ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

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大変遅れて申し訳無いです。

新刊が手に入らなかったんです。
近場は8巻までしか置いてなくて時間置いて行ったらガーリーエアフォース自体無くなっているから、時間がある時にかなり遠くの本屋行って買いました。

それではお楽しみ下さい。


作戦50 小松防衛戦から一ヶ月

ビロードの水面とそれ彩る白波が何とも言えない光景を生み出し、風が水飛沫を飛ばすと太陽が心得たと言わんばかりに陽光を投げて輝かせることで何とも幻想的な光景を生み出す。

 

<<ANTARES02は俺に続いて上昇!!>>

そんな幻想的な空間を音速に近い速度で駆け抜けるのはエイを鋭角にした形に海に溶け込む様な紺碧色の鉄の飛翔体。そして、その後ろに続くのはこの世のどの生物にも例えられない形状の汚れや黒などと言う物とは無縁だと思わせられる程に純白な飛翔体だった。

 

そんな飛翔体が首を擡げると同時に背部から吹き出す超高温の空気に当てられた海水は一部が蒸発し、大部分は小さな水柱となった。

生み出された2本の水柱が2つの飛翔体を投げ飛ばしたかの様に海面から引き剥がす。

 

そして飛翔体が浮かび上がり、鋭い切っ先が向く先には虹色に光る飛翔体が4機、悠然と飛んでいた。

 

この飛翔体はザイと呼ばれる存在でその名の意味は天災。どんな人類の叡智が結集しようともどうする事も出来ず、銃撃を与えればどうにかなると分かっていても、その銃撃が当たらない為に振り下ろす害を天災と同じ様に受け入れるしか無かった忌々しき存在だった。

 

虹色の飛翔体、ザイは今日も獲物が来たかと舌舐めずりをするかの様にMの字を象った様な翼を翻す。

 

「スプラッシュダウン」

 

事は無く、まるで突如として現れた純白の飛翔体に驚く様に右往左往する様に翼を動かすと撃墜されたザイの一番近くを飛んでいたザイがやられた仲間の仇を討ってやると言わんばかりに機首を翻した瞬間の自分の身体に30mmサイズの異物が突き刺さったのを感じた瞬間に身体から炎が吹き出し、持っていた爆弾に誘爆したのか木っ端微塵になると空に炎の花を咲かせる。

 

この段階になってザイは漸く空に浮かび上がる様に純白の飛翔体より目立つ紺碧の飛翔体と言う存在に気付く。

 

今までザイは見下ろす形で背景は紺碧色の海。そこに紺碧色の飛翔体が居れば見つけるのは困難だが、仲間1機の犠牲と共に高度を上げた飛翔体はザイにとっては見上げる形となり、背景は透き通る様な水色の空へと変わる。

 

これにより紺碧色と言う保護色を失った事で確認した2機のザイは紺碧色の飛翔体に狙いを定めて追撃に入るが、それを確認した紺碧色の飛翔体に乗る人物。バトラは勝ったと言わんばかりに頬を釣り上げた。

 

<<そこです!>>

 

雲の中から飛び出した純白の飛翔体を駆るANTARES02ことベルクトが追い縋るザイの1機を撃破する。

視覚からもレーダーからも消えていた事を仲間の撃墜で悟ったもう片方のザイがベルクトの機体を追い掛けようとした瞬間に機首が銃弾により砕ける様に折れた事で海面へと乱回転しながら墜ちて行く。

 

バトラはベルクトの横を飛ぶと右手を掲げてガッツポーズをすると別のザイを見つけたのか翼を翻して飛んで行く。

ベルクトもそれを見て雲の中を突っ切る様に飛ぶルートでバトラの後を追う。

 

次のザイは2機編成だったらしく、突き上げる様な軌道で迫るバトラの機体をレーダーにも視覚でも掴み損ねたのか、初撃で1機を撃墜される。

 

バトラの操る機体の名はIℓ-44 AJZ ウプイリ。

ロシアの空母に乗せる予定だったステルス艦載機だった機体を改造された特殊機だ。

高い性能を誇ると同時にピーキーな性能でもある為に個人主義が大きい民間軍事会社などの環境でないと輝けなかった機体だ。

そんなステルス戦闘機に塗装と言う視覚的なステルスも掛けた事で低空からの攻撃には高い隠密性を誇る機体となった。更に一部の状況を除いた無線・電波封止によりステルス性を強化している。

 

無論ながら無線・電波封止していてもベルクトの駆るSu-47-ANM ベルクトはステルス戦闘機では無い為に超低空から高高度に上がれば当然ながら見つかる。

事実としてザイはバトラよりもベルクトの存在に気付いている。

 

