ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

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販売初日に買って何周かした後に執筆。

なんか原作はあと数巻で終わりそう……でも、アニメの放送スタート! 自分は仕事の関係上で録画視聴組です。


作戦61 イかれた伝統芸能

ノヴォシビルスク中心部の国立オペラ・バレエ劇場を望むホテル内のホールとも言える場所。

 

重厚なマホガニーの壁材に金色の柱で高級感を演出し、ふかふかとした感触の真っ赤な絨毯に光を落とすウエディングケーキを逆さにした様なシャンデリアがTHE パーティー会場感を演出する。

 

ホールを歩く人物も正装をピシッとした隙の無い着こなしだった。そんな場所に場違いな奴が居た。

 

「似合わない……」

 

剣襟のシャツに蝶ネクタイ、肩章付きの濃青色のジャケットと中々に仰々しい出で立ちだが、それを着るのは十代半ばの少年である鳴谷慧。だが、サイズも肩幅や袖丈など所々がサイズが大きいのもあってか滑稽さしか無い格好でもあった。

 

文字通りの意味で服に着られている。のだが……

 

「慧、似合っている」

 

見る者が見れば、そんな事も言う。のだが……襟ぐりが余った故に蝶ネクタイがズレているのに加えて、ジャケットもブカブカ、スカートに至っては地面を掃くかの様に垂れ下がっている。

 

完全に着られているとかそんな状況じゃない。それでもこれを着なくてはならなかったのは慧の相棒であるグリペンだった。

 

「そりゃ、お前よりはな」

 

2人が今着るのは航空自衛隊第二種礼装と呼ばれる式典や外交の場で多く見れられる特殊で特別な制服だ。が、そんな特殊で特別な物をお子様サイズで作る筈が無い。故に2人は服に着られるサイズの物を無理に着ている。

 

「まったく、俺たちに合う自衛隊の礼装なんてないのに……」

 

慧はコレを着ろと言った人物の顔を思い出しながら、グリペンを手招きで呼び寄せて、グリペンのウエストの上げてからベルトで締め直して、最悪でも床に擦らない様にしてやる慧に声を掛ける人物が居た。

 

「何というかその……お気の毒ですね」

 

声を掛けたのは慣れない雰囲気、と言うよりも久々な雰囲気故に見知った人物に声を掛けたは良いのだが、声を掛けた人物の状況に何も用が無い状態でするべき行動で無かったなと自覚して、自虐的な苦笑いを浮かべたる詩鞍だった。

 

「ああ、その通り……だ……よ……」

 

慧が固まった。と言うよりも詩鞍の格好に見惚れていた。

 

上半身は白の生地に三角形の模様を合わせて花に見せた黒色の模様、下半身には群青色の生地に白と黒の矢羽根模様が入った袴。

それをキッチリと礼儀作法を破らない様に着たザ・日本人の御令嬢な顔立ちに慧の反応を察してた柔らかく微笑む詩鞍の格好は正しく服を着こなしている。

 

「心も腕もお兄様クラスになってから出直して下さい。まぁ、なっても即座に断りですが」

 

見惚れた慧の背後から投げられた言葉に振り向いた慧はまたも見惚れて固まる。

 

上半身は黒の生地に三角形の模様を合わせて花に見せた白色の模様、下半身には群青色の生地に白と黒の矢羽根模様が入った袴。コレを詩鞍同様にキッチリと着こなした上にほぼ瓜二つな外見は詩苑だ。

 

好みの色が真逆であるが故に服装も真逆だが、やはり仲のいい双子の姉妹なのか、自分の服に相手のパーソナルカラーを使いつつも想い人のパーソナルカラーを同じ面積だけ使っている。

そんな和装に身を包む2人に慧はやはり姉妹なのと2人の性格に納得すると同時に勝手に内心で慧は頷く。

 

「服に着せられてますね。まぁ、慧さんには丁度良いでしょう」

 

そう言ってシャンパングラスに注がれたジンジャーエールに口を付けるのは独飛の参謀官にして現実主義者、隙あらばパイロットを奪いに掛かるRF-4EJ-ANM ファントムⅡのアニマ、ファントムだった。

 

「お前……」

 

ファントムの言い方に慧が口を開こうとするが直ぐにその口が開いたまま閉じる事がを放棄した。何故ならファントムの格好は今のグリペンが着る女性用航空自衛隊第二種礼装なのだが、そのサイズはまさにピッタリの一言だった。

 

