ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

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大変お待たせしました。56話です。

感想見直すと皆さんXFAー27がお好きな様で結構ですね。
色々とあると思いますが私自身も迷った末のサイコロ選定です。可変翼云々は後付けです。




作戦56 急襲を凌いで……

フリゲート艦の垂直発射装置(VLS)から火の矢が撃ち出される。艦対空ミサイルのそれだった。

 

放たれたミサイルは炎と共に白い煙を吐き出しながら向きを変えて、重力のある地球の中にも関わらず、浮いている岩石群へ飛んで行く。

 

フリゲート艦のミサイルが岩石に突き刺さる直前には戦場に到着した戦闘機群の主翼や胴体に下げられたミサイルがリリースされる。

 

ミサイル群は青空を背景に白い尾を引きながら真っ直ぐに岩石群へと向かい、フリゲート艦のミサイルに次いで戦闘機の空対空ミサイルが岩石群に突き刺さる。

 

宙に浮かぶ岩石の一部は砕け散り、一部は大きさを小さくするが、砕け散った分の岩石と同量の質量を持っているだろう岩石が空間の揺らぎの中から現れる。

第2波、第3波と同じ事を行うが結果は変わらない。

 

「弾薬の無駄」

「金の無駄」

「燃料の無駄」

 

それを大型のタブレットPCの画面越しに見ていた男3人が漏らす。

 

最初に口を開いたのはサイファーと呼ばれるエースパイロットで次いで声を出したのはサイファーの唯一無二の相棒であるピクシー、そしてこの2人から新しい機体についてのノウハウを学びながら機種転換訓練を終えたばかりなのか薄っらと汗を流しているバトラだった。

 

「この後の被害を知っていますか?」

 

そんな男達に声を掛ける1人の少女。

独立飛行隊が抱えるアニマの1人、ファントムだった。

 

「出現したザイの2機編隊にフリゲート2隻が撃沈寸前の大破、2機の戦闘機と1機のAJZ戦闘機が撃墜されました。幸いにもパイロットは無事だそうです。これでもAJZ戦闘機が居たからこその損害です」

「それでも酷いな」

「辺境に出現したのが痛い」

 

ファントムの言葉にサイファーは漏れ出てしまったと言う風に声を発したのとピクシーが全員に見える様にタブレットを傾け、地図アプリとPMU経緯で流れた動画ファイルを見せる。

 

似たよ様な浮遊岩石群は二線級戦力が中心の後方や辺境基地ばかりに出現した事を示す赤点とその赤点をタップするとその場所に基地の画像が再生され、突然の天変地異と奇襲で対応が遅れた部隊が映し出され、同時に飛び立つどころか地上で破壊される戦闘機や、パイロットが乗り込む間も無く格納庫ごと破壊される機体、僅かに飛び立てた機体もなんとか奮戦するが撃破される画像が流れ、再生した場所では前線に比較的近かった事からか前線から急行した一線級部隊により撃墜されるザイが映った。

 

「これで幸いなのはザイを運べるゲートが少数派な事です。ニュージーランドやグリーンランドなどのゲートは怪奇現象だけで済んでいます」

「それは良かった……と言うべきでしょうか?」

 

ファントムの言葉を聞いたベルクトが零した言葉にバトラが軽く頭を小突く。

 

「良い訳あるか! この事が原因で俺が大変な事に成りかねないんだぞ!」

「タイミングが良すぎるが故にタイミングが悪すぎたな」

「PJ曰くあの手の彼奴らは放って置いたらやばいらしい」

 

此処で思い出して欲しいのは今回のベトナム訪問の理由だ。ザイのワープゲート出現によりてんやわんやしているが目的はロシア側の現場戦力との顔合わせで所要時間は1日程だった筈だったのだが、ベトナムで朝を迎えてしまった。

ベルクトと同じヴィラで一夜を過ごしたと言う他人から見れば喜ばしい状態であるが、バトラにとっては死刑執行へのカードにもなり兼ねない状態でだ。

 

「バレたら殺されかねないですね(まぁ、多分ですが一夜限りですが2人の部屋に監禁で済まされるでしょうけど)」

「(それは監禁だけで済まされない状況です)」

「(!? 直接脳内に!!)」

 

ベルクトが自分が原因にも関わらずそんな事を呟くとファントムが謎原理でテレパシーでベルクトだけに突っ込む。

小松にいるアンタレス隊のあの2人に今回の事が知れれば殺される事は無いだろうが、バトラの身は五体満足では済まされない事は確かだ。

 

「本社と八代通にベトナム政府を黙らせて貰わないと動けない」

 