「奴さん散発的に機体を寄越しているな」

 

ザイの対応は突如として味方の勢力圏に敵は転移して来た、もしくは奇襲を仕掛けられた際で組織的な迎撃が出来ないと言う状況だった。

事実として朝鮮半島近海に進出したバトラ達は徹底した超低空飛行と無線・電波封止によりザイに対して奇襲を掛けていた。

 

それは戦争では基本でこそある戦術だが、ザイと言う超常の存在が相手であるが故に出来なかった戦術。だが、それが実行出来る状況となった事でやらない事は無いと実行していた。

 

新たに目視でザイを2機を確認したバトラが頷いた。

 

「蹴散らすぞ」

 

口を動かすと同時にこの作戦の為に作ったオリジナルの手信号を送って簡単な意思疎通を済ませる。

普通ならドーターや対ザイ用に改造された戦闘機は装甲キャノピーを持つ為に意思疎通出来ず、装甲キャノピーを開ければただの人間はザイのEPCMにより五感に多大な障害を受ける事になるがごく僅かならば問題は無い為に手信号を送る時だけキャノピーを開いて、終われば直ぐに閉じて戦闘態勢に移行させる。

 

バトラの機体の装甲キャノピーは車の窓などに使われる引き上げ式に頂点で接続される形である為に出来た方法だった。

翼端灯の光信号も案に出たが、光信号が読めるのがバトラとファントムしかパイロット内では居なかったので見送られた。

 

首を掻っ切る様な仕草に上を指した動作にベルクトも手を振ってOKのサインを送る。

 

互いにパイロットと言う目のいい存在なので多少の細かい動きは視認できる。

 

今のバトラとベルクトならこれだけでそれなりの連携は出来る。手信号のみでの連絡しか出来ない状況でも連携を取れる様にする為に無線を使わずに仮想でも訓練を積んだからだ。

 

まずはベルクトが雲から飛び出して機銃を浴びせようとするがレーダーで気付いていたザイは既に回避機動を取っていた事もあって空振りに終わるが回避した先にはレーザー誘導式ミサイルを2発も立て続けに発射したバトラの機体の正面と言うキルゾーンだった。

 

ザイはHiMATと言う人間の限界を超えるGを与える機動で回避を試みるがMiMATが終わった瞬間を狙ったバトラの巧みなミサイル誘導技術により敢え無く撃墜された。

 

「次は」

 

何処だと呟く声はキャノピー越しにも聞こえた爆発音と全天周カメラからもたらされた映像に浮かぶ黒いキノコ雲が2つ連なる様に立ち上がっていた。

 

<<FOBの破壊を確認しました>>

<<良し!! 長居は無用! 三十六計逃げるに如かず!>>

 

その通信と共にバトラはキノコ雲の立ち上る方向に機首を向けて飛ぶと前方から飛行機雲を引きながら2機の白と黒のA-10A サンダーボルト2が逃げる様に近付いて来る。

 

<<待って下さい! 私達はA-10Aなんですよ!!>>

<<A-10と他の機体では速力の差があり過ぎます!!>>

 

散発的に現れるザイをバトラとベルクトが排除しながら朝鮮半島近海から脱出し、自軍勢力圏へと逃げ帰ると自分達の編隊と並んで巨大な4発輸送機、C-17 グローブマスターを守る様な編隊を組みながら合流したのは彗・グリペンが操る真紅のJAS39D-ANM グリペンとファントムが操る翡翠色のRF-4EJTP-ANM ファントム3とイーグルの操る山吹色のF-15J-ANM イーグルの4機だった。

 

この2つの部隊が行ったのは今までやりたくても様々な問題から出来なかったザイのFOBに対する直接打撃だ。

 

過去に米軍と協力して朝鮮半島に進出してザイを倒すと言う作戦は行なったが、大勢で朝鮮半島に押し寄せれば当然ながら組織的な迎撃を受ける。ならば少数精鋭ならと言う話が出るが今度は防御力の高い基地を破壊するには火力不足に陥る。

 

<<C-17は勿論だが、A-10Aの搭載能力も圧巻だな>>

 

ならば強力な爆弾を運べる輸送機か攻撃機を護衛して叩き落せば良い。

正規軍は輸送機にGBU-43/Bと言う通常爆弾最強を搭載して投下、PMCはテロリストから鹵獲できたトリニィティと言う巡航ミサイルにも搭載可能な高性能固形爆弾を使用する。

 

