ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

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お待たせしました。

新しいガーリーエアフォースの二次創作が投稿されてウハウハです。

今回は最近は出番のない彼女達に花を持たせます。


作戦53 残された者達は……

会談を行う上で相手を持ち上げる様な言葉を交わした後にやはりとでも言うべき問題が発生する。

 

「聞いてねぇぞ、中佐! なんの悪ふざけだこれは!?」

 

この場に集まった。そうなれば、今回の問題で共闘する事になる事は馬鹿でない限りはわかる。

ガジンスキーは眉1つ動かす事なく、ジュラーヴリクの問いに答える。

 

「本当ですよ。既に上同士の交渉で決まった事です。あなた方が異議を唱えられる問題ではありません」

 

カジンスキーの言葉にジュラーヴリクは怒りを覚えたのか近くに置いてあった籠型の屑入れを蹴り飛ばす。

中には何も入っていないのか屑入れはタイル製の床と当たって心地良い音が鳴るが、それを塗り替えるかの如くジュラーヴリクの怒号が響いた。

 

「こいつらは祖国の敵だ! あたし達、バーバチカの誇りに傷を付けやがった! そんな連中と仲良しこよしで手を繋げってか!」

「それは此方の台詞ですよ」

 

琥珀色の瞳に殺意を押し殺しながらゆるりと進み出る。

 

独飛とバーバチカはモンゴルで一戦を交えている。

 

結果は独飛側はファントムの大破に近い中破を負って撤退、バーバチカ側は3機全てが戦闘に支障をきたすレベルの損傷をバトラ1人に負わされた故に撤退。

 

ファントムとジュラーヴリクの性格を考えると因縁浅からぬ関係になるには充分過ぎる過去だった。

 

「鉛玉を撃ち込まれた屈辱はまだ消えていません。一緒に飛べと言うなら、それは同じだけの砲弾を叩き込んだ後です。あの忌々しい八枚羽を半分くらいネジ切ってやらないと」

「なんだとこら」

 

互いに磁石でも持っているのか、全く同時に距離を詰めるファントムとジュラーヴリクの間に黒の石突が割って入る。

 

「静粛に。少しはそこのバトラさんの様に振舞っては如何です?」

 

カジンスキーが顎で示した先にはバトラが無表情で立っていた。

 

「バトラさん。バーバチカとの共闘に何も思う事がないなんて言わないですよね?」

 

ファントムの問いにバトラの目が見開いた。

 

「確かに。ただ、俺たち請負兵士はたまに別の戦場では敵同士だったが、別の戦場に行ったら味方でしたとかあるからね。お互いに生きてるならノーカウントが常だ」

 

金や政治など様々な要素で敵にも味方にもなるのが民間軍事会社の社員だ。誇りだ、因縁だなんて気にしていたら仕事なんて出来ないと呆れた様にバトラが話す。

無論ながらバトラも敵だった奴に対して何も感じない訳ではない。

 

「今は上が味方だと言うなら共闘はするさ。ただし裏切った瞬間には迷いなく引き金を引く」

 

敵が味方になる分には何も言わないが、味方が敵になった時はその場で殺す。

ヴァラヒア事変でライジェル隊と言う裏切り者を出してしまった経験からバトラが隊長を務めるアルタイル・アンタレス隊では裏切り者はその場で殺す事を推奨すると同時に義務としている。

 

万が一にも逃した場合は空の果てまでも追いかけて必ず殺す事を是としている。

これは正規手順以外は許さずのアルタイル・アンタレス隊の法度である。

 

「ッ!」

 

外交問題など知った事ではない。

仲間になるなら門は開け放つが、一度入れば二度と開ける事はない。どちらかが死ぬか目的を果たすまで居てもらうと言わんばかりのバトラの気迫にバーバチカの誰かが息を漏らす。

 

「祖国の利益を語るならあなたのプライドを満たす事ではなく、国民の被害を止める事だと言う事だと認識を改めなさい。そしてRF-4EJ-ANMの目的は人類の救済の筈です。此処で同士討ちが合理的な判断ですか?」

 