「ああ、コレですか? 団司令とMS社のファントムライダー達から連名で送られたレプリカですよ。微妙に生地が違うんですけど」

 

見た目は全く一緒で、肩章などの官給品にしか存在しないものなどは恐らくは正規品から剥いだ物を使っている。違いに気付くとすれば、正規品を多く来た現職隊員か正規品を触った事がある者だけだろう。

 

「そんなの着ていいんですか?」

 

「お二人よりはマシです」

 

詩鞍の言葉に流し目で慧とグリペンを見ながらファントムが告げると見られた2人が目に見えてうっと身体をビクつかせる。

 

「それに各国のお偉い方も私達を見に来ています。そんな不恰好を全員がする訳には行きません」

 

この式典はゲート破壊作戦の祝勝会でもあるが、同時にアニマの博覧会の様な側面と共に外交の場でもある。綺麗に飾り立てる事も立派な外交手段である。

 

「そう考えると民間企業のMS社が羨ましいですね」

 

恨めしげな視線を片宮姉妹にファントムは投げる。

 

全員が礼装とも言うべき服装に身を包んでいるのも、各国の要人が参加するゲート破壊作戦の祝勝会の様な物であるからだが、MS社は会社規模で厳密に設定しているのは敵味方の識別と言う意図もある戦闘服のみ。故にこう言った式典では各自で用意した私服を着用する。無論ながら一般常識として礼装と呼ばれる物を着用する。

 

「報告書も出来てますし、私達は私達で楽しみましょう。

 

片宮姉妹は小難しい話はバーフォードの様な佐官の仕事だと割り切った上で、既に専用回線を使って報告書を書き上げた一行は気兼ねなく祝勝会としてこのパーティーを楽しむつもりでは無い。

 

華やかに自分を飾り立てられる口実が此処にある。ならば、これを機にバトラにアプローチを掛ける気満々の片宮姉妹の意図にファントムも当然の権利の如く気付いている。故にファントムも規定の範囲内で飾り立てて挑むつもりだった、のだが、肝心のバトラの姿が無かった。

 

「? MS社って一応設定はしてるってさっき……」

 

慧が今更ながらに片宮姉妹の格好と着替え中にバトラから聞いた『MS社も正装や礼装を知らない少年・少女兵用に一応は設定している』という言葉に矛盾がある事に気付いた。

 

これはバトラが嘘を言ったのでは無く、厳密に決めていないだけでスーツやドレスなどで美的センス壊滅的な奴やそもそもの話でこの様な場所とは無縁だった社員への会社側からの可能な限りでの温情なのだが、そのデザインが完全にアレである。

 

男性デザインは学ランとスーツを足して2で割った様なデザインの服に社ロゴと部隊章のパッチを縫い付けたデザインと手抜き感が満載だ。

 

対して女性デザインは胸元から鳩尾まで開いた様なデザインに腹部には飾りのダブルボタンを繋げる短いベルトを取り入れた長袖の上着。それにくっ付く様にスカートが腰から膝上までと膝下が少し青を強くしてツートンカラーにした上でボタンを細い銀のチェーンで繋げて止める構造で丈が足首まである上着をしっかりと羽織る。

 

胸元が開いているデザインだが、チェーンで繋げた位置が良いのか、下品さが長めの上着を着る軍服風ワンピースである。完全に女性用デザインの作成費で男性用デザイン費が搾り取られている。

 

「彼処ですが、他人の振りを」

 

詩苑の言葉にファントムが指で示された方向に顔を向けるとその意味を理解した。

 

「明日も勤務だろうが!!」

 

そう言って、いつぞやの作戦で協力したMig-31のみで編成されたデネブ隊のパイロットに対して、私物の英国の受章式兼パーティーで着た軍服風スーツと言う服に身を包んだバトラがバックドロップを掛けていた。しかも、コレが最後なのか手を離された人物を除けば既に7人がMS社の男性用正装に身を包んだ男が倒れている。

 

「流石に私達も止められないわ」

 

デネブ隊所属で服装はMS社の軍服風ワンピースの制服を着込んだ8人のデネブ隊女性パイロット達もコレには苦笑いだった。

 

「流石にシャンパンを全員で24本、短時間で空にしてたらね」

 

1人頭3本の計算である。この8人は普段からワイルドターキーやウォッカと言った辛口でアルコール度数の高い酒を愛飲し、一番好きなアルコール飲料がMig-29かMig-31の冷却用アルコールとか言う化け物である。シャンパン程度で酔う奴らでは無いが、酔わないだけで体内のアルコール量は半端ない事になる。

