スノーフレーク   作:テオ_ドラ

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はい、久々の更新ですいません。
数週間に一度でこの文量、気長にお願いします。
あ、続編となるスノーフレークⅡにも表紙がつきましたので、
ぜひⅡもあわせてよろしくお願いしますね。
スノーフレークⅡ表紙

【挿絵表示】

https://novel.syosetu.org/75791/


108.「……すぐ楽にしてやる」

惑星ナベリウスの凍土エリアは

常に氷点下であるがために雪が溶けることはない。

だがその雪はある程度になると「消える」。

それが何故なのか、

アークスの間でも不思議に思われていたが、

それはダークファルス【巨躯】のせいだったことがわかった。

つまり今までは「謎」だと思われていたことも、

もしかしたらアークス本部が「隠している」可能性がある。

 

何を信じればいいのか。

誰が味方なのか。

 

みな、口には出さないものの

少なからずそのことを思っているだろう。

 

「タキオン、これだけは聞かせてくれ」

 

先ほどまでは晴れていたのだが、

少しずつ雪が吹雪いてきた。

フォトンで身を守るアークスが

寒さで体力が失われることはないが、

視界が悪くなるのは厄介だった。

相手は原生種でもダーカーでもない、

未知の存在なのだから。

 

「俺たちは、お前を信じていいのか?」

 

正直に言うと、この話は断った方が良かった。

何せデーターベースにもない敵……

それどころか味方であるはずの

アークスの研究機関から生まれた存在なのだ。

関わり合えば合うほど、

「知らなければ良かったこと」に近づく可能性がある。

 

前を歩くタキオンはしばらく黙っていたが、

 

「今は、信じてくれとしか言えない」

 

重苦しくそう告げた。

ウェズは「そうか」と小さく答え

 

「なら俺はお前を信じるぜ」

 

メンバーたちに頷いてみせた。

それがマスターの決定であるならば、と

レシアとメディリス、ケーラも頷く。

 

「……これ、多分ついさっきまで戦ってた跡だね」

 

メディリスが脇に捨てられたミクダの残骸を見て呟く。

 

「わかるのかい?」

 

ケーラの問いかけに彼女は肯定する。

 

「ダーカー因子がまだ残ってるから。

 多分、近い……」

 

レンジャーである彼女でしかわからない感覚だ。

 

「……?」

 

そこでレシアが何かに気付いたように顔をあげる。

 

「……なにかきます!」

 

その言葉の瞬間、

ウェズとタキオンは女性陣を抱えて物陰に飛び込んだ。

 

すると先ほどまでいた場所を

えぐりとるように強烈なレーザーが薙いでいった。

赤と黒の螺旋のようなレーザーで、

それはダーカー因子に似ているようで違う攻撃。

 

「……来たか!」

 

タキオンが叫ぶ。

物陰から顔を出すと、

ぽっかりと穴の開いた壁が見える。

どうやら氷河の壁の向こうから

貫通するように攻撃してきたらしい。

 

「――ァァァァァァァァァ!」

 

甲高い鳴き声が響き渡る。

 

「……こいつは、凶悪な面だな」

 

ウェズが息をのむ。

それもそのはず、

壁の向こうからのっそりのっそり歩いてきたのは

ヴォルドラゴンと同じか、あるいはそれ以上の大きさの龍。

2足歩行で、不自然なまでに痩せ細った歪な姿。

爪だけは異様に長く、ギョロりとした目。

 

まるで、ゾンビのような姿。

醜い、まさに生命の成れの果て。

 

「……!」

 

タキオンが飛び出した。

キャストらしい高い機動力で駆ける。

ファイターである彼が背中から取り出したのは、

鋭い棘が重なり合いできた複雑なフォルムの双小剣。

 

「――骸刃ハドレット」

 

それがその武器の名前らしい。

かなり独特なフォルムをしているのだが、

それは……何故か目の前にいる造龍とよく似ている。

歪な姿とそれでいて攻撃的なデザイン。

血のような深紅の軌道を描きながら、

クロームドラゴンへと切りかかる。

 