バトラが生春巻きを口に放り込む直前に呟いて話を変える。臭い物には蓋をしろと言う訳では無いが、予測可能回避不可な案件はその時まで忘れる事が1番だ。

ベルクトもバトラの言葉に込められた表の意味。小松防衛に早急に戻らなければならないと言う事に関しては同意しており、フォーを飲み込みながら頷き、ファントムも口や動作にはしないが同意しながら紅茶を口に付ける。

 

ここで遅まきながらにベトナムに滞在している理由を話そう。

 

最初は西側諸国と東側諸国に分かれている国同士の面会故に都合の良い場所としてベトナムを選んだ。そこにザイがワープゲートを繋げて強襲し、量産型AJZを駆るPMC部隊が応戦した。しかしながら結果は強襲に加えて練度不足と機材の性能不足が露呈。

 

これによりベトナム政府は価格の安いPMC部隊での防衛に不信感を抱き、せめてより強い部隊の派遣が決定するまで独飛のファントムとグリペンを手放すまいと八代通と交渉。MS社も八代通の護衛と小町防衛に派遣しているアンタレス隊を金の払えないベトナム政府では無く、金の払える日本政府の任地に返さなければならない為に交渉している。

 

そして八代通が戻れない以上は否応無く護衛である独飛とアンタレス隊は足止めを喰う事になる。

 

そして同時にバトラのアレやコレやソレが危険な状態となるのだが、そんな事は関係ないと言わんばかりに慧の口が開いた。

 

「あの……サイファーさんとピクシーさんはどう思いますか?」

 

慧の言葉に呼ばれた2人は首を傾げる動作をするとファントムが補足説明を行う。

 

「慧さんの引っ掛かりは何故に今頃になってこんな事をしたのかと言う意味ですね。確かに慧さんがザイの総司令なら一も二もなく今回の様な戦術を取るからですね」

 

ファントムの言葉にサイファーが答える。

 

「俺はソルジャーエースじゃないからな。何とも言えないが……俺が思うに使わなかったのでは無く、使えなかったと言う意見だな。物資とか技術面とか? 相棒は?」

「俺か? 俺は使いたくないだな。核と同じだ。有効な手段であるが、使うにはあまりにも課題が多いから使わなかったと言う感じだな。これしか無い状況になったのか?」

 

バトラが2人の話を聞いてファントムに振るとファントムも答える。

 

「虚心に事実だけを考察すれば別の景色が見えてくる筈です。結論ありきで考えるからおかしな事になるんですよ」

「では、我らが参謀はどうお考えかな?」

 

バトラの言葉にファントムが紅茶で喉を潤すと意見が被るのは癪ですがと前置きを置いてから語り始める。

 

「私もピクシーさんと同じ使わなかったと言う意見です。空間を捻じ曲げる訳ですから、因果律を破るのと同意義です。厄介なパラドックスは当然ながら起こるでしょう。そうでないにしてもこれだけの空間異常です。地球環境への影響は計り知れないでしょう?」

「つまりはこんなハイリスクハイリターンは差し迫った状況でないと使わないと?」

 

バトラの言葉にファントムが無言で頷く。

独飛とMS社はこれまで多くのザイが建築した前線基地を最低限以下の偵察行動で破壊して来た。と言うのもグリペンが持っていた、思い出したのは今までの時間遡行で手に入れて来たザイの行動パターンだ。

 

ザイとしては相手が知り得ない筈の情報を持って奇襲を行って来た訳であり、今までに無い程にザイ側も圧迫されていると言うのが八代通やバーフォードを始めとする上層部は判断しており、今回の一件はある意味では今のザイが圧迫を受けている証拠でもある。

逆に言えば自分達の切り札に賞味期限があると言う訳でありそれに気付いた慧が立ち上がり掛けるが、バトラとファントムがわかっていると手で制する。

 

サイファーとピクシーはグリペンの思い出した情報を知らない人間だ。この情報も上層部の判断で公開する事になっており、不用意な情報公開は漏洩とみなすと言われている。

昨夜にわかった事だが、グリペンと慧はロシア機から協力を得る為にこの情報を漏らしてしまっているが、致し方なしとして簡単な説教で済ませている。

 

「? ん? んんん……」

「どうかしたのか?」

 

バトラが唸りだした事に慧が心配そうに話し掛ける。

 

「なぁ。敵さんは圧迫を受けてるんだよな?」

「そうですね」

 

ファントムが答えるとバトラは更に続けた。

 

「これは起死回生の手なんだよな」

「そう考えて良いと思います」

 

