惑星アムドゥスキアは最近、

ダーカー発生頻度が高いとは聞いたが……

 

「バータ!」

 

レシアのタリスから放たれた氷の塊は

地面を這うように突き進み、

龍族の足元を凍らせていく。

 

「悪く思うなよ……!」

 

すかさず接近したウェズが

足が凍って動けなくなった龍族を

浸食核ごと体を切り裂いていく。

 

「ォォォォォォ!」

 

断末魔をあげて3体の龍族が地に沈む。

 

「良い気分じゃないな……」

 

ウェズが自分が倒した龍族を見下ろす。

 

彼らはディーニアンと呼ばれる原住民だ。

薄い青色の鱗に身を包んでおり、

まるで人のように二足歩行をしている。

ドラゴン、というよりリザード、

といった言葉の方が容姿を表現するのに適している。

アークスと円滑な意思疎通はできないが、

彼ら同士で会話をしていることは確認しており、

そして一部のアークスが

同時翻訳で相手と会話できる術を開発したらしい。

 

つまり、ダーカーで浸食して理性を失って

今はまるで獣のように襲ってきているが、

彼らは人と同じ知的生命体なのだ。

武器を使い、テクニックに似たモノも使える。

 

それを倒すというのは精神的に辛いのもあるし、

なにより自分たちも

ダーカー因子を浄化する術がなかったら……

そう想像すると、ぞっとしない。

 

「聞いていたよりも、かなり数が多いですね……」

 

痛ましそうに死体を見ていたレシアが呟く。

 

「ああ、ライガンを待てば良かったかもしれないな。

 あいつの槍の範囲攻撃はここでは頼もしい」

 

ウェズも頷く。

 

「とりあえず様子見にしましょう。

 範囲を広げるのはライガンと合流してからです」

 

「そうだな」

 

そこで今更気付いたように相方の武器を見る。

 

「レシア、そのローザクレイン……

 もう羽、それだけしかないのか?」

 

「ええ……ちょっと酷使しすぎたかもしれません。

 この前のロックベアとファングバンサーで減りましたから」

 

タリスというのは種類によって装填数が違う。

メタルソリドムのように20枚ほど入ってるのもあるし、

オンミョウキカミのように対になった1組しかないものもある。

 

使い捨てというわけではないが、

それぞれに特徴があるのだ。

なにせ投擲武器である。

破損や喪失の多い武器ともいえるカテゴリー。

 

その中でローザクレインは7枚の羽のタリス。

けれどレシアの持つのは最後の1枚になっていた。

 

「新しいのを買わないといけないですね……」

 

「これが終わったらショップに行こうぜ。

 俺のシガルガも……アザナミさんがくれたカタナだけど、

 そろそろ変えてもいいかもしれねーし」

 

ほんの少しではあるが、

二人ともフォトンの練度は高まっている。

武器もそれにあわせて新調していく必要があるのだ。

 

そんな話をしてはいたが、

一応2人とも新人とはいえアークス、

周囲に対して警戒をしながらだったはず……だった。

 

けれど、彼女の接近にはまるで気付かなかった。

 

「ふん……くだらない」

 

突然、背後から聞こえてきた声に

ウェズとレシアは弾かれたように振り返る。

 

「近くにアークスがいるから見に来てみれば……

 観光に来ていた見習いか」

 

心底馬鹿にするような口調。

反射的にウェズは叫んでいた。

 

「んだと!」

 

そこにいたのは、

 

「お前たちのような遊び気分な『半端モノ』が

 こうしてへらへらしているが……

 私は、どうしようもなく反吐が出る」

 

黒い礼服に身を包んだ、黒髪の剣士だった。


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