 

故に飲酒飛行は頂けないからと1本を開けた隙に忠告したバトラなのだが、要人(元パイロット)と話込んだ1時間で更に1人づつ2本も開けた故にキレたバトラの怒りのバックドロップが炸裂した。

 

「いや、だとしてもよ。此処で、やる?」

 

デネブ隊の女性パイロットの言葉も最もである。

流石にプロの人間として褒められた行為で無いが、パーティー会場で勝ってを知った相手であろうと暴力沙汰は宜しくない。だが、バトラにそんなことは関係無い。

 

命令で参加せざるを得ないが、本音は出来るなら早く帰りたい。ならば、暴力沙汰でも起こして追い出される方がずっと楽で早いと判断している故にバトラの自制心が仕事を放棄する。

 

「そう言えば、ベルクト……」

 

詩苑の疑問を呈する言葉にファントムがジンジャーエールの入ったシャンパングラスの優雅に傾ける事で喉を潤すとその喉から言葉を吐き出した。

 

「ああ、それならゲート脱出時にパクファに纏わせるスライスなんですが、ベルクトから貰ったスライスを使ったんです」

 

「? そんな暇ありましたっけ?」

 

意外な言葉に詩苑の言葉が飛ぶとファントムは元々からベルクトから一枚余分に譲渡されていた事を話す。

 

T-50、Su-57とSu-47は同じスホーイ設計局の機体。前者は別の場所で製造されるが生みの親は同じ。しかも、初飛行などを考えればベルクトの方が姉、アニマ・ドーター基準でもベルクトの方が早い事もあってか姉として妹を助けたい言う思いがあり、予め用意していたスライスの予備をファントム経由でパクファに渡していた。

 

それを聞いた詩鞍が口を開いた。

 

「その影響で体調不良ですか……いいお姉さんですね。まぁ、考慮はしませんが」

 

その言葉にファントムは半分は同意する。

 

話を聞けば妹思いの良い姉なのだが、バトラ争奪戦は恋の戦争。恋の戦争においてはあらゆる行為が正当化されるとは誰に談だったか。それが不可抗力だったとしても戦線に参加出来ない者を気にかける事は無いし、戦線に参加していても気に掛けない。

 

恋に恋する事を辞めた恋する乙女はミーティアミサイルでも撃墜は出来ない。

 

全くの余談だが、片宮姉妹にとってはどっちが姉か妹は重要では無い。2人の人生はバトラに助けられ、後ろを飛ぶと決めた日が始まりであり、それより前の人生は無い物扱いだからだ。

 

「そうですけど……そろそろ止めませんか? デネブ隊の隊長にバトラさんがローリングクレイドルを始めました」

 

「それは死人が出かねない奴ですよ!」

 

止めに入ろうとするが流石に片宮姉妹の火力では止められない。そう判断したファントムが行動を起こす。

 

「仕方ないですね。此処は日本の伝統芸能で……ビール瓶は、無いみたいですね」

 

ファントムが代わりに握ったのはシャンパンの空き瓶だった。それを見た、ロシアのアニマ、ジュラーヴリクが何をしているんだと問い質した瞬間にファントムは満開の笑みを浮かべて振り向き、上品な会釈を行うとゆっくりとバトラの方へ歩き始める。

 

「知らないんですか? 日本ではムカつく奴の頭をビール瓶で殴ると言う伝統芸能があるんです」

 

そしてバトラが背後の存在に気付いて振り返った瞬間にファントムが何の躊躇いも無くシャンパン瓶を振り下ろし、バトラを沈黙させる。

 

「イかれた伝統芸能だな!!」

 

ジュラーヴリクの内心でこんな伝統芸能がある国に自分の末の妹を送らなければならないのかと頭を抱えた。




もうすぐエスコンも発売しますね。いつかは二次創作書いている人たちをメッセージで誘って協力プレイしたい。え? 対戦? ターキーにされるからNGで。

それとカスタムキャストと言うアプリを見つけて、制作した片宮姉妹を掲載します。バトラはおいおいね。
ベルクトは余りの再現率低さに伏せます。

まずは詩苑から。


【挿絵表示】


そして詩鞍です。


【挿絵表示】


2人とも服装は私服。つまりはオフの日です。首輪ですが、今までの自分との決別、青い腕輪と足輪はバトラに恋してますを口外アピールです。

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