ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

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オリジナル武装とオリジナル解釈を登場します。
色々、可笑しいと思う所があるかもしれませんが、この小説はあくまでもエスコンの世界でガーリーエアフォースをしています。なので、可笑しくてもまあ、エスコン世界だしと言う事でスルーして下さい。


作戦39 史上初との邂逅

青く澄み切った空が永遠に続く草原は地上からはわかりづらいかったが空から見ると起伏が意外にも豊かだった事に見る者を驚かせる。前を見れば黒々とした山が縦横に走っている。谷間には米粒程にしか見えない集落や道路、湖沼が見える。さらには地面がある標高が高いからだろうか雲と陸の間が近くにも感じられると言う知らない者や慣れない者にはある種で不思議な空を4機の戦闘機が編隊を組みながら飛行していた。

 

<<風が余り無くて助かってるだろ。山や谷に起伏のある陸で結構気流が不安定になりやすいからな>>

藍色に塗装された戦闘機のコクピットに座る男、バトラが後ろを振り返りながら話す。

<<はい。私が言うのもアレですが、安定性は良く無いので>>

 

振り返った先にいた白く翼が前を向いている奇怪な形をした戦闘機に乗るパイロット、ベルクトが恥ずかしそうな声で呟く。

 

<<Su-47は俺のIℓ-44と違って、安定性を捨てて、機動性を得ると言う新しいアプローチで高機動を得ているからな。仕方無いさ>>

 

ベルクトの乗る戦闘機はSu-47。Su-47は前進翼と言う前を向いた主翼で飛ぶ変わった形の戦闘機だ。

前進翼は安定性を欠くがその安定感のなさを逆手に取って機動性の強化と同時に速度性に長けている。

 

<<あれ? バトラさんの機体はデルタ翼ですけど、安定性が悪いって聞いた事がありますけど……>>

<<ああ。それはな……>>

 

バトラのIℓ-44はデルタ翼と言う超音速飛行に長けた翼の形をしており、安定性は良かった。だが、バトラはこの機体に様々な改造を行った事で重量バランスが崩壊を起こした。それでも、安定性向上の改修を行った事でエースパイロットとは行かないがベテラン向けの戦闘機になってしまった。

 

その説明を聞いたベルクトは呆れたような達観したような溜息を零した。

吐かれた張本人は自身の隣を飛ぶ紅色に塗られたJAS39Dを見る。その機動は板に付き始めているが何処か迷いのある飛び方だと思ったバトラは秘匿回線を繋げる。

 

<<慧。聞こえるか? これは個人向けの秘匿回線だ。返す時は俺だけに返せ>>

 

そう言うとJAS39Dのパイロットを務める少年。慧は回線を弄り直してから口を開ける。

 

<<ああ。聞こえる。どうしたんだ?>>

<<昨晩、言った事を考えていたのかも知れないが、今は仕事中で空だ。陸の事を持ってきていると……墜ちるぞ>>

 

最後の一言だけが異様に冷たく聞こえた慧は喉を鳴らしながら自身の唾を飲み込む。

 

<<まあ、言いたいのは陸の事は陸で考えろ。空に来たなら空の事だけ考えると長生き出来るぞ>>

 

優しくそれだけ話すと回線を切り、慧の返答をシャットアウトしたのを確認してからもう一度口を開いた。

 

「まあ、空に関わっている時点で長命は諦めた方が良いがな……」

 

その呟きは誰にも聞こえず、狭いコクピットの中に響くだけだった。

バトラは通信回線を全機に繋げる。

 

<<ANTARES02より各機。聞こえるか?>>

<<此方、BARBIE03。聞こえます>>

<<ANTARES04感度良好です>>

 

バトラはファントムとベルクトからの応答は聞くが、慧やグリペンからの応答が無い事に呆れもう1度、通信機に話し掛ける。

<<BARBIE01。聞こえるか? 聞こえていたら応答をしろ>>

<<あ……BARBIE01聞こえるぜ>>

 

慌てたような慧の声に少しだけ頬が上がるバトラ。

 

<<確認の応答はグリペンでも良いからしてくれ。通信機はデリケートだからな。直ぐ壊れる時がある>>

<<す、すまん>>

<<さて、そろそろザイの警戒ライン。端的に言えばザイの制空権と此方の制空権の交わる場所だ。日本海に比べれば弱体らしいが油断は厳禁だ。ここ、大陸はザイの本拠地だ。いつどれだけの敵が来るか分からんからな。ロシア機の事もあり得る。 >>

 

バトラの前半の言葉はいつ攻撃されてもおかしく無い事を意味し、後半は不測の事態があり得るからよく考えて動けと言う意味合いの言葉を紡ぐ。

その言葉にファントムは分かっていると言いたげな声で、ベルクトは真剣な声で応答する。慧とベルクトは気を張り詰めているのか応答が無い。

バトラは応答が無い事に一抹の心配をししつつ前方に視線をずらす。それと同時に通信機から声が出て来る。

 

<<聞こえるか? 八代通だ。もう1度作戦を確認するぞ。バービー隊とアンタレス隊は鉱山南方に進出、敵迎撃機を排除しながら哨戒ラインを叩く。同時に地上部隊が進撃、レーダー監視網の構築と対空兵器を設置、空港の整備を実施。ピケットラインが出来れば籠城の準備は完了だ。その後は適度にローテーションしながらスクランブル待機を行う。時間が経てばモンゴル軍の戦力も増強されるだろうしな>>

<<哨戒ラインって何ですか?>>

<<貴様……>>

 

慧の発言にバトラから静かな怒りを感じられる声が通信機から発せられる。これには慧もマズいと感じたのか声になら無い声が響く。

 

<<仕事は仕事でちゃんと切り替えてくれ。じゃないと……いや、良いだろう。八代通、俺から説明するがあの画像を出してくれ>>

 

そう言うとディスプレイにシャボン玉の様に虹色に輝く透明な球体を虹色に輝く透明なポールが幾つも繋げた分子モデルの様な物体が映し出される。

 

<<これは対空監視用プラットフォーム。わかりやすく言えばレーダーを載せた気球だな。かなりのサイズだがゴムの様な物で不活性ガスを閉じ込めて浮いている。自律飛行する能力は無いが恒常的に直径数百キロを監視している。こいつを落とさ無いとこっちの動きは筒抜けだ>>

<<じゃあ、それを落とせば。こっちの動きは分からなくなるんだよな>>

<<そうなるな。そして、そこに俺達の監視網を敷けば、ザイ達を捉えられる>>

<<なんか、質問あるか? 無いなら両隊共に交戦許可だ>>

 

八代通の言葉に自衛隊は『コピー』の号令を出す。ファントムがスロットルを操作して加速すれば、慧もスロットルを操作して加速する。

 

<<張り切ってるな……ラジャー、ANTARES02>>

<<02>>

 

バトラも機体を加速させて、敵機との距離を詰める。

ベルクトも隊長機の号令と同じ場合はそのまま数字だけ宣言すれば同じ内容扱いと言うMS社の簡易宣言を告げて、バトラから離れないように加速させる。

 

<<BARBIE03、エンゲージ>>

<<マスターアームオン! BARBIE01、エンゲージ!>>

ファントムは静かに、慧は何処か興奮を感じられる声で交戦を宣言する。

 

「(ミサイルで先制しても良いけど……勿体無いし、ロシアの事を考えるとな……)」

 

バトラはバービー隊の宣言を聞きながら、敵機を見つめて思案する。

バトラの中で判断できたのか、一旦、機体を上昇させながら右に旋回を行い、バービー隊がザイと接触した地点からずれた場所からプラットフォームへと接近しようとする。

だが、少数のザイが別ルートで接近を試みるバトラに気付き、迎撃を行うべくヘッドオンで接近する。

 

バトラは機首を下げる事なく、機体が腹這いのまま高度を数mだけ下げる。

ザイは予想外の行動に軌道修正が間に合わず、バトラの頭上を越える様なルートを飛ぶ。バトラは頭上を通る寸前にコブラ機動で機首を上に向けられる。

ザイが機首の上を通り過ぎようとした瞬間には機首の両横に装備されたシャッター付き30mm機関砲から弾丸が1発ずつ吐き出される。バトラは機体を水平に戻す時にコブラ機動で垂直に向いた状態からクルピットと言う機体を後ろ向きに回転される機動をしながらさらに高度を下げる。

すると、高度を下げる前の場所を起点に上向きに銀線が走った。ザイの機銃が通る時に出来る物だ。

 

バトラはコブラ機動と言う被弾面積が増える機動を行った時点で狙われる事は分かっていたので高度を下げる事でザイの攻撃を躱すと同時に攻撃し易いポジションに機体を動かした。

バトラのHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)には先程、攻撃を加えた上昇中のザイが映る。

バトラは素早くコクピット中央に配置されている操縦桿に付けられた機関砲のトリガーを引く。

 

トリガーに連動して動いた左右の機関砲にそれぞれ存在する撃鉄が1回だけ動くと銃口から1発だけ発射される。

発射された30mmの弾丸は1発はザイの右翼を中央からヘシ折り、1発は機首部分に穴を開け、内側から千切れる様に機首が落下する。

これはバトラのGSh-30-1機関砲(9A1-4071K)に装填された弾丸が30mmの爆発による加害よりも破片による加害を重視した炸裂弾だからだ。

先に頭上を越えたザイがバトラの背後に回ろうと急旋回を行った瞬間にエンジン部から爆発が発生し、ザイはコマの様に回転しながら落下して行った。

最初に着弾した弾丸が2発とも不発弾でエンジン部にダメージを与えたが撃墜する程では無かった。だが、損傷は与えており、その損傷がエンジンを加速させる際の負荷に耐えられず崩壊、ザイの燃料に引火してエンジン部が爆発、墜落したのだ。

 

「見つけた」

 

バトラはザイの撃墜を確認すると首を回して、プラットフォームを探し、見つけるとプラットフォームへと接近する。

バトラを迎撃しようと行動を起こしたザイはベルクトに阻まれ、無理に突破したザイはベルクトの機関砲を喰らって黒煙を上げる。

その間にバトラはザイのプラットフォームの攻撃範囲に収めるが、引き金を引く事はなく、そのまま横を通り過ぎる。

 

横を通り過ぎられたプラットフォームは空気が抜ける様な音を出しながら高度を下げて行き、地面と激突すると不活性ガスを使用して浮いているとは思えない程の爆発を起こした。

 

バトラはその爆発と使用した武装が対阻塞気球ワイヤーカッターを強化・改良を施した対阻塞気球カッターである。

これは気球その物を切れる様に切れ味と剛性を引き上げたカッターでそれなりの速度やパワーがあれば計装甲車の装甲を切断できる程である。

そして、カッターである以上は火の気など皆無である。それでも地面に落ちた際の爆発はカッターでは到底ありえない。それでも、バトラの脳内にはこの爆発を証明出来る仮説を立てれる程の知識はあった。

 

<<気を付けろ! 中に入ってるのは不活性ガスなんて生易しい奴じゃない! 水素ガスに準ずる物質である可能性が高い!>>

 

水素ガスは第1次世界大戦でドイツ軍が飛行船に使用していたので有名だ。

欠点は可燃性と爆発性が高く、被弾に弱かった事だろう。そして、水素はごく少量でもかなりの着火率と爆発を生む。

地面に落下した際に生じるほんの少しの火花で爆発を起こす程である。

 

<<え?>>

 

主翼の根元に増設されたカバーから武装を吐き出したベルクトが間抜けな声を上げるのと目の前のプラットフォームに吐き出した武装が突き刺さるのは同時だった。

ほんの少しの間を置いてプラットフォームは大爆発を起こし、破片はベルクトへと襲い掛かる。

ベルクトは咄嗟に機体を下に傾ける事で異物吸入を防ぐが、飛び散った破片が装甲キャノピーや機体の上面を叩き、ガンガンと嫌な音を立てるのを冷や汗を流しながら聞く。

 

<<ランケン・ダーツを使う時は距離と位置、タイミングを考えようか……>>

 

バトラが対阻塞気球カッターと言うプラットフォーム専用の武器を翼端のハードポイントに搭載してきた様にベルクトも空力を考えて、カバーで覆ったランケン・ダーツ発射機を持って来ていた。

 

ランケン・ダーツは第1次世界大戦に対飛行船用に開発されたランケン・ダートを今の技術力を使って改良した武器である。

ランケン・ダーツは閉じ込めた高圧圧縮空気を吐き出させて発射機から発射、ある程度離れたら固形燃料を燃やして加速し音速を超えさせて、目標の装甲などを貫通した所で信管が作動して中の爆薬を爆発させて撃破すると言う物だ。

サイズが小さく、軽量なのもあり、大量携行が可能かつ、それなりの高度から発射すれば30mm機関砲以上の対地攻撃能力もあり、その気になれば機銃の代わりも務められる武器だ。

 

<<そうですね……>>

 

今回は爆発し易い敵という事も有って効果は抜群だが、危険性が高い為に使用タイミングを考えねばならないだろう。

ベルクトも撃墜の原因と死因が武装の不適切使用による誘爆や異物吸入と言う内容を殉職書類には書かれたく無い為にバトラの言葉には素直に頷く。

 

<<仕事を再開するぞ>>

 

ごく少数だった護衛兼迎撃のザイはファントムの手により全機が撃ち落とされている所為でプラットフォーム以外のザイがこの空域には存在しない事を確認すると機体を加速させる。

ベルクトは機首をプラットフォームに向けると距離が離れている場所からランケン・ダーツを発射、命中したプラットフォームが大爆発を越すとバトラはその爆炎を突っ切り、もう1つ向こうのプラットフォームに肉薄、右翼端のカッターで切断しする。

 

プラットフォームが2機撃墜されると流石のプラットフォームもただやられる訳には行かないと自衛用の火器と思われる小型の誘導ミサイルを各所から発射される。

だが、バトラの特殊兵装である全方位多目的ミサイルシステム(ADMM)の機動性と威力重視の小型ミサイルとは違い、速度と携行性を意識した小型ミサイルではバトラを捉える事が出来ず、バレルロール・エルロンロール・バンクなどの基本的な機動だけで回避され、1つ、また1つと気球の部分が切断されて、地面へと落下して行く。

 

他のプラットフォームもなんとかしようと自衛火器を開くが発射寸前に無茶な機動で攻撃を加えるJAS39Dやランケン・ダーツに破壊される。

 

<<慧。無茶し過ぎだ。強引さも大切だが、場所と状況、相手を考えろ>>

 

RF-4EJとIℓ-44がJAS39Dの背後に回るとバトラが嗜める様な声で通信を入れる。

 

<<悪い。でも、レーダーサイトって幾つも有るんだろ? 早めに潰さないと不味いかなって。ほら、ファントムが速攻とか言ってたし>>

<<速攻と無謀は違います。だいたい慧さん。今自分がどれだけの弾を使った分かっていますか? バーバチカが出て来た時に残弾ゼロとか笑えませんよ>>

<<そうだぞ。今回は作戦遂行中に別勢力の敵が現れる事が予想されているからな。帰還時に弾を余らせる位の気持ちで弾薬を使用しろ>>

 

今のJAS39Dのハードポイントにはミサイルが4発ぶら下がっているだけだった。

 

<<やっぱり……来るかな>>

<<間違い無く、来るだろうな>>

<<来るでしょうね。間違い無く>>

<<やっぱり……ですか>>

 

Suー47が付近を飛行してきた所でバトラとファントムが動き、編隊を組み直す。

 

<<4機もの戦闘機を同時に動かす以上は遠からず露見するからな。それにハンボグドとウランバートルの間は直線距離で500km。戦闘機なら30分以内に到達する距離だ。戦闘が始まってから行動しても、十二分に間に合う>>

<<戦闘は避けられない……ですか……>>

 

何処か悲しげな声で告げるベルクトにバトラが口を開こうとした瞬間に慧の言葉が被さる。

 

<<勝てるのか?>>

<<8割5分から互角と言った所ですね>>

<<え?>>

 

ファントムの言葉に間抜けな声を出す慧にバトラが訳の説明を行う。

 

<<一言で言えば、部隊を構成する機体の平均世代差って奴だな>>

<<ん? 世代差? 平均? どう言う事だ? それと互角って?>>

<<なんとなくですが慧さんが言いたい事はわかります。機数的には此方が多いですが、世代的な所を見るとほぼ互角なんですよ>>

 

ファントムの説明で互角と言う評価の理由は分かった慧だが、それ以外の所がわからないと困惑の声を通信機に投げ掛ける。

通信機からバトラの溜息が流れるとバトラが『よく聞け』と前置きをしてから語り出す。

 

<<戦闘機や戦車には世代と言う評価基準というか要求仕様の違いだな。戦争がその時代で戦術が変わる様に戦車や戦闘機も時代のニーズに応えて変わって行く。ここまでは良いな?>>

<<つまりは、その時代の最新に変わって行くって事か?>>

<<それでいい。ここからが重要だ。今の所だと第6世代までが定義として出来ているが、第6世代は結構曖昧だったりするから第5世代まで話すぞ>>

 

バトラが息継ぎを行い、口を開く。

 

<<第1世代。こいつはレシプロ戦闘機からジェット戦闘機へと主流が変わる時に出来た奴でジェット噴流で亜音速飛行が出来る機体の事だ。次に第2世代だが第3世代と曖昧な所があってアメリカと日本で分け方が異なるが日本式が1番しっくりするから日本式で説明するぞ。第2世代は音速飛行が可能で索敵なんかに使うレーダーが搭載された機体だな。第3世代は第2世代に電波ホーミングミサイルの運用能力とマルチロールに加えて夜間戦闘能力を持っている機体だ。第4世代はターボジェットエンジンからアフターバーナー搭載ターボファンエンジンに換装された機体で第3世代以上のマルチロール能力と電子機器が強化された機体だ。第5世代は高度な火器管制システムとステルス機能、音速巡航(スーパークルーズ)が可能な機体と言った所だな。ここまで質問は?>>

 

バトラが一通りの説明を終えて、息継ぎも兼ねて質問タイムを設ける。

 

<<グリペンやベルクト、バトラのスプイリって何世代なんだ?>>

 

その質問にバトラは考えてから口を開いた。

 

<<グリペンはステルス機能は無いが第4世代にするには電子機器が高性能と言う事で第4.5世代。ベルクトもこれだな。スプイリは武装によっては第6世代で、第5世代の条件は満たしているから第5.5世代が妥当かな?>>

<<因みに私は第3世代ですね。今の独飛の戦力を世代で表すと約5.8世代。それに対してバーバチカはSu-27M-ANM ジュラーヴリクが第4.5世代。Mig-29SMT-ANM ラーストチェカが第3世代。ディーオーがMig-21だと第2世代で約3.2世代。ただディーオーがベルクトの言うI-21、つまりT-50だとすると第5世代で約4.2世代です。これでも約1.6世代上回っていますね>>

<<うーん>>

 

バトラの説明を聞いた後にお互いの戦力評価を聞いた慧から微妙な声が上がる。

<<なんですか。その微妙な声は?>>

<<本当にそれだけで勝てるのか?>>

<<無理だな。機体性能だけで勝てるなケラーマン教官のあのF-4Eはなんだ?>>

<<知りませんよ。というか、第5.5世代とかおかしく無いですか?第6世代の定義が出来上がっていないのに?>>

<<第6世代の定義って出来上がっているだろう。少なくともヴァラヒア事変の後には出来上がっている筈だが?>>

<<え?>>

<<え!>>

 

どうにもファントムとバトラで認識の違いがあると分かったバトラは第6世代の定義について語る。

 

<<第6世代っていうのはあらゆる物を破壊しうるであろう強力な兵装だったり、無人機の管制・運用設備を持っていたりとかなり特殊な機能や武装を持つ機体の事だな。スプイリと兄機(あにき)の2号機は前者で兄機の1号機と姉機(あねき)のカーミラは後者だ>>

<<あれ? ってことは、パラレルマインズを装備したら……第6世代って事ですか?>>

<<ドーターやAJZ戦闘機ってだけで第6世代だと思うが。まあ、聞いてのとおりかなり曖昧だから、第5世代の追加要素に強力な武装か特殊な機能を持つ機体とするのが主流だな。>>

 

ファントムは第6世代のコンセプトが第5世代機と余りにもかけ離れている事に驚きつつも話の話題を戻す

 

<<まあ、1世代違えば戦力の次元がまったく異なるのは空戦の世界です。第2世代機が幾ら束になっても第3世代機の機体には太刀打ちできません>>

<<ただし、例外的存在と言うか事象もあるのが空戦の世界だ。世の中には第2世代のF-104で第4世代のF-15を撃墜したり、第3世代機のF-4Eで米軍のF-22の5機編隊をカモった人が居るからな。結局はパイロット次第だ。だから、互角だ>>

<<やめて下さい。自衛隊の名手は兎も角、PMCの超人を出さないでくれませんか? 私の中の常識が崩壊します>>

<<常識は囚われる為では無く、ぶっ壊す為にある>>

<<人間の常識を壊してしまった人達はちょっと……>>

<<人間の常識をぶっ壊すのはル◯デル閣下とOMEGA11のパイセンだけで充分過ぎるわ!>>

<<そうですね。逸般人には、普通ですよね>>

<<あれ? あのファントムさん……イントネーションに致命的な過ちがある気がするのですが……>>

<<取り敢えず、Mig-21の場合は私が。Mig-29は慧さんとベルクトが、Su-27はバトラさんが抑える。T-50の場合はバトラさんが抑えて、Mig-29を私が。Su-27は慧さん。ベルクトは遊撃です。これで良いですね>>

<<無視かよ……まあ、作戦に異論はない。T-50なら任せろ。エースのT-50との交戦経験はある>>

 

他のメンバーも同様に理解を示した所でバトラのレーダーに反応が現れる。

 

<<レーダーにアンノウンが2機。EGGを感知。ANTARES03にデータ照合を要求>>

 

バトラがベルクトに感知したEGGパターンを送ると即座にベルクトからの返信が届いた。

 

<<このEGGパターンはドーターですね。ですが、2機だけという事は……>>

<<鮫と同類だな。ファントム、手筈通りだ>>

 

バトラはレーダーに映らない3機目を半ば確信していた。

ロシア軍が最高戦力であるドーター部隊を物資不足でも無いのに整備不良を出すとは考えられなかった。故に最悪のパターンであるT-50出現を考えた。

もし、この場にベルクトが居なければMig-21の出現を予想し、2機との交戦と油断してしまっただろう。

 

<<分かっていますよ。ザイの掃除は後回しです。先にロシアの穴熊を片付けますよ。タクティカル・リンク。ターゲット・インディケーション>>

 

各機の戦術マップの情報が更新され、接近中の光点にアルファベットと脅威レベルが付けられる。

先を進む光点にEN01・Su-27M-ANM・脅威レベル:中と表示され、その後ろの光点にEN02・Mig-29SMT-ANM・脅威レベル:低と示され、マップの端にとってつけたようにEN03・T-50-ANM・脅威レベル:高と表示される。

 

<<よぉ兄さん、馬鹿どもの包囲は抜けられたようだな。無事で何よりだ>>

<<そりゃどうも、その節はお世話になりました>>

 

尊大で人を食った様な口調のハスキーな声は、1度聴けばそう簡単には忘れられない。そんな声にバトラは飄々とした声で答える。

 

<<あたしのアドバイスは役に立っただろう? できればもう1つの注意も真摯に受け止めて欲しかったがな。命が惜しければさっさと引き揚げろ。ーー警告した筈だぜ?>>

<<確かに受けました。でも、私はMS社の社員です。やるべき事があってここに居ます。ですが……私は、貴女達を>>

<<おっと、悪いが妹分でも話し合いの余地はもう無い。言っただろう? 2度目の慈悲は無いと。残念だよ。こんな形で妹分とその恩人を失う事になるなんて>>

<<そんな! 私は……>>

<<ベルクト。言っただろう?>>

ベルクトの悲痛な叫びをバトラの冷たい声が遮る。

 

<<俺達はいつ、どこで、誰が敵になるかも分からない世界に居る。昨日は笑いながら同じ飯を食った奴が明日は戦場で敵同士で向かい合う瞬間があると。あれは敵だ。割り切れ。じゃないと……死ぬぞ? お前>>

<<あんたは殺る気みたいだな>>

 

バトラの言葉にベルクトは何も言えず、ジュラーヴリクはクスリと笑う。その瞬間に電波越しに繋がっていたお互いの空気が変わる。刃の如き殺気がお互いの吐息に籠る。

 

<<蹂躙してやるよ>>

<<出来るものなら>>

 

ハンボグド上空で実戦に於いては史上初のアニマ対アニマの空戦とPMCの戦術級パイロット対国家が持つ最高戦力であるドーターとの空戦が勃発した。




第6世代に関してはレーザーバリアーとか無人僚機だったりとエスコンの架空機の一部なんかが第6世代に該当しますね。
因みに補足説明ですが、この小説の世界の考え方だとプレイヤーが使えるCFAー44はEMLを載せれば第6世代。それ以外だと5.5世代。パステルナーク少佐が乗るCFAー44とカーミラは完全な第6世代です。

何か質問等がありましたら、感想かメッセージお願いします。純粋な感想もCoooooooomeです。

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