ガジンスキーの言葉にジュラーヴリクは渋々、ファントムは内心でバーバチカが居なくてもPMCエースの方々が居ればどうにかなりそうだなと思いながら口に出すと背後で微笑んで右の拳を左手で包んでいるバトラに何をされるかわかったものじゃないのでこれ以上は喋るつもりは無いと言わんばかりに奥へと下がる。

 

兵士のゴタゴタを後回しにして、カジンスキー・八代通を中心にした政治の話が始まるとMS社のメンバーはどうする事も出来ないとただ、成り行きを見守るが、ベルクトを除いたメンバーはアイコンタクトで何かを話している事に誰も気付かなかった。

 

 

 

 

 

日本のほぼ中心地に位置する石川県。その中の小松市に、小松空港と小松基地が存在する。

が、基地の方では少しではあるが普段とは違う光景が繰り広げられていた。

 

1つの格納庫が防塵と目隠しを兼ねた布で覆われているのだ。

 

近頃はザイと言う獲物を吸い続けた吸血獣は主がいない間に疲労が溜まった身体を整備士と言う医師であり、整体師でもある存在にその身の全てをを預けていた。

 

空では騎手であるパイロットにその身を預ける強力な存在だが、覗かれない様に黒いシートに覆われた格納庫の中という陸地の上でその鋼鉄の身体を開かれ、内臓となる内部パーツを1つ1つ取り出されて洗浄の後に点検、必要であれば交換などとオーバーホールをされている今の姿は随分と情けない姿だ。

 

「ベルクトは確かに新人で目に見える場所に置いておきたいというのはわかります……が、ですね」

 

詩苑は格納庫でバトラに置いていかれたバトラのIℓ-44を見ながら呟く。

 

ベトナム行きを知らされた詩苑は直ぐに立候補をしたが、それなりに腕の立つ事とザイの本拠地は中国大陸のある方角であり、最前線の一部となっている小松基地の防空能力を下げる訳にはいかない故にある程度の実力を持つ詩苑は姉妹揃って小松基地でザイに備えていた。

 

「兄様は釣った魚に餌をあげないタイプではありません。ただ、少し気に掛け過ぎです……」

 

不満ですと告げながら詩鞍が自分の踵を自分の座っている空のコンテナに当てる。

フライトシューズとコンテナに当たった音は小さかったが、非破壊検査をする作業員から静かにしてくれと白い目を向けられる。

 

バトラの整備員達はバトラが経費削減と信頼関係構築の為に半分は新人を起用しており、熟練が居なくなってからも自分達が熟練になったと言う自負と仕事が少ない新人時代に仕事を流してくれたバトラへの信用や信頼に加えて友情の様な者を抱いている整備士達だ。

 

それ故かバトラの機体を弄る時は他の機体以上に真剣そのもので、渡される報酬以上は当然でバトラが追加報酬を払わせる気にさせる仕事を心掛けている。だが、追加報酬を受け取らない。

 

そんな誇り高い仕事を邪魔しない様に2人は格納庫を出て行こうとした瞬間にスクランブルの警報が鳴った瞬間に2人は女性とは思えない走り方と速度で格納庫を飛び出し、燃料補給と簡易点検を終えたばかりの機体に駆け寄り、機体の下で待機していたMS社の社員から対Gスーツとヘルメットを受け取ると素早く着込んでコクピットへ乗り込む。

 

「こんな時に!!」

 

バトラが居ない。

それは同時にエースの不在を意味する。

 

詩苑は知らず知らずの内にエースであるバトラの存在に依存に近い信頼や信用を抱いていた事に気付くが、首を振って素早く離陸前のチェックを終えると滑走路へと機体を滑らせる。

 

「お兄様が居ないのに3回目ですよ!」

 

機体が詩苑よりも遠かった詩鞍は遅れてコクピットに乗り込むとキャノピーが降りてくるのを見ながら無意識で呟いた言葉でMS社の上層部は理由が無ければエースと呼ばれる人員を定期的に抜いて再編成を繰り返している理由を悟る。

 

エースのいる部隊は自然とそのエースを中心にしたチームワークを作ってしまう。無論ながらそれは悪い事では無いが、万が一にもエースが脱落すれば一瞬で誤解する。

 

海鳥島で世話になったデネブ隊や爆撃を得意とする部隊の1つであるベガ隊などはその特殊性からエースの引き抜きは無いが、特殊性の無い部隊はエースを定期的に抜いて臨時編成を行う場合がある。

 

簡単に言うならば、エース不在時の訓練の為だが、この間は大幅な戦力減を引き抜いたエースのみの部隊で補う。

 

アンタレス隊の場合はバトラの精神状態や元一般人の少女が捕虜となり、そこからの緊急登用だった片宮姉妹の経緯からバトラが心の拠り所と言う理由でエース引き抜きを行なっていない。しかも現在では唯一のドーター・アニマ運用部隊故に余計に引き抜けない。

 

今の片宮姉妹はバトラ不在時の作戦に若干な違和感や不慣れがあった。

それはバトラが居たからこそ出来たような高難易度作戦に従事して来たからこそ芽生えてしまった甘えの様な物だった。

 

<<先に行くぞ>>

 

そして小松防衛の為に残っていたサンライトイエローのFー15J-ANM イーグルが離陸した後にオニキスブラックのボディを持つラファールM-ANMに乗るブーランジェから詩鞍の前を横切るタイミングで通信が入る。

 

詩鞍も不安を叩き出すかの様に頬を叩いた後にヘルメットを被って、滑走路へと機体を向ける。

 

今回はスクランブルだが、空中で待機していたカノープスからEPCMを観測されたと言う通報があった事からザイだと判断された。

今の小松ではザイと判明した場合はサイレンの種類を変えて直ぐに伝達出来るシステムに変更されている。

 

「完全な物ではありませんが……」

 

詩鞍は自分の乗る機体の後部を見て呟く。

F-16。と言うよりもF-CK-1の背中にコンフォーマル・フューエル・タンクを足し、主翼付け根からより大型化したLERXを追加改造を施したF-2Xと言う自衛隊でF次期支援機の座をF-3 震電Ⅱと争ったレプリカだ。

 

中低安定性と航続距離に絞った強化を施した片宮姉妹のF-2XCとなり、こう言った防空戦などの局地戦にて制空戦闘機としてよく離陸する。

最近はA-10の方が作戦に向く為に格納庫でニートしていたF-2XCだが、バトラが居ない間は変にザイを刺激しない様に防空戦のみを行う判断が下され、最近の片宮姉妹はF-2XCに搭乗する回数が増えている。

 

それでも元はA-10乗りで空対地戦が本業だった片宮姉妹は制空専業のこの機体をまだ扱い切れて居ない状況での出撃だった。

 

離陸した詩鞍は先に上がっていた3機と合流するとダイヤモンド編隊を組む。

ダイヤモンド編隊は4機の機体が菱形を描く様に組む編隊だ。

 

先頭にオニキスブラックのラファールM-ANMを操るブーランジェが飛び、その後ろに片宮姉妹の操る白黒のF-2XCが並び、その後ろを大型戦闘機であるアニマであるイーグルの操るF-15J-ANM イーグルが並ぶ。

 

小型機の後ろに小型機と呼べるサイズの機体が並び、最後尾にF-15J程の大型機が並んだその編隊は大型機であるF-15Jを護衛する小型・中型機の群れの様に見える。

 

編隊を組んで石川県の陸地を抜けて日本海に入って暫くするとレーダーが20機ものザイを捕まえるとレーダーが機体の識別を開始して、結果を教える。

 

<<アロータイプ!!>>

 

詩苑が叫んだ。

 

PMCではザイを形状や戦い方で細く識別している。

こう言った識別をしておいた方が戦術組立や戦術選択を咄嗟に変え易いのと教練が行い易くなるからだ。

 

今回のアロータイプと識別されたザイはHiMATを使用するタイプであるが、僻地の基地を襲撃された際に多くが目撃されているザイだ。

特徴としてはジョット化したDo335を後退翼など高速機に見られる仕様に変更した様な外観で僻地の基地襲撃が多い事から航続距離と武装搭載力が多い事が判明しているが、それよりも恐ろしい報告が上がっている。