クロームドラゴンが迫るタキオンを

鋭い爪で薙ぎ払うが彼は器用に空中で軌道を変えて

 

「オウルケストラー!」

 

右腕を滅多切りにしていく。

左腕で薙ぎ払おうとするが

 

「バックハンドスマッシュ!」

 

すかさず接近したケーラがその手をパオネリアンの甲で殴打する。

剛拳の強烈な一撃に弾かれた腕を

 

「サクラエンド!」

 

ウェズがスサノグレンで十字に斬りつけた。

 

「離れてください!」

 

レシアの警句。

弾かれたように近接職の三人は距離を空ける。

遅れて造龍は両手を広げて雄叫びをあげた。

 

「――ォォォォォォォォォォォ!」

 

ハウリングのように周囲に波動を撒き散らす。

ただの咆哮にしか見えないが、

周囲にはまるでかまいたちが発生したかのように

綺麗な雪原のキャンパスに無数の傷が発生して雪が舞う。

離れるのが遅かったならば巻き込まれていただろう。

 

「スニークショット!」

 

物陰からメディリスがクロームドラゴンの頭を狙う。

赤のライフルから放たれたフォトンの弾丸が装甲を削っていく。

だが厚い皮膚は貫くことはできない。

 

「フォイエ!」

 

レシアのタリスから炎球を放つが、

振り回された鋭角的な尻尾にかき消される。

 

「……暴れ馬ならぬ、暴れ龍ってやつだね」

 

冷や汗をぬぐいながらケーラが乾いた笑みを浮かべる。

怒り狂ったように暴れまわるその姿は

理性という言葉がまるで感じられない。

原生種でも龍族でもなく、

そしてダーカーですらないその動き。

不気味としか言いようがない。

 

「……すぐ楽にしてやる」

 

タキオンが決意を込めた声が呟く。

果たして彼は造龍とどんな関係があるというのか。

 

そこへ向こうからダーカーの群れが歩いてくる。

ガウォンダにミクダ。

足の遅い連中たちがのそのそとクロームドラゴンへと向かっていくが……

 

「まずい……!」

 

クロームドラゴンが何をしようか気付いたタキオンが叫ぶ。

だが造龍は俊敏な動きでダーカーたちに飛びかかり

 

「――ゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

そして手当たり次第に喰い始めた。

食べているはずなのに、怨嗟の籠ったかのように

憎々しげにダーカーをかみ砕いて行く。

周囲には鮮血のようにダーカー因子と、

そして肉が飛び散っていく。

 

「う……」

 

そのあまりにグロテスクな食べ方に、

レシアが口元を押さえる。

 

「……うわぁ」

 

メディリスも見ないように顔をそむけていた。

近接職の3人は視線を逸らすわけにもいかず、

その様を見ていたが

 

「……こいつは、まずいな」

 

ダーカーを喰らう、

それはつまりダーカー因子を取り込むということ。

どのような存在であれダーカー因子は害になる。

それを一気に取り込むとどうなるのか……

 

 

「ォォォォォォ!!」

 

果たして体の中でどのようにダーカー因子を処理したのか。

傷が塞がり、そして目が異様に爛々と赤く輝く。

 

そして先ほどまではない翼と、

腕の皮膚を突き破って現れた更になる棘。

そして不自然なまでに膨れた腹……

もはや、悪魔と言わざる得ない。

 

ギロリと、造龍がアークスたちを見下ろす。

 

どうやら戦いは一筋縄ではいかないようだった。




なお今回は見直しをしていないので、誤字脱字が多い可能性が高いです

EP1.5表紙(作:タキオンさん)

【挿絵表示】

EP1表紙

【挿絵表示】
(作:リミさん)
RimiQwiさんのページはこちら
http://www.pixiv.net/member.php?id=10995711

登場人物紹介はこちら
http://novel.syosetu.org/61702/1.html

ファンタシースターオンライン2、通称「PSO2」を舞台にしたオリジナルの話です。
本来のストーリーモードの主人公とは違った視点で、
PSO2の世界を冒険していくという内容となります。
EP1が終わり、EP1.5は EP2との間の時間軸となります。

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