人類側の戦力は現在の一面に集中出来る状況故に何とかなっていると言っても良い状況だ。そんな中に二面目が出来れば忽ち人類側は存亡の危機に立たされる訳だが、バトラの懸念は別の場所にあり、それを確かめる為にベルクトが声を掛けたのを良い事に問い掛ける。

 

「お前がワープゲート作るなら何処に作る?」

「それは……首都や主要な基地の周辺……」

 

そこまで言ってベルクトが気付いた。

 

「こんな場所や海上じゃ無くて都市部に開いた方が絶対に効率的です。どうしてこんな場所に」

「それがわかれば……ファントム、どうした?」

 

ベルクトの軽い気持ちで出て来た言葉にファントムが息を呑む音が嫌に響くという程に大きかった所為かバトラが問い掛けるとバトラの手の中にあったタブレットを奪うと世界地図のアプリを開くと何かをブツブツと零しながら操作する。

 

操作が終わるとファントムが顔を上げる。ファントムの頬は紅潮した状態に加えて目がギラついた輝きを放ており、バトラは何かあると悟ると携帯端末を懐から取り出す。

 

相手の表情や言葉からある程度は察せなければ兵装士官など務まらない。

 

「南極上空に飛ばせる偵察機はありますか!」

「ミッドウェー基地の無人偵察機(UCAV)を飛ばす様にバーフォードに連絡する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<貴様も無茶を言うようになったな>>

 

ブリーフィングルームにバーフォードの声が響くとプレジェクターの画像が変わる。

晴天の空に白い大地。その間に幾つもの不規則な黒い点が不規則に並んでいる。

 

<<バトラとファントムの言う通りだな。南極上空に謎の浮遊群はあった。だが、なぜわかった?>>

<<知りませんよ。ただ、ファントムの要請ですから。無駄は無いだろうと信じてます>>

 

南極上空。そんな場所に浮遊岩石群が現れるとは予想していなかったバーフォードと八代通は驚きを隠せずにいた。

 

<<だが、グッジョブと言うべきだろうな。普通の手順でしていたら一月は掛かっていた。戦果分の支払いで事実上の30パーセント負担だな>>

 

無人偵察機と言えども直ぐに飛ばせる訳では無い。故にバトラはバーフォード経由でMS社の無人偵察機隊に依頼を出すと言う形で動かした事で大幅な時短に成功する。ただしここ最近の出費によりバトラの通帳から1番端の桁が消えた。それでも30パーセント負担だが、それでも8がギリギリで9に戻った程度だ。

 

金の話で盛り上がるMS社だが、ファントムの咳払いで雰囲気は元に戻る。

 

「プラトニックソリッドですよ」

 

ファントムの言葉でベルクトと八代通が察するとベルクトが分かりやすくする為にプレジェクターに繋がったPCを操作して画面を編集する。

 

すると地球を正十二面体がすっぽりと覆ってしまう。

これを見るとバトラも察して見せる。

 

「成る程な。確かにこれが分かれば未発見のゲートも割り出せる。この配置は言うならば……接着剤か」

 

バトラの言葉に慧が首を傾げるとバトラが適当な紙に点を2つ描く。

 

「こいつの最短ルートは?」

「簡単な問題だよな。点と点をくっつけるだけだ」

「正解だな。だが、こうやって丸めてくっつけた点だが手を離すと……」

 

慧の回答を聞いた後に紙を丸めて点と点を繋げたバトラだが、バトラの手が離れた瞬間に紙は元の平面に戻ってしまう。

 

「テープやノリが必要だが、何かをくっつけるなら磁石でも事足りるよな?」

 

わかるかとバトラが問い掛けた瞬間に慧でも言わんとする事がわかったと表情に浮かべるとバトラは頷いてから答える。

 

「ゲート1つ1つが磁石みたもので互いが互いに引っ張りあってゲートを維持している。そして空間を繋げる以上は相応のストレスがかかる。だからハニカム構造にしてストレスを逃がし易くしているんだ。逆に言えば、何処か1つが崩壊すれば全部崩壊する」

<<そうだな。で? あのゲートの破壊方法は?>>

 

バトラの言葉に通信機からバーフォードの声が聞こえるとバトラが大きく息を吐く。

 

「知る訳ねーだろが!」

<<「「「「威張るな!!」」」」>>

 

バトラの言葉にグリペン以外が突っ込み、ファントムに至っては頭をスリッパで叩き、ベルクトは脛に的確すぎる蹴りを放っており、バトラは頭と脚のダメージでのたうち回る。

 

「ちょっと思い出した……関係無いかもしれないけど……」

 

グリペンの言葉に慧が話してみろと告げるとグリペンは遠慮気に話し始める。

 