 

<<各機、ミサイルを発射後にブレイク!!>>

 

故にブーランジェは早急に片付けるつもりで指示を出すと、片宮姉妹は特に不満は無く声と行動で答え、イーグルは格闘戦がしたいのか不満を投げながらもしっかりとミサイルを発射する。

 

それぞれの機体からはそれぞれのパイロットの指示に従い、ラファールMからはミーティアミサイルが、F-15Jからは99式空対空誘導弾が、F-2XCからはAIM-120が発射された。

 

発射方式の違いからか全機が同時にブレイクしなかったが、ザイの方からもミサイルを発射されるがF-2XCに設けられた増槽も吊るせるハードポイントの4つの内の2つには今回の防空戦の為にEPCM対策から派生した対ザイ用ミサイル専用のECMPを搭載しており、ザイのミサイルは全てがあらぬ方向に飛んで行くか自爆する。

 

だが、4機で8発しか撃てなかったのか12機が8機の僚機を失いながらも格闘戦を仕掛ける。だが、格闘戦ならば出番だと言わんばかりにイーグルが機体を素早く操って、ザイの背後に付いた瞬間にブーランジェが注意を飛ばした。

 

<<|Espèce d’idiot! Tenir la distance!《馬鹿!! 距離を離せ!!>>

 

イーグルが通信でえ? と漏らした瞬間にはミサイルがリリースされており、直撃したザイは戦闘機とは思えない規模の爆発を起こす。

 

<<うわわ! 何これ!!>>

 

ギリギリで破片の直撃を避けられたイーグルだが、機体には破片が命中したのか大小の凹みが見えた。

エアインテークに破片が飛び込む事が無かったのは奇跡に近いだろう。

 

<<資料を読んでないのか! アロー型は戦闘爆撃機だ!>>

<<アロータイプは腹に大容量の爆弾を隠しているんです!>>

<< 格闘戦で撃墜するなら距離を考えて下さい>>

 

立て続けに3人から叱責が飛ぶ。

 

アロー型の恐ろしさはその搭載能力を持ちながら、ある程度の格闘性能を有する程のエンジンパワーの存在だ。無論ながらそれだけではない。

元々は地上攻撃用なのかミサイル搭載数こそ少ないが別の武装が豊富に載せられている。

 

<<BARBIE02回避を!>>

 

京香の言葉にイーグルが機体を翻すとさっきまで居た場所を異様に太い火線が通り過ぎる。

そうこれもアロー型が恐ろしいと言う報告を上げる理由だ。

 

<<50mm砲搭載仕様ですか……>>

 

機首に集中配備した機銃の火力性能の高さだ。

 

今回のアロー型は機体形状から機首中央に長い砲身を持った50mm砲を囲う様に20mm機銃を載せた機体だ。

 

戦闘爆撃機と言う思想で設計されていると判断されたアロー型は戦闘機で言えば、第1世代・第2世代の戦闘機の戦闘方法を第3世代並みの性能で行う機体と言う物である。

 

簡単に言えば、音速で飛びながらレーダーで探知を行うと同時にミサイルを放って、音速でガンファイトを行うと言う機体である。しかも、機銃は対空戦だけで無く対地戦でも一定以上の効果を持つ事をアメリカ軍などが証明している。

 

「回られた!」

 

そして最後のガンファイターと呼ばれた第2世代機は当然ながら格闘戦の性能が高い。

 

アロー型が恐れられるのはこの格闘性能を持って、二線・三線級の戦力が防衛する僻地の基地を襲撃する事だ。

格闘戦はもろに操縦者の腕が現れる戦いであり、その腕が未熟な部隊が守る場所にエースを送り付ける様なザイの戦術は功を奏し、欧州方面での対ザイ戦では僅かながらであるが物資にダメージが入っている。

 

そんなアロー型に後ろを取られた詩苑だが、相手は小松基地防衛を担い、同時に日本防衛の一翼を背負う一線級が相手だという事をアロー型のザイは失念していた。

 

「ですが!」

 

詩苑が減速しながら行うバレルロールを披露。

ザイは急減速と一瞬だが視界から消える様な鋭い機動についてこれなかったのか、詩苑の機体を追い越してしまう。

 

「そこです!!」

 

詩苑は機体が逆さを向いたままだが、構わずガンのトリガーを引いてアロー型のザイに20mm砲弾を一斉射分叩き込む。

 

ザイは腹に抱えた爆弾と燃料に引火したのか大爆発を起こすが、詩苑の機体はそのまま失速させる事で重力に任せて降下させた事で破片の被害から逃げられた。しかし、失速して落下するという事は空気の抵抗を機動力とする飛行機にとっては身動きが取れない状況でもある今の詩苑は大きな隙を敵に晒す事になる。

 

「やっぱり来た……」

 

詩苑の目の前で失速した詩苑を墜とせる時に落とすと言わんばかりにザイが迫るが、そのザイは別の機関砲の弾丸に撃たれて爆発四散する。

 

<<早く復帰して!>>

 

まるで指し示した様に攻撃したのは詩鞍のF-2XCだった。

 

こうもベストタイミングに助けに来たのもこの失速が2人にとっては計算された物だったからだ。

 

<<わかってるわよ>>

 

詩苑が失速すれば無理しなくていい位置なら大抵の場合は撃墜のチャンスだと言わんばかりに敵は喰らい付く。だが、それが見え透いた罠で詩鞍が既に喰い付けばいつでも撃墜出来る準備を整えていた。

 

そんな状態だった詩苑と詩鞍だが、ザイは気付かずに2人の狩場に飛び込んでしまい、その代償は自身の爆発四散とその代償は大き過ぎた。だが、この方法はバトラの様な隙を隙としないだけの安全を確保させられる友軍が居てこそ出来る方法だが、そのバトラの代わりを務めるのが……

 

<<これで5機目!!>>

 

サンライトイエローの塗装に包んだF-15Jを操るイーグルだ。

 

アロー型の高い格闘性能を物ともしないドーター仕様に改造されたF-15Jを見事に操って一方的に狩り続け、先程までのポカは何処へやったのか圧倒的な戦果を上げている。

 

戦い方もバトラの様に有利な位置から一方的に攻撃を加えるかわざと背後に付かせてからカウンターマニューバでのキルと言う様な戦い方では無く、鷲の名に恥じない様な有利不利関係無く勇猛果敢に攻めて攻めて攻め続ける戦い方だ。

 

<<もう少し後方に気を使え!>>

 

だが、ファントムとバトラからは腕や感は良いが何処か抜けている、詰めが甘いと言われる通り背後に付かれる瞬間もあり、その度にブーランジェがフォローに走っている。

ブーランジェも何かしらの場合で穴が空いた場合に穴埋めを買って出る事が多い故に最後発のドーターとアニマでありながら、経験の質を見れば、イーグルやグリペンのそれと変わらない。

 

「負けられませんね」

 

バトラが海外に足を運べるのも帰るべき基地を守れるだけの戦力があるからこそと言うのをヴァラヒア事変終盤からの付き合いである片宮姉妹達は知っている。

 

残されたと言う事は帰るべき小松基地を守れるだけの実力があるとバトラが信じているからこその行い。

2人はその信頼に応えんと愛機の翼を翻す。

 

前を詩鞍が飛び、その後ろに詩苑が付くロッテを組み直すとザイは20機中11機を墜とされながらも数の優位を生かした4機1組で片宮姉妹のロッテに挑む。

 

<<詩苑!>><<詩鞍!>>

 

互いの名前を呼んだだけだが、それだけの2人の間で次の機動が決まった。

 

2人は左右に分かれると言うわざわざロッテを組んだ意味が無い行為をする。そんな2人にザイは2機づつに分かれて追撃を開始する。

2人はそれぞれに後ろからの機銃を回避すべく回避機動を取り続けるとザイもムキになったと言うべきか、20mm砲の銃撃の勢いを増やしていく。

 

<<FOX2!>><<FOX2!>>

 

2機のF-2XCから短距離ミサイルが2発づつ放たれる。

ザイは背後へ回ってくるミサイルだと判断すると同時にブレイクで逃げようとするがミサイルはまるで火器管制を重視したアニマの誘導を受けたミサイルに如く追尾してザイを爆発四散させる。

 

アンタレス隊に籍を置くには未だに力不足な一面もある片宮姉妹だが、この2人がロッテを組んだ際の実力は他社の有名エースを相手に張り合えるだけの実力を持つ。

 

<<そこ!>>

 

無論ながら単独でもそれなりの実力は持っている。

 

そして2機のザイを撃墜した詩苑が目の前を横切ったイーグルを追うザイ2機の内1機を機銃で撃墜するとループを描く様に上昇するがわざと失速させて背中から落ちる様な機動でザイの下に回り込む。

 

<<FOX2!!>>

 

背面を向いたまま発射されたミサイルがザイの腹を殴り付ける様に近接自爆を行うと腹に抱えたままの爆弾に引火させて大爆発を起こさせる。

そして、またも失速した詩苑にザイが迫るが、詩鞍は別のザイに追われており、イーグルもブーランジェも今回のコレにはカバー出来ない状況。

 

ザイはここぞとばかりに迫ったが、気付いた頃には詩苑のF-2XCに背後を付かれていた。

 

コレはF-2XCが支援機と言う自衛隊のF-2B支援機が元になっており、このF-2Bを低空を低速・高速でも高い機動性を維持できるマルチロール機として枯れた技術を大部分に開発された機体。そんなF-2XCをより安定性とエンジン載せ換えによる搭載重量の強化を行った副産物で失速状態からの回復や低速での機動性が強化された。

 

そのおかげでわざと失速して敵を釣った上で友軍に狩らせる。もしくは完全に付かれる前に背後に回ると言うバトラとは違ったカウンターマニューバを使う。

 

ザイはすかさず急降下で逃げるが、下はF-2XCの支援機として作られた故に優秀なルックダウン性能を存分に活かせる領域に自ら逃げた様な物で、詩苑もコレを逃がす程に甘い人間では無い。

搭載力強化により増えた対空ミサイルの餌食となり、ザイは火の玉へと変わった。

 

先程の背面飛行からの撃墜もこの優れたルックダウン機能を使った変則的対空技術だが、自分の身は自分で守れなければ死ぬが良いがこの世界のPMC攻撃機乗り。故にこの技術はPMC攻撃機乗りならば、必須技術とも言って良い技術だった。

 

<<中尉は右に!>>

 

互いに2機のザイに追われた詩苑と詩鞍だが、詩鞍と詩苑はまずは散開して二手に分かれた後に単独で逃げ回るが相手が自分達に夢中になったタイミングでハートを描く様な機動で動き、互いに互いを追うザイを正面からロックオンしてミサイルを誘導して、互いにしっかりと当てた詩苑と詩鞍。しかも、ロックオンの情報はあくまでも自機の後方警戒用レーダーからのデータリンクからだった事もあり、ザイは後方にUターンして迫って来ると判断しての回避機動を取らせた事も2人の戦術があったからこそ成せた技だった。

 

ザイを2機撃墜した詩鞍はそのまま降下して、ルックダウン性能の高さを知るブーランジェが海面スレスレまで逃げる事で助けを求めている事を察して通信を入れた。

 

ブーランジェはその通信に即座に答えるとザイの方から詩鞍の火線に飛び込んでしまい、予期せぬ仲間の爆発にロッテを組んでいたザイも飛び散った破片に巻き込まれた挙句にエアインテークから破片が侵入した事でエンジンが壊れたのか低空だった事もあって直ぐに頭から海面に飛び込んで機体を真っ二つに追って水没した。

 

<<逃す訳無いじゃん!!>>

 

不利と悟ったザイが中国大陸方面へと撤退するがイーグルが素早く追撃した事で小松襲撃のアロー型ザイ20機全機撃墜の戦果を持って4機の戦闘機が小松基地に帰投した。




次回こそはベトナムに戻ります。

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