前者は単縦な高性能爆薬故に巨大かつ重量がある。後者は一回り大きな巡航ミサイル程だが、火薬の比重は重く基地破壊するには投下型で対艦ミサイル4発以上5発未満、巡航ミサイルなら対艦ミサイル5発分と重く、空力の関係で胴体中央にしか載せられない。かと言って通常の機体では重量に耐えられない。

 

独飛のドーターでも空力と強度の問題で載せられなかったはMS社はエンジンさえ強化すれば片宮姉妹のA-10Aに搭載可能である事がわかり、エンジンを交換して投資している。それでも威力不足故に完全破壊には2発を要する。

 

無論ながら破壊出来る武器があろうと命中しなければ意味がない。が、その問題も解決済だった。

 

<<良し! 今日は2つも破壊出来た! グリペンの記憶に感謝だな>>

 

大軍も駄目、少数も駄目と言う雁字搦めだった日本だが、一月前にグリペンの前世とも言える記憶を思い出すと言うブレイクスルーにより敵の行動や戦術がわかったのだ。

グリペンは何度も時間遡行を行なってザイを過去へ過去へ送り、数千年単位で解放される時限式封印を己の命と引き換えにザイへ掛け続けていた存在だった。

そしてザイが現れる度にグリペンも蘇っていた。今回の対ザイ戦では今までの延命治療では無く、根本的な解決の為に動き始めた時代でもあり、様々な不確定要素も多く、グリペンはこの世界は今までとは何処か違う異世界では無いかと言い始めたのはバトラの記憶に新しい。

 

テストで言うカンニングに近い事が出来たお陰で準備が出来次第解決可能な物から実行に移していた。

 

<<そうですね……>>

 

何処か不満気なファントムからの通信にバトラが首を傾げながら聞き返した瞬間にファントムの怒号が響いた。

 

<<何だ? じゃないですよ! 何ですかこの機体は! 低速での機動性が化け物ですよ!!>>

 

ファントムのドーターだが、とある作戦で大きな損傷を受けたファントムとバトラのRF-4をニコイチした機体となっていた。

 

今まではRF-4EJに機動性と対ザイ用の電子系に絞った改造を施されただけだった。

 

見た目はRF-4EJの機動性強化の為に尾翼の3枚は形状変更を行い、舵面を強化。垂直尾翼の上端と根元、後方レーダーは強化された電子機器を詰めた事で原型機よりも肥大化。更に機首も原型機に比べれば変更点があり、電子機器の強化で延長されたコーンに装甲キャノピーから生えた様な板状のセンサーユニットが目立つ。

主翼形状は然程の変化が無かったが、悪化したバランスを取る為に主翼の折り畳み機構を作動させたファントムの過去を鑑みて垂直安定板が追加され、エンジンも大幅に強化されたものを搭載すると同時にノズル周りには他のドーターにも使用されているチューリップ状のフェアリングを追加した事で推力偏向を起こして高機動を実現している。

 

此処までが大規模改修を受ける前のRF-4EJ ANM ファントムⅡの姿で、此処からバトラのRF-4TP-AZJ ファントムⅡとニコイチした事で大規模改修を受けたファントムのRF-4EJTP-ANM ファントムⅢの姿を解説しよう。

 

スタビレーターのウィングレットを肥大化させた以外は特に変更点は無いが、主翼はウィングレットの追加に垂直安定板を稼働型に変更と同時に肥大化させる事で機動性を大幅に強化し、主翼そのものも強化すると同時に胴体下部も強化した事で対艦ミサイルを主翼に4発、胴体に1発が積める様にもなった。

胴体とエアインテークによって作られた上部の凹凸部にはバトラのRF-4から授かった空力重視の小型コンフォーマル・フォーエル・タンクかバトラのRF-4から剥ぎ取った電子機器を収めたユニットを追加搭載を可能にした事で継戦能力か作戦能力の強化に成功。

機首も更に延長して電子機器の追加搭載に加えて30mm機関砲の搭載を諦めた代わりに側面部にわずかな曲線を描いた装甲で空洞を作られたバトラのFー4の機首を混ぜた事で20mmm機関砲弾の傾向弾数増加に成功。

機首部のエアインテークはバトラのRF-4の物に交換した事でミサイルを2発を追加搭載可能にし、胴体下部にもバトラのRF-4にとってはオプション装備だったコンフォーマル・フォーエル・タンクを標準装備に変えた事でミサイル携行数を4発から8発に変更と同時に航続距離の増加に成功し、エアインテーク側面にはカナード翼を追加した事で機動性などが向上した。

 

外見的に大きく変わった事で八代通からはRF-4EJ-ANMにF-462-12200号機を足してコンフォーマル・フォーエル・タンクを上下左右に足した感じだと告げられた。