「アンフィジカルレイヤーを下れば瞬間移動が出来るって話を聞いた事がある」

「それはどんな話ですか?」

「一旦だけどレイヤーを下ってから上がれば見かけ上の距離を0にできるって話」

 

見かけ上の距離をゼロに出来る。これは実際のシャルル・ド・ゴールの中で経験した者も居るので驚く話で無いが、グリペンが更に話を続けると現在の状況とピッタリ過ぎる情報が次々に吐き出された事で通信機の向こう側のバーフォードとバトラ(未だに痛みでのたうち回っている)以外から非難が混ざった目線を投げられる。

 

目線のそれに気付いたグリペンは慌てて首を振ると運用は出来ないと言う情報を吐き出した事で慧が喰い付くとベルクトは更なる情報で、アンフィジカルレイヤーは一定以上の階層に下がるか一定時間以上滞在すると物質は分解されて概念そのものへと変わってしまう。

 

つまりはザイで無ければアンフィジカルレイヤーは浅い階層か短時間しか居られない為に短距離ワープしか出来ず、そうなれば出入り口となるゲートも大量に作る必要がある。

さらに面白い情報としては正多面体を使って応力を逃がし易くしても相当なエネルギーを供給しながら制御する為の重心となる場所がどうしても必要となると同時にその重心はとても脆く、崩壊すれば全てを道ずれに崩壊すると言う爆弾でもあると言う情報が紡ぎ出された。

 

「バッキャロー!!」

 

そしてグリペンが重心の情報を出し終えた瞬間に復活したバトラが後ろからグリペンにドロップキックを喰らわせ吹っ飛ばし、ファントムとバトラの追撃で触れる程度のキックをリンチよろしく喰らう。

 

「お前……なんでそんな事が出てこないんだよ! 似た状況に情報ならヒットするだろうが!」

「バトラさんの言う通りですよ。どんなインデキシングをしているんです、あり得ないでしょう!」

 

流石に不味いと

 

「しかもこのポンコツはしれっと弱点も知っちゃってるじゃないですか!」

「ファントム、やめてやってくれ! なんでも知ってる感じだけどこいつはポンコツなんだよ」

 

ファントムの突っ込みに慧が羽交い締めにしながら突っ込みに突っ込みで返す。

 

「お前の彼女だろ、早くなんとかしろよ!」

「このポンコツ具合はどうしようもありませんよ!」

 

バトラを羽交い締めにして引き剥がすベルクトが突っ込みを入れると八代通がベルクトからの情報は殆どが八代通は自分の姪に当たる人物からの情報とあってか、懐疑的な意見を放つがバーフォードの誰からの情報か確認の為に救出されたグリペンに問い掛ける。

 

「? 元はハルカ叔父さんの理論だって言ってた。ついでに馬鹿みたいな意見ばかり出してくるから度し難いって」

 

ついでに出てきた愚痴の内容にそれを聞き出す片棒を担いでしまったバーフォードがクライアントである八代通の機嫌を損ねたか冷や汗を流しているが、八代通は自分の案なのかと自分の事ながら頭を抱えていた。

 

「荒唐無稽なプランでありますが、少なくとも現状の中では最も確実かつ唯一の手段でしょう」

「だが、どうするつもりだ? 深層のアンフィジカルレイヤーはザイだけが移動出来る領域だろう?」

 

アンフィジカルレイヤーに物質を叩き込めばたちまち概念に戻されてしまう為になんの対策も無しに突っ込めば漏れ無く犬死が待っている。それに問題はそこだけでは無い。

 

「航続距離は大丈夫なんでしょうか? 私やバトラさん、ファントムの機体なら間に合うかもしれませんが、グリペンの航続距離では……」

 

そう航続距離的な問題だった。だが、ファントムはそれも加味しての発言だと胸を張る。

 

「アンフィジカルレイヤーにある時空の歪みを経由すれば距離を短縮出来ます。感知の方法は既に経験済みです。侵入については……お父様が既に作っている筈では?」

 

ファントムからのキラーパスに八代通がなんで知ってんだよと愚痴を零しながらではあるがいつもの不敵なペースを取り戻した。

 

「パクファ救出用の案だったんだが、色々とあったもんだから捨て置いたんだが、今の情報があれば充分に検証の土台に乗せられる」

 

何をするつもりだとバトラが警戒する前で八代通はパイロットとアニマ達の顔を巡らせるとバトラとベルクトとファントムが並び立っている場所に顔が来た瞬間に不敵で不気味な笑みを口角を持ち上げて作る。

 

「アレをな、もう一度使ってみようってな」

 

八代通のその発言に視線を向けられた3人が不安そうに眉を震わせる。

 




戦闘シーンない方は筆が進んでいない気がする……

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