 

そして、まだこれに主翼根元にならコンフォーマル・フォーエル・タンクなら追加可能な余力を残しているのだから驚きだ。

 

と言うのもバトラの中では壊れなければ長距離索敵攻撃(サーチ&デストロイ IN アウトレンジ)が行える戦闘偵察攻撃機にする予定だったのだから航続距離に限ればまだ増やせる余力はある。

まあ、MS社の魔改造技術の裏打ちがあってのこその余力だ。

 

<<でも、役に立つだろ? 俺と未来奈さんのF-4は>>

<<そうですね。ちゃんと愛されていた。と言うのはダイレクトリンクした瞬間にわかりましたよ>>

 

そして、RF-4TP-AJZ ファントムⅡはRF-4TP-AZJ ファントムⅡと混じった事でそれなり以上の航続距離を有すると同時に高火力を実現した電子戦闘偵察攻撃機へと昇華しており、ファントムⅡの皮を被った別のファントムと言う意味で名前がRF-4EJTP-ANM ファントムⅢとなっている。

 

<<でも私が使い切れなかったら意味が無いんですよ?>>

 

のだが、乗っているファントムがアニマと言う特殊な存在であるにも関わらず、バトラのカウンターマニューバ優先の改造をした機体の設計思想やパーツを足した事で高G状況や低速での機動性が大幅に向上した事でファントム自身がついて来れていなかった。

 

と言うのもアニマとは元となった戦闘機を擬人化させた存在とも言える訳で、アニマの限界はドーターの限界なのだが、低速での機動性と言う点ではファントムの元となった機体RF-4EJにバトラのRF-4TPを組み合わせた事で限界突破をしてしまっていたと言うのが現状である。

 

バトラがカウンターマニューバを得意とするパイロット故に低速での機動性は生命線とも言える故に致し方ないのだが、バトラ本人もファントムからこの文句を聞くまで機体の限界を超えた性能だったとは知らなかった、と言うよりも出来ているから限界内なのだと勝手に思い込んでいた。

 

<<一ヶ月過ぎても慣れないか……難儀だな>>

<<他人事みたいに……>>

<<だって他人事だから>>

<<…………>>

 

バトラの通信機からブチッと音を発して通信が切れた瞬間にバトラの首筋に蜘蛛が這う様な感触を受けた。その瞬間にバトラのIℓ-44の計基盤がロックオン警告を警告音と共に表示する。

 

<<うおい!!>>

 

完全に真横に居たバトラだが、バトラのRF-4TPには視界と反応して動くオフボアサイトの機能が搭載されており、ファントムのRF-4EJには無かった機能故に一部をアニマ用に改造し直して搭載された事で真横にいる敵にもロックオン出来る様になっていた。

 

バトラはコブラ機動でファントムのロックオンを振り切ると同じくオフボアサイト機能を利用してファントムにロックオンし返すがファントムも機体性能のお陰でキレが増したカウンターマニューバで振り切るとバトラもその動きに合わせてカウンターマニューバを繰り出す。

 

<<BARBIE03、ANTARES01! 喧嘩はするならシミュレーターでやれ! 燃料の無駄だ!>>

バーフォードから叱責された事で互いに機動をやめて編隊に戻ると2人同時に謝るとバーフォードは分かればいいと通信を切る。

 

「戦術的勝利は納めているが……」

「戦略的勝利は無しです」

 

バーフォードが背もたれにもたれ掛かってAWACSの天井を見ながら呟いた言葉にグレアムが答える。

 

確かにFOBを潰す事は戦術的に間違いでは無く、正解の行動なのは間違いと言えるが戦略的に間違いを人類規模で行なっている以上はこの戦争を終結させるには決定力不足は否めない。

 

「いつに」

 

なれば戦争は終わるのだろうか。と言う言葉は飲み込んだ。

今はグリペンの記憶と言う起死回生の一手となり得るジョーカーを手に入れたのだ。

 

「この戦争がポーカーである事を祈るだけだな」

 

ジョーカーはゲーム次第で最強の手になれば、最悪のカードにもなり得るカードだ。

 

「兎に角今は」

 

愛する者の為にも対処療法にしかならない自分達の行為でも起死回生の一手を実行するまでは耐えるしかないとバーフォードは決意を新たにした。

指揮官が最初に潰れる訳にはいかないだろうと言う責任感すらも滲ませて。




アンケートご協力有難うございます。

とりあえずですが、アンケート締め切りは25日締めとさせて頂き、更新は25日以降になると思います。

そして祝アニメ